p.81 抽出テキスト
日本小児循環器学会が行った全国調査では,小児のIE症例170人中,基礎心疾患を認めないものが 23人(14%)含まれていた632, 670).したがって,原因のはっきりしない発熱では,基礎心疾患を有しない症例でもIEを鑑別診断として考慮することが望ましい. 心房中隔欠損は,多くの報告で術前術後とも発症が0に等しく,カテーテル手術での閉鎖も発症率がほぼ0であるとされており661),低リスク群としているが,近年,心房中隔欠損のIEが報告されており577),今後の動向をみる必要がある. 1.2 診断 1.2.1 症状 一般に症状の出現は緩徐であり,やや低めの長く続く発熱,倦怠感,筋肉痛や関節痛,体重減少,発汗などが現れる661).2023 Duke-ISCVID診断基準の小基準では38度以上の発熱になっているが,それより低い発熱であることも多い.ただし,これらの症状はIEに特異的なものではないため,先天性心疾患を有する児で上記の症状の組み合わせがある場合は,IEを念頭に検査を進めるべきである661). また,上記の症状を伴い,新たに出現した心雑音がある場合はIEの可能性が高い. 1菌血症,2弁膜症,3免疫学的反応,4塞栓症の4つの症候が,小児のIEに関連していると考えられる.塞栓症は腹部血管,脳血管,心血管によくみられる.各臓器の虚血症状にも注意が必要である.稀ではあるが,脳血管に 細菌性動脈瘤が生じ,破裂出血する危険性がある. 急な高熱や,急速に状態が悪化するような場合は,原因菌がS. aureusである場合が多く,さらに急いで診断を確定して治療につなげる必要がある.治療に関しては別項で述べる. 1.2.2 診断基準の小児への適応について 診断には,修正Duke診断基準を使用するのが一般的である661).当初,Duke診断基準を作成したときに組み入れられた小児患者は少なく,特異性にやや問題があるとされていた661).しかし,修正Duke診断基準が小児の診断には80%以上の診断確度が得られたとの報告があり671),臨床で使用するには適しており632),現在も使用されている.微生物学的な診断技術や画像技術の向上が盛り込まれた2023 Duke-ISCVID診断基準での小児領域での診断率の改善については,今後の報告を待つ. 修正 Duke 診断基準の心エコー図所見には疣腫があるが,小児の場合疣腫を認めるのは63%にすぎず,心エコー図所見でIEを否定することはできない632).左室流出路の病変や大動脈弁周囲の病変を疑う場合は,小児でも経食道心エコー図が推奨される661). 血液培養は,フォーカス不明の発熱,新たに出現した病的心雑音,心疾患の既往,IEの既往の患者には施行すべきである.小児では大量の血液を数回も採血することは困難なので,年齢である程度の採血量が推奨されている661).血液培養のボトルや培養機器の種類にもよるが,一般的に, 表28 先天性心疾患,小児領域における基礎心疾患別感染性心内膜炎リスク 1 高度リスク群(感染しやすく,重篤化しやすい患者) • 人工弁術後• 感染性心内膜炎の既往• 姑息的吻合術や人工血管使用例を含む未修復チアノーゼ型先天性心疾患• 手術,カテーテルを問わず人工材料を用いて修復した先天性心疾患で修復後6ヵ月以内• パッチ,人工材料を用いて修復したが,修復部分に遺残病変を伴う場合• 大動脈縮窄 2 中等度リスク群(必ずしも重篤とならないが,心内膜炎合併の可能性が高い患者) • 高度,軽度リスク群を除く先天性心疾患(大動脈二尖弁を含む) • 閉塞性肥大型心筋症• 弁閉鎖不全を伴う僧帽弁逸脱症 3 低リスク群(感染の危険性が特になく,一般の人と同等の感染危険率とされる場合) • 単独の二次孔型心房中隔欠損• 術後6ヵ月を経過し続発症を認めない心室中隔欠損もしくは動脈管開存• 冠動脈バイパス術後• 逆流を合併しない僧帽弁逸脱症• 生理的,機能性,もしくは無害性心雑音• 弁機能不全を伴わない川崎病の既往