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p.69 抽出テキスト

かった.個々の症例の状況に応じた判断が望まれる.

カテーテルによる心房中隔欠損孔閉鎖術後は,手技後6ヵ月までは抗血小板薬,予防的抗菌薬投与が推奨されており,今回の改訂ではそのように記載した.ESCガイドラインでも同様の推奨となっている11).稀に遠隔期にもデバイス感染が報告されているが,頻度は明らかではない.歯科治療後のIEも報告されており,デバイス表面の内膜化の遅れがIE発症に関与しているとされ,閉鎖後も口腔衛生に注意を払うべきかもしれない571).

左心耳閉鎖デバイス留置6ヵ月以内は予防的抗菌薬投与を推奨する.左心耳閉鎖デバイス留置後のIEはきわめて稀ではあるが報告があり,留置後6ヵ月以内のものもあれば,それ以降のものもある572).症例に応じた検討が必要であるが,現時点では左心耳閉鎖デバイス留置6ヵ月以降への一律の予防的抗菌薬投与は推奨されない.

2.1.4 先天性心疾患

従来のガイドラインでは,成人と小児/成人先天性心疾患のIEリスクの表は分けて記載されてきた.小児循環器科領域では手術の内容など,専門的な記載が多く,成人を診療する医師がみてもわからない部分もある.しかし,近年の医療技術の発展に伴い,成人先天性心疾患患者が増え,小児循環器科以外の医師が診療する機会も多いと予想されることから,今回成人の表における先天性心疾患の領域も,小児の表に整合させる形で内容を詳しく記載した.

高度リスクとされる先天性心疾患の中でも,チアノーゼ性先天性心疾患や,人工物を用いて治療後の先天性心疾患のIEの発症率は,姑息的シャントを行ったものに比較すると低いことが報告された562).それでも正常人と比べて発症率は非常に高く,IEを発症した場合の重篤度を考えると,これらの群は依然として高度リスク群として慎重な経過観察を要すると考えられる.わが国の成人先天性心疾患のガイドラインの推奨とも見解を一致する573-575).

先天性心疾患の中でも単独の二次孔型心房中隔欠損は従来どおり低リスクとした.しかし,最近の国家単位の観察研究では,心房中隔欠損のIE発症率は一般人口よりも有意に高いという報告もなされている576, 577).今後の報告に注意を払う必要がある.

小児科から成人の循環器内科医への十分な情報提供や,逆に成人の循環器内科医・一般内科医から小児科主治医へ問合せを行うなどの緊密な情報のやり取りが必要である. 2.2 中等度リスク群

従来中等度リスクとされてきた疾患の中にも,IE発症率や発症した場合の重症度に違いがあることが報告されてきている578).

2.2.1 弁膜疾患

最近の研究でも,弁膜疾患を有する患者は一般人口よりはIEリスクが高いが,人工弁置換術後に比べればリスクは低かった34).一方,先天性大動脈二尖弁や僧帽弁逸脱症は,中等度リスクの中でも高いIE発症率を持つことが報告された578).これらの群では歯科治療後IEの頻度が多く,歯科治療時の予防的抗菌薬投与の有用性が示唆される578).心内合併症や,手術となる率が高いことが示され,高度リスク同様にIE発症時の重篤度の高い背景疾患ともいえる578).この報告では,大動脈二尖弁/僧帽弁逸脱症例の半数以上が中等度以上の弁機能不全を有していた.弁機能不全を有さない大動脈二尖弁/僧帽弁逸脱症例について同様のことがいえるかは検討されていない34).先天性大動脈弁狭窄症を生じた例のIEリスクは非常に高い(157/10万人年) 579).地域住民を対象とした疫学研究において二尖弁のIE発症リスクは,99/10万人年と一般人口に比べて約10倍のリスクがあった580).わが国のガイドラインでは中等度リスクも予防的抗菌薬投与を推奨する立場をとっていることもふまえ,今回の改訂では弁機能不全を有する大動脈二尖弁,僧帽弁逸脱症は中等度リスクのままとしたが,中等度リスク群の中でも特に注意を払うべきである.

2.2.2 心臓植込みデバイス植込み後

心臓植込みデバイス患者がIEを発症すると,デバイス抜去が必須となり重篤度が高い.一方,最近の研究では, CIEDのIE発症率,死亡率は一般人に比べて有意に高い(オッズ比9.7)が,IE既往(オッズ比265.5)や人工弁置換術後(オッズ比70.1)のような高度リスク状態ほどではなかった562).原因菌は黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌,腸球菌が多く,口腔内常在菌を含むレンサ球菌は10%強と報告されている581).これらを考慮して,本ガイドラインでは引き続き中等度リスクとし,推奨クラスはIIbとした.欧米において心内デバイスを有する患者に対する歯科治療前の予防的抗菌薬投与は推奨されていない11).

リードレスペースメーカ植込み後は,菌血症を生じてもIEに至っている例はなかったと報告されている582).また,リードレスペースメーカ植込み後の菌血症のほとんどは抗菌薬治療のみで改善した583).皮下植込み型除細動器