GL検索 v0.1.0
画像は 70 ページを描画したものです
page 70

p.70 抽出テキスト

(sICD)植込み後に局所感染はあるもののIEは生じない584).人工弁IEを繰り返す患者においてsICDとリードレスペースメーカを使用した例が報告されている585).これらのデバイスは,他のデバイスとは区別して考えるべきであろう.

2.2.3 肥大型心筋症

最近の研究でも,肥大型心筋症は一般人口よりはIEリスクが高いが,人工弁置換術後に比べればリスクは低いとされている34).一方,左室流出路狭窄と左房拡大(≧50 mm)がIE発症リスクと関連するとの報告があり,血行動態的に重篤な左室流出路狭窄や僧帽弁逆流症を伴う肥大型心筋症がよりリスクが高いと推測される586).肥大型心筋症に生じたIEと歯科治療との関連性を示唆する報告もある587).以上をふまえ,今回のガイドラインでも従来どおり中等度リスク群として予防的抗菌薬投与を推奨する疾患とした.ただし,ESCガイドラインでは,肥大型心筋症に対する予防的抗菌薬投与は推奨されていない11).

2.3 その他

以前のガイドラインにおいては,長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者を中等度リスクとして,予防的抗菌薬投与の推奨クラスをIIbとしてきた.しかし,このことの強い根拠はない.中心静脈ポートに関するガイドラインでも,根拠のない抗菌薬投与は推奨しないとしている588).これを受けて,今回の改訂では長期にわたる中心静脈カテーテル留置患者は予防的抗菌薬投与の推奨から除いた.ただし,免疫抑制患者などハイリスク症例における予防的抗菌薬投与については症例ごとに検討されるべきである.

欧米に比べると少ないものの,わが国でも心移植患者が増えてきた.弁変性をきたした心移植患者は,後天性弁膜症と同様に中等度リスクとした11, 589).また左室補助人工心臓を有する患者は,高度リスク群に加えた11, 589).

3 IEのリスク層別化:手技/ 処置要因(推奨表17)

3.1 はじめに

IE予防を考える際,その手技/処置,臨床的状態が菌血症を生じうる手技かどうかが基準とされてきた.また,その手技/処置によって生じる菌血症の原因菌も考慮に入れる必要がある.

3.2 歯科手技の層別化

2017年版のガイドライン作成時には歯科医師も検討に加わった.歯科手技の中でも,生じうる菌血症の量が大きな観血的手技は高リスクとし,予防的抗菌薬投与をより具体的に指示できるようにした1, 354).

最近歯科手技についても,より具体的にリスク層別化する論文が報告された590).抜歯や口腔内手術時に予防的抗菌薬投与をしないと,高度リスク患者における1ヵ月以内のIE発症が有意に多かった590).侵襲的歯科治療全体としても予防的抗菌薬投与は低いIE発症率と関連していたが,侵襲の低いものや歯石除去(スケーリング)で予防的抗菌薬投与を行ってもIE発症率は変わらなかった590).この研究では,中等度以下のリスクの患者において予防的抗菌薬投与のIE発症率との関係は明らかでなかった590).これらのデータから,観血的歯科処置の中でもスケーリングはリスクが低いことが示唆される.ただし,スケーリング手技の中でもリスクの高低がある.歯肉縁上のみに沈着している歯石のスケーリングでは歯肉に対する侵襲や出血はない.一方で歯肉縁下の歯石のスケーリングや,歯肉炎の強い状態でのスケーリングでは,出血や歯肉へのダメージがあり,侵襲の程度は大きい.細かな区別は現場で用いる際に混乱を生じるとも考えられ,スケーリングは従来どおり予防的抗菌薬投与を必要とする処置に含めた.一方,歯科治療でも侵襲的でないもの(抜髄処置など)については予防的抗菌薬は不要とした.

3.3 歯科治療以外の処置・臨床背景

従来欧米のガイドラインでは,抜歯以外の処置に対する予防的抗菌薬投与については否定的であった16).しかし,侵襲的手技とIEとの時間的関連性が報告された591).これをふまえて,ESCガイドラインにおいて侵襲的手技前の予防的抗菌薬投与が考慮されるようになった11).

わが国では従前から,侵襲的歯科治療以外の侵襲的な手技における予防的抗菌薬投与についての指針を示してきた1).上部消化管内視鏡,気管支鏡後のIE発症頻度が高いことを示した最近の研究をふまえ591),今回のガイドラインではこれらの手技における予防的抗菌薬を考慮してもよい手技に変更した.

3.3.1 TAVI/構造的心疾患治療時

TAVI後のIEの原因菌は黄色ブドウ球菌,腸球菌,コア