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第8章 特殊な病態 1 先天性心疾患,小児領域のIE 1.1 総論 IEの発症率の報告はそう多くはないが,一般小児入院患者におけるIEの発症率は成人より低く,小児入院患者1000人に対して0.05~0.12人と報告されている409, 661).小児におけるIEの発症リスクとして,1先天性心疾患の存在,2先天性心疾患術後の血行動態異常および手術時に使用する人工弁やパッチなど人工物の存在,3手術時などでのカテーテル留置,4免疫防御機構の低下,5Staphylococcus aureus易感染性などがあげられる597, 632, 662-665).先天性心疾患を有する小児におけるIEの発症率は10万人年あたり41人と高く,小児のIE全体に占める先天性心疾患患者の割合は30 ~ 80%である6, 666-668).日本小児循環器学会が行った調査によれば632),先天性心疾患入院におけるIEの頻度は, 0.71%(291/41,151人)であり,その中でも成人先天性心疾患の頻度が高く,29%を占めた.調査対象が小児循環器疾患の専門施設が多いため,従来の報告より高くなっている. ほとんどの未修復先天性心疾患はIEのリスクがあり,非修復心室中隔欠損は原疾患として最多で,修復術後リスクは低くなるが,残存短絡があるとリスクは大きくなる577, 632, 661).小児のIEの罹患部位は右心系が成人と比して多く(46.9%対6.3%),先天性心疾患がある小児では肺動脈弁の罹患が約半数である669). 小児期のIEの原因菌としては,S. aureus,緑色レンサ球菌(VGS),コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)の順に多く577, 632),S. aureus 感染が多いことが小児の特徴である577, 632). 小児のIE発症のリスクとしては,先天性心疾患の存在が大きいことは先述した.その中でも,左右シャントの存在や,チアノーゼ性心疾患か否か,手術前か手術後か,手術後でも修復術の術式,使用材料などさまざまなファクターがIEの発症リスクと関係する.各疾患別のリスクは後 述するが,人工血管を用いた手術や人工血管を用いた短絡術,人工弁置換後などが高リスクである670). 小児のIEについては,予防処置のあり方や治療法などが成人と異なり,多施設二重盲検試験などのデータが不十分で,倫理的にも対照群をおいた試験を行えないため,専門家の意見を採用している部分が多い.また,患者自身が自己管理するための自立教育などが,移行医療の面からも重要である. 1.1.1 基礎疾患別IEリスク 基礎心疾患別IEリスク(表28)には2つの意味がある. 1つはIEの発症率が高いという意味であり,もう1つはIEを発症した場合に合併症が生じやすく死亡率が高いという意味である.AHA ガイドラインでは664),後者のリスクが高い群を高度リスク群として定義し,高度リスク群のみに抗菌薬の予防投与を推奨している.一方,日本小児循環器学会による「小児心疾患と成人先天性心疾患における感染性心内膜炎の管理,治療と予防ガイドライン」632)では,基礎心疾患別IEリスクを高度,中等度,軽度の3つに分類し,発症しやすくかつ重篤化しやすい群を高度リスク群,発症しやすいが重篤化のリスクは低い群を中等度リスク群,疾患を有しない場合とリスクが同等な群を軽度(低)リスク群と定義している.つまり,軽度(低)リスク群以外はIE発症のリスクが高いことを意味する.そして同ガイドラインでは,高度リスク群,中等度リスク群に対し抗菌薬による予防を推奨している632).このようにAHAガイドラインとは異なる推奨とした理由は,日本の全国調査では歯科処置後に発症したIE患者の多くが中等度リスク群であったことによる. 本ガイドライン改訂では,日本小児循環器学会のリスク分類をほぼ踏襲し,歯科処置に際する予防的抗菌薬投与に関して,高度リスク群では強い推奨,中等度リスク群では弱い推奨とした(関連するシステマティック・レビューとして「CQ1 感染性心内膜炎発症リスクの高い患者に対する侵襲的歯科治療前の予防的抗菌薬投与は推奨されるか?」参照).