p.82 抽出テキスト
新生児・乳児,年少児では1~3 mL,年長児では5~7 mLとされている661).中学生以上では成人の量に準じて採血をする. 1.3 治療 1.3.1 内科的治療(推奨表19) IE診療においては,治療開始のわずかな遅れが心内外に大きな合併症をもたらす可能性があり,診断がつき次第速やかに治療を開始することが重要である.しかしながら,一方で原因菌の同定が治療には重要であることから全身状態を見極めながら治療開始を決定する.疣腫には抗菌薬が到達しにくいことから,高用量の抗菌薬を,再発を防ぐために長期間(4~6週間,原因菌などの条件により長短あり)投与することが必要である.小児における抗菌薬投与の推奨を推奨表19に示す.臨床経過により治療内容は適宜最適化することが必要である.成人では治療の一部あるいはすべてを経口抗菌薬で行うことで入院期間を短くする研究も行われているが,小児における有用性は明らかではない.推奨表19が原因菌別に作成されているように,血液培養の結果が重要となる.バンコマイシン,テイコプラニン,アミノグリコシド系薬などを投与する際には血中濃度モニタリングを行う. 培養結果未着で抗菌薬治療を開始する場合には,患者情報より原因菌を推定しつつ,広く可能性が考慮される病原微生物をカバーできる抗菌薬を選択する. 培養陰性の場合には,患児の状況から原因菌を推定して抗菌薬を選択する.日本小児循環器学会の調査では, 15.9%が培養陰性で,培養陰性全例で血液培養検体採取前に抗菌薬が投与されていた670).不明熱の患者における血液培養検体採取前の抗菌薬投与は,原因菌同定を困難にすることを認識しておく必要がある.培養陰性はこのほかに分離培養困難な原因菌の可能性もある. 口腔内処置に伴うことの多いレンサ球菌によるIEに対してはペニシリンGが第一選択となるが,血管痛・静脈炎などの問題があればアンピシリン,セフトリアキソンも選択可能である.ペニシリンやセフェム系薬にアレルギーの場合にはバンコマイシンが選択される.ペニシリン非感性レンサ球菌に対しては,ゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系薬を併用する(シナジー効果).人工材料が挿入されている場合には6週間の治療が望ましい. ブドウ球菌に対する抗菌薬治療としては,メチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)の場合には,セファゾリンが選択される.人工材料が挿入されている場合には6週間の投与とし,ゲンタマイシンを併用する.ゲンタマイシンは 2週間以上併用するが,AHAのステートメントでは腎障害・聴力障害を考慮して治療開始から3~5日の併用となっている661).メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対してはバンコマイシンが選択される.人工材料が挿入されている場合には6~8週間の投与が必要である.MRSAに適応がある抗菌薬としては,他にアルベカシン,テイコプラニン,ダプトマイシンがあるが,アルベカシン,テイコプラニンはIEに対する適応がなく(敗血症には適応がある),ダプトマイシンは右心系のIEに適応が限られており,また小児のIEに対する有効性・安全性は確認されていない.先天性心疾患では右心系のIEが比較的多く,成人先天性心疾患におけるMRSAによる右心系のIEにはよい適応となるのかもしれない. HACEKは頻度が高くはないが,グラム陰性桿菌の中では比較的IEを引き起こすことの多い菌群である.病原性は低く,4週間の抗菌薬治療が行われる.HACEKグループ以外のグラム陰性桿菌によるIEは稀ではあるが,医療関連の感染として発症しやすい.耐性化していることも多く,治療は困難なことも多い. 真菌によるIEは医療行為に関連した感染が多い.原因真菌としてはCandida albicansが多い.アムホテリシンBリポソーム製剤で治療を開始するが,抗真菌薬のみでコントロールすることは困難で,常に外科的治療を考慮しながら診療する. 1.3.2 外科的治療 小児期および成人先天性心疾患のIEに対する外科的治療は,日本小児循環器学会の調査によればIE患者の26%に行われていることが報告されている672).小児期には人工弁置換を考慮する場合にサイズの問題があること,成人先天性心疾患ではその多くが手術既往例で人工材料が使用されている症例も多いことなどから,外科的治療にあたっては考慮しなければならないことが多くなる.外科手術適応としてうっ血性心不全,弁逆流の進行,塞栓などがあげられる.成人とは異なり,塞栓予防のための明確な手術適応に関するデータはない.他の早期手術を考慮すべき病態として,弁輪周囲膿瘍,真菌感染,(適切な抗菌薬治療にもかかわらず)持続血液培養陽性,人工材料の機能不全(弁機能障害,導管の閉塞など),バルサルバ洞破裂,感染性動脈瘤などがあげられる. 1.4 予防 IE予防の歴史的な経緯については第7章予防の4.1.予防