p.77 抽出テキスト
推奨されているアンピシリンについては,ブドウ球菌に対しては予防効果が期待できないため,ここでは推奨しない.また,β-ラクタム系薬アレルギーを有する例において歯科治療前で推奨されているマクロライド系薬に対しては,多くのブドウ球菌や腸球菌が耐性を示す.そのため,β-ラクタム系薬にアレルギーを有する例では,バンコマイシンあるいはテイコプラニンの点滴静静注を推奨する.耐性菌保菌例の予防的抗菌薬投与については,症例ごとに対応が異なることも多いため,必要に応じて感染症の専門家に相談することが必要である. 4.3.2 心血管の侵襲的治療における予防的抗菌薬投与 (推奨表18,表26) 人工弁や心血管内に人工物を植え込む手術,カテーテルによる人工弁植込み手技,ペースメーカや植込み型除細動器などのCEID植込み術を行うすべての患者では,感染とそれに伴う合併症のリスクが高いため,IEに対する予防的抗菌薬が推奨される594).予防的抗菌薬投与法以外のIE予 防に関する推奨度を推奨表18に提示する.セファゾリン1 gの静注が,ペースメーカ植込み後の局所あるいは全身の感染症を予防することがRCTで示されている654).術後早期の人工弁感染の最も多い原因菌は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)である.待機的な心臓手術または経カテーテル人工弁植込み術の前に,鼻腔内MRSA保菌状態の術前スクリーニングを行い,特に保菌者にはMRSAによるIE発症リスクを念頭においた対応を行う.MRSA保菌者には局所ムピロシンおよびクロルヘキシジンを使用して治療することを推奨する海外の報告もある655, 656).鼻腔内MRSA保菌に対するムピロシンの鼻腔内投与については,わが国では保険適用が認められている.また,クロルヘキシジンは鼻腔など粘膜面への投与ができないため,清拭やシャワー浴を行う必要がある.緊急手術が必要な時には,遺伝子増幅法が迅速診断に有効である.緊急手術を除いては,歯科を 表24 歯科処置前の抗菌薬の標準的予防投与法 投与方法β - ラクタム系薬 アレルギー抗菌薬投与量(成人)投与量(小児)投与回数備考 経口投与可能なしアモキシシリン2 g *1, *2 50 mg/kg (最大 2 g) 単回処置1時間前あり クリンダマイシン600 mg 20 mg/kg (最大 600 mg)アジスロマイシン500 mg 15 mg/kg (最大 500 mg)クラリスロマイシン400 mg 15 mg/kg (最大 400 mg) 経口投与不可能なしアンピシリン1~2 g 50 mg/kg (最大 2 g)単回 処置30分前に単回静注,または点滴静注セファゾリン1 g 50 mg/kg (最大 1 g)セフトリアキソン1 g 50 mg/kg (最大 1 g) ありクリンダマイシン600 mg 20 mg/kg (最大 600 mg)単回処置30分前に点滴静注 *1または体重あたり30 mg/kg *2なんらかの理由でアモキシシリン2 g から減量する場合は,初回投与5~6 時間後にアモキシシリン500 mg の追加投与を考慮する 表25 歯科・心血管治療以外の観血的処置前の抗菌薬の標準的予防投与法(成人) 投与方法β - ラクタム系薬 アレルギー抗菌薬投与量投与回数備考 経口投与可能なしアモキシシリン2 g *1, * 2単回処置1時間前 経口投与不可能なしセファゾリン0.5~1 g単回手術開始30分以内に静注,または手術開始時から30分以上かけて点滴静注セフトリアキソン1~2 g ありバンコマイシン15 mg/kg単回手術開始30分以内に静注,または手術開始時から30分以上(バンコマイシンは60分以上)かけて点滴静注テイコプラニン9~12 mg/kg *1または体重あたり 30 mg / kg *2なんらかの理由でアモキシシリン2 gから減量する場合は,初回投与5~6時間後にアモキシシリン500 mgの追加投与を考慮する