p.89 抽出テキスト
め右心系IEが疑われる症例では同時に肺の合併症を評価する必要がある.CDRIE疑いや肺動脈弁位人工弁置換術後症例における18F-FDG PET/CTは,IE診断において有用である場合がある735, 736). 4.2 右心系IEの予後と治療 右心系IEの予後は左心系IEと比較するとよいとされており,90%近くの症例で薬物治療が奏功するが,肺膿瘍などが多発し薬物治療の継続が困難と判断された場合に手術が考慮される732).左心系IEと比較して予後がよい理由としては,若年発症が多いこと,低圧系の右心で発症する三尖弁逆流症が全身の血行動態に及ぼす影響が高圧系の左心で発症する僧帽弁逆流症や大動脈弁逆流症と比較して小さいこと,塞栓症を肺のみに発症し全身塞栓のリスクが低いこと,弁輪周囲膿瘍をきたしにくいこと,薬剤抵抗性感染が少ないことがあげられる33, 737, 738).右心系IEの中でもCDRIEの予後は,non-CDRIEと比較して悪いとされており,これは診断が遅れやすいことが主な原因と考えられている542, 722).また,高度の免疫能低下症例における右心系IEの予後は悪く,特に真菌感染を合併した際はきわめて予後が悪い739). 4.2.1 内科的治療 右心系IEの原因菌は,S. aureusとCoNSが多く,留置デバイス感染では特にCoNSが多い.よって,エンピリカルな治療を行う場合は,必ず黄色ブドウ球菌はカバーする.近年,MRSAによる市中感染も増加し,黄色ブドウ球菌の中でMRSAが占める割合も増加しているため85),院内感染IEやエンピリカルな治療を行う場合はMRSAもカバーしたほうがよく,バンコマイシンやダプトマイシンを使用する.また,MRSAと判明した場合はゲンタマイシンも併用する.P. aeruginosaや他のグラム陰性桿菌をカバーするかどうかは患者背景によるが,免疫能低下症例ではCandida albicansをはじめとする真菌感染を発症することもあり,治療薬が大きく異なるため,右心系IE特有の患者背景と発症しうる原因菌を常に頭に入れて治療しなければならない. 4.2.2 外科手術(推奨表22) 右心系IEでは内科的治療(薬物治療)が優先される場合が多く,外科手術を最優先に考える場合はほとんどない.適切な抗菌薬治療を受けた右心系IE症例が外科手術を考慮する場合は次のとおりである: 1 繰り返す肺塞栓により人工呼吸管理を必要とする呼吸不全541) 2 左心系IE合併例527, 739) 3 疣腫による肺塞栓を繰り返した後も巨大疣腫が残存す る場合(>20 mm) 35, 196) 4 利尿薬に反応性が乏しい急性三尖弁逆流症に伴う重症 右室機能不全543) 5 1週間以上適切な抗菌薬治療を行っても菌血症が持続す る740)個々の症例において内科・外科合同チームでディスカッションのうえ決定されるべきあり,単独疣腫のみでは手術適応とは決してならず,抗菌薬治療が優先される. 三尖弁における手術は主に弁形成術または弁置換術が施行されるが,IEの再発や再手術の必要性という観点からも,弁置換術よりも弁形成術のほうが成績がよい542, 543, 722, 741).よって,形成が不可能であるほどに弁破壊が進行していなければ,弁形成術が優先される.弁置換術を施行する場合は,機械弁よりも生体弁を使用することが推奨される.また, 推奨表22 右心系IE における外科的治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 右心系のIE では,まずは適切な抗菌薬治療を行って経過観察を行うI B右心系IE に対する外科的治療は,適切な抗菌薬治療を行ったうえで,下記のような場合に適応を検討する抗菌薬投与後も疣腫が残存し,繰り返す肺塞栓により人工呼吸管理を必要とする呼吸不全に外科的治療を行う541) I B 左心系IE 合併例に外科的治療を行う527, 739) I C利尿薬に反応性が乏しい急性重症三尖弁逆流症に伴う重症右室機能不全に外科的治療を行う543) I B疣腫による肺塞栓を繰り返した後も巨大疣腫(>20 mm) が残存する場合に外科的治療を考慮する35, 196) IIa C 1 週間以上適切な抗菌薬治療を行っても菌血症が持続する場合に外科的治療を考慮する 740) IIa C三尖弁に対して手術介入する場合,可能なかぎり弁置換術より弁形成術を考慮する 542, 543, 722, 741) IIa B三尖弁に対して手術介入する場合(主に弁置換術),予防的な心外膜リードの留置を考慮してもよい732) IIb C IE:感染性心内膜炎