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p.78 抽出テキスト

(M-TEERあるいはT-TEER)デバイスなどの治療手技では,IEの発生頻度を上昇させるという明確なエビデンスはない659, 660).しかし,こうした手技でもIEを発症すると予後不良であり,予防的抗菌薬の投与が必要と考えられる症例では考慮してもよい.

5 患者教育・啓発

IEの予防のためには患者への啓発が最も重要である.歯科治療の際にあたって,全例を対象に歯科医が的確に心疾患の有無をスクリーニングするのは難しいと思われる.そのため,IEの中等度または高度リスク患者には,歯科を含むすべての医療機関を受診する際にIEのリスクをもつことを自己申告するように指導すべきである.そのためには, IEとはどういう病気で.なぜ予防的抗菌薬投与が必要なのかについてよく理解してもらう必要がある.主治医は基礎心疾患名や,心臓内の人工物(パッチや人工弁・人工弁輪など),ペースメーカの有無について患者に告知する.主治医は口頭での説明に加えて,各患者のIEリスクとなる原疾患の診断名,IEがどのような病気でどのような症状が出るかなどに関する説明,予防的抗菌薬投与の必要性などについて記載された表27のような書類を患者に配布することが勧められる.

中等度または高度リスク患者には,発熱時の対応についても指導する.咽頭炎や上気道炎のようなウイルス感染であっても発熱は生じるが,一般的にこのような発熱は短期間で消失する.原因のはっきりしない発熱が数日以上持続する際には,IEを鑑別するために医療機関を受診するように指導する.発熱時の予防的抗菌薬服用については有用性が明らかではなく,また中途半端な抗菌薬服用はIEの症状をマスクし,血液培養での検出率を下げる可能性もあるため,この点に関して患者にも説明しておく.かかりつけ医がある場合は,これらの情報に関してかかりつけ医と共

受診して,可能なかぎり術前2週間前までに菌血症を起こす口腔内病変の治療を済ませておくことを推奨する. TAVIでは,ブドウ球菌および腸球菌Enterococcus faecalis感染の頻度が高く,特に腸球菌感染症は周術期に多く発生する657).腸球菌が原因菌として多い理由としては,大腿動脈アクセスを使用する際に鼠径部から菌血症を起こしている可能性がある563, 658).そのため,カテーテルの挿入および操作時には可能なかぎり術野は清潔操作で手技を行い,カテーテル室環境でも,可能なかぎり手術室と同様な清潔環境に保ったほうがよい.予防的抗菌薬投与方法としては,国際心血管感染症学会(ISCVID)は,腸球菌をカバーする予防的抗菌薬の使用を推奨している658).それに基づき,本ガイドラインでは表26に示す予防的抗菌薬の投与方法を推奨する.

現在のところ,心房中隔閉鎖デバイス,左心耳閉鎖デバイス,僧帽弁あるいは三尖弁の経皮的接合不全修復術

表26 心臓血管の侵襲的治療手技前の抗菌薬の標準的予防投与法(成人)

投与方法β - ラクタム系薬

アレルギー抗菌薬投与量投与回数備考

点滴静注なしアンピシリン・スルバクタム3 g単回

手術開始前120分以内(可能であれば60分以内)に点滴静注,または手術開始時から30分以上かけて点滴静注セファゾリン0.5~1 g

ありバンコマイシン15 mg/kg単回

手術開始前120分以内(可能であれば60分以内)に点滴静注,または手術開始時から30分以上(バンコマイシンは60分以上)かけて点滴静注テイコプラニン9~12 mg/kg

推奨表18  心血管の侵襲的治療におけるIE 予防(予防的抗

菌薬投与以外の方法)のための推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

待機的な心臓手術またはカテーテル人工弁留置術に,鼻腔内MRSA の術前スクリーニングを行うI A感染を予防するために,心臓内植込み手術の術野を至適な無菌状態として手技を行うI Bカテーテル挿入および操作時に,カテーテル室の環境を手術室と同様な標準無菌状態として手技を行うI C緊急手技を除き,人工弁やその他の心臓内または血管内デバイスの植込み前に,菌血症の原因となりうる病変(歯科を含む)の治療を,可能なかぎり2 週間前まで終えておくことを考慮するIIa C