p.63 抽出テキスト
時期(全身状態悪化前)に手術を検討する必要がある.近年,出血性脳合併症発症後2週間以内に手術を受けた場合でも,出血性脳合併症の悪化による術後の神経学的症状増悪のリスクは従来想定されていたリスクよりも低いと報告されている242, 505-508).そのため,循環動態が安定しない心不全,コントロール困難な感染,膿瘍形成や疣腫に伴う脳塞栓リスクが高いと判断した場合は,出血性脳合併症の拡大がないことを確認のうえ2週間以内であっても救命のためのIEに対する手術は推奨される242, 505, 506, 509, 510).また,待機的手術を行うことができる場合は,循環動態,感染の状況,脳塞栓のリスク評価,また出血性脳合併症の状況や感染性脳動脈瘤を画像的にフォローし, 4週間以降の適切なタイミングでの手術が推奨される242, 505, 506, 509). 出血性脳合併症を伴うIEに対する心臓手術時の抗凝固療法については一定の推奨はない.わが国において現在保険適用外使用となるが,人工心肺時の抗凝固療法を通常量のヘパリン投与から,低用量のヘパリンとナファモスタットメシル酸塩を併用して,活性化凝固時間を通常より短く維持することで,出血性脳合併症後急性期でも神経症状の悪化を認めなかったとの報告もある511). 2.5.3 感染性脳動脈瘤合併例 IEの2~9%程度に合併するといわれ,周術期脳出血と密接に関連していると考えられる40, 506, 509, 510).破裂性動脈瘤と未破裂動脈瘤で動脈瘤サイズに差はないとする報告もあるが,一般に5 mmを超える脳動脈瘤は破裂リスクが高いと考えられる512).感染性脳動脈瘤は抗菌薬治療でも改善する症例がある512, 513)一方で,未治療であれば破裂リスクが非常に高く266, 513-515),開心術に緊急性のないかぎり脳動脈瘤の治療を優先するべきである.また,IE診断時に各種画像検査で脳動脈瘤は必ず検索するべきであるが,各種画像での陰性症例でも治療中や周術期に脳出血を認める症例があることに注意が必要である497, 516).特にIEの特徴として,脳動脈瘤を形成しない細菌性血管炎の存在が示唆され,血管の脆弱性に寄与していると考えられる516).診断時の頭部MRIによる微小脳出血(CMBs)の存在が血管の脆弱性に関与しているという報告もある248).一方で,微小脳出血の存在は神経予後に影響しないという報告246)もあり,細菌性動脈炎の存在を示唆する見解の定まった画像所見はない. 図7中枢神経合併症症例の手術施行に関するアルゴリズムIE:感染性心内膜炎 虚血性脳合併症(小範囲)/TIA虚血性脳合併症 (広範囲) 中枢神経合併症 出血性脳合併症脳動脈瘤治療*2 心不全,抵抗性感染,膿瘍,塞栓症リスク 出血病変の拡大/増悪BSC 抗菌薬治療先行 (Class I) 準緊急手術(class I)神経症状安定後に手術検討 (class lla) 2週間以内の準緊急手術(class Ila) 4週間以上の抗菌薬治療先行(class Ila) 生命予後不良な重度脳障害あり*1 あり*3 生命予後不良な重度脳障害なし あり 脳動脈瘤なしなし なし脳動脈瘤あり *1 リスクベネフィットや障害の程度を加味して,IEチームで議論する*2 脳動脈瘤のサイズや出血の状況,心臓手術の緊急度をふまえてIEチームで議論する「第3章3.2中枢神経合併症」の項目も参照*3 血腫除去などの脳外科的処置の適応についても,IEチームで議論する