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て,炎症性変化あるいは細菌成分の直接作用により,上皮細胞が剥離脱落することで潰瘍が形成される.その結果,口腔細菌が常時血液中に入ることが可能になる. 4.2.2 菌血症の発生 口腔は常に細菌感染状態にある.したがって歯科疾患そのものが菌血症の原因であり,またその歯科疾患の治療の場が全身への感染の機会ともなりうるので,口腔の保清維持と歯科疾患の予防はきわめて重要である.菌血症を起こす歯科治療としては,出血を伴ったり,根管治療で根尖を越えるような侵襲的な歯科処置があげられ,そのうち抜歯が最もよく認識されている626).また,出血を伴う口腔外科処置やインプラント治療,歯石の除去(スケーリング)なども菌血症を誘発する処置として認識されている.さらに,感染根管治療(歯髄腔内や歯根の先の壊死組織を除去する処置)も菌血症を起こす処置の1 つとして考えられているが,抜髄(神経を取る処置)は歯髄腔への感染がないため,菌血症を伴う処置としては認識されていない.非感染部位からの歯肉への局所麻酔や,出血を伴わない充填(詰める)や修復(被せる)処置も菌血症を生じるリスクは低い626).デンタルエックス線撮影,歯科矯正処置,口唇・口腔粘膜の外傷処置も低リスクである. 一方で,日常生活における咀嚼やブラッシングでも出血することがあるため,菌血症が引き起こされうる627).口腔内の衛生状態が悪い場合は,より菌血症が引き起こされやすいと考えられている.したがって,日常より良好な口腔衛生状態を維持・管理することは菌血症の発症を抑制するうえできわめて重要である.そのためには,歯科医師や歯科衛生士による定期的かつ継続的な専門的口腔管理が効果的である.う蝕や歯周病に罹患して菌血症を引き起こす状態になっていても,自覚症状に乏しいため歯科受診されず,未治療のまま放置されている症例も存在するため,注 意が必要である.近年は,免疫低下を認める有病高齢者が顕著に増加しており,日常の口腔環境整備が重要性を増しているだけでなく,IEリスクを伴う循環器疾患の処置に際しての口腔内検査も欠かせない項目となっている. 菌血症が誘発される状態になると,口腔に存在するIEの原因菌が血液中に入る環境が整うことになる.原因菌のうち口腔由来のものとしては,口腔レンサ球菌種がほとんどであるとされている628, 629).主要な細菌として, Streptococcus sanguinis などのmitis groupのレンサ球菌種が知られているが,う蝕の原因菌であるmutans groupのレンサ球菌種であるStreptococcus mutans もその1つであることが報告されている630).一方で,IE患者の血液から主要な歯周病原性細菌種が分離されることはきわめて少なく,Aggregatibacter actinomycetemcomitansのような限られた菌種に関する報告が存在するだけである631).これは,血液中の酸素分圧が偏性嫌気性菌の生存には不利であることに起因していると考えられる. 小児領域において予防策を必要とする歯科処置は,いくつか特殊な点もあるが,基本的には成人における歯科処置と同様である632).一般的に,菌血症を起こす歯科処置として抜歯が最も考慮されるが,高度な歯根の吸収を伴っている乳歯の抜歯は永久歯の抜歯ほどの侵襲性はない.また,乳歯の自然脱落時に出血を伴うことがあるが,通常は菌血症が考慮されることはない633).小児領域における出血を伴う口腔外科手術や歯石除去などは菌血症を誘発する処置であると考えられるが,歯肉への局所麻酔や出血を伴わない充填(詰める),修復(被せる)処置は,菌血症を伴う処置としては認識されていない632, 633).一方で,乳歯で感染根管や歯髄処置を施した歯は,時間の経過とともに膿瘍を形成するリスクが高まるため,慎重な対応が必要である. 図9歯周病の進行と菌血症の発生 歯肉仮性ポケット 真性ポケット セメント質 歯根膜歯槽骨口腔細菌口腔細菌口腔細菌 出血部位では毛細血管が露出歯周ポケット部に 毛細血管が露出 健全歯肉炎歯周炎