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p.88 抽出テキスト

4 右心系のIE

右心系IEの割合は,IE全体の5~10%程度とされている85, 722, 723).右心系IEのリスクファクターには,先天性心疾患・血管留置カテーテル・CIED・免疫能低下状態・注射薬物使用(IDU)などが含まれる.右心系IEの原因として留置カテーテルや心臓植込みデバイスに関連したIEの頻度が最も多い.さらに,原因が先天性心疾患・CDRIE・注射薬物使用ではなく,左心系弁膜症も持たない群は‘three noes IE’と呼ばれる724-726).欧米では若年者の注射薬物使用によるIEは増加傾向であり,特にHIV感染などによる免疫能低下症例に多く727, 728),欧米と比較すると注射薬物使用者そのものが少ない日本でも,右心系IEを診断した際は注意して問診する必要がある(表29) 729).注射薬物使用者のIE発症率は地域差・収入較差があるとされており730),結果的に右心系IEは左心系IEと比較すると低所得者に起こりやすいとされているが,これもやはり地域差があると考えられる723).一方,‘three noes IE’は,先天性心疾患を除けば,腎機能障害や透析症例,糖尿病,癌,呼吸器疾患などの合併症を背景に持つ場合に多いとされており725, 726),注射薬物使用が欧米と比較すると少ない日本でも,施設ごとの患者層を把握したうえで診療する必要がある.

右心系IEにおける罹患弁は,日本の調査でも三尖弁が多く,肺動脈弁に罹患することは少ないが85),先天性心疾患の中で頻度が高い心室中隔欠損に合併する右心系IEでは,肺動脈弁が罹患する場合も多く,あくまで心内シャン

トや合併心奇形ごとに疣腫がつきやすいと考えられる部位を重点的に検索する必要がある.また,ユースタキアン弁・テベシウス弁やキアリ網などの心内構造物に疣腫が付着する場合もあり,さらに左心系IEを合併することも稀ではないため注意が必要である724, 731).原因菌としては, Staphylococcus aureus とCoNS が多く,Pseudomonas aeruginosaや他のグラム陰性桿菌732, 733),さらに真菌も認められる.特に,免疫能低下症例での真菌による右心系IEは致死率が高く,真菌感染は主に左心系IEに多いものの,右心系IEでもデバイス留置例では注意が必要である734).

4.1 右心系IEの診断

右心系IE症例は,発熱・敗血症・呼吸器症状(咳・胸痛など)で受診することが多い.右心不全は主に三尖弁逆流症または肺動脈弁逆流症により引き起こされることが多く,肺高血圧は肺における多数のseptic emboliにより生じることがある.

診断は,左心系IEと同様心エコー図検査による疣腫の検出が鍵となる.主に三尖弁に付着することが多いが,あくまで心内シャントや合併心奇形によるため,患者背景を考慮したうえで検査を施行する必要がある.左心系IEと比較すると,経胸壁心エコー図検査の重要度はさらに高く,上大静脈~右房内の評価はTEE検査が優れるが,右室内や肺動脈弁の評価はTTE検査のほうがしやすい症例もあるため,あくまで両者を組み合わせて疣腫を評価することが望ましい.CTは通常肺のseptic emboliを評価するために有用であり,septic emboliによる肺塞栓・膿瘍形成も含

表29 主要な国の薬物別生涯経験率

国別調査年対象年齢生涯経験率(%)

大麻覚醒剤MDMAコカインヘロイン

ドイツ2012 18~64歳23.1 3.1 2.7 3.4 –フランス2014 15~64歳40.9 2.2 4.2 5.4 –イタリア2014 15~64歳31.9 2.8 3.1 7.6 –イギリス2014 15~64歳29.2 10.3 9.2 9.8 –アメリカ2014 12歳以上44.2 4.9 6.6 14.8 1.8カナダ2012 15歳以上41.5 4.8 4.4 7.3 0.5日本2017 15~64歳1.4 0.5 0.2 0.3 –ドイツ・フランス・イタリア・イギリスの数値はEMCDDA(欧州薬物・薬物依存監視センター)資料をもとに作成アメリカの数値はNSDUH(National Survey on Drug Use and Health)資料をもとに作成カナダの数値はCADUMS(Canadian Alcohol and Drug Use Monitoring Survey)資料をもとに作成日本の数値は,平成29年度厚生労働科学研究「薬物使用に関する全国住民調査(2017年)」資料より(厚生労働省.現在の薬物乱用の状況729)より)