p.61 抽出テキスト
していないうっ血性心不全合併のIE患者と遜色ない長期予後が期待できる472).また,NYHA分類III ~IV度の心不全,重度の弁逆流や心エコー図による血行動態の悪化(左室拡張末期圧の上昇,左房圧の上昇),中等度・重度の肺高血圧を有する患者も早期手術の適応であり175, 186, 214), 3~5日以内の準緊急手術が推奨される.一方で,血行動態が非常に安定している患者では,まず抗菌薬の静脈内投与と臨床的・心エコー図的観察を厳密に行い,手術を一時的に延期することもできるが,手術適応があり,手術リスクが低いと想定される患者には,早期からIEチームで外科的治療の選択肢を検討すべきである167, 468). 2.3 治療抵抗性感染(推奨表14) 治療抵抗性感染はIEに対する外科的手術を要する原因として頻度が多いとされている10).適切な抗菌薬治療にもかかわらず持続する感染や敗血症,抗菌薬治療に反応しない心内局所感染(疣腫や弁輪周囲膿瘍),耐性菌または非常に病原性の強い細菌による感染は治療抵抗性感染であり,早期手術が推奨される.治療抵抗性感染に対する外科手術は内科的治療と比較して生存率を改善させるとの報告は多い167, 479). 効果的な抗菌薬が一定期間(3~5日間程度)適切に投与された後も血液培養が陰性化せず,発熱,白血球増多やCRP上昇などの感染所見が持続する場合は治療抵抗性感染と判断し,早期手術を行う必要がある164, 341).また,適切な抗菌薬を開始して48~72時間後の血液培養が持続陽性の場合,病院死亡の独立危険因子となることが報告されている164).IE患者で持続菌血症をきたし,脾臓,腎臓,脊椎,腸腰筋など心臓外の膿瘍やカテーテル感染などのその他の原因が除外された場合は早期手術を行う.感染が著しく増悪をきたすと敗血性ショックに移行する.5~10%のIE患者で敗血症性ショックに陥り.緊急手術を行うことで生存率を著明に改善させると報告されている198, 199). 制御困難な心内局所感染には,疣腫の増大,弁輪や心筋の膿瘍形成,仮性動脈瘤や心内シャントの形成,伝導障害(房室ブロックや左脚ブロック)の発生があげられる.弁輪 周囲膿瘍による心内構築の破綻に至った症例は重症心不全を高率に合併し,死亡率も高く,緊急手術の適応である43, 206, 474, 476, 480).弁輪周囲膿瘍は自己弁IEより人工弁IEで多いとされている183, 480-485).また,自己弁IEの弁輪周囲膿瘍は僧帽弁より大動脈弁において発生頻度が高い179, 482, 486, 487).大動脈弁輪周囲膿瘍では,感染の進展が膜性中隔や房室結節に至り伝導障害を合併することがある484, 488). 細菌の種類によっては抵治療抗性感染をきたし,抗菌薬加療では感染が制御できず,早期手術を余儀なくされる. 真菌,MRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE),稀ではあるが,非HACEKグラム陰性菌は耐性や病原性が強く早期手術を積極的に検討すべきである202, 203, 219, 431, 489). 2.4 感染性塞栓症(推奨表14) 塞栓予防の手術を行う際に重要なことは,塞栓リスクが高い症例を見極めることである.疣腫の特徴,塞栓歴,塞栓の起こりやすい時期の3つを考慮し手術適応を判断する. 塞栓リスクの高い疣腫の特徴は,表15(第3章3.1塞栓症の頻度・時期・リスク因子)に示すとおり複数報告されており39, 40, 42, 43, 196, 217, 490-493),このような疣腫を有する症例では早期手術を検討する.特に効果のある抗菌薬開始後に塞栓症を生じ,10 mmを超える疣腫が残存している場合,増大する疣腫を認める場合は凖緊急手術の適応である.大きさが30 mmを超える疣腫は,脳塞栓のほかに髄膜炎や脳出血を含む脳神経合併症発症のリスクが高い40).近年増加傾向にあるStreptococcus bovis group(Streptococcus gallolyticus)は,緑色レンサ球菌(VGS),Enterococcus属と比べて,10 mmよりも小さなサイズの疣腫で塞栓を起こすことが報告されている494).塞栓発症のリスクに関しては,フランスよりthe Embolic Risk French Calculator(ER- Calculator)が発表され,年齢や糖尿病の有無といった一般的な因子に加えて,塞栓歴や心房細動の有無,疣腫の大きさ,Staphylococcus aureus感染の有無を入力することで客観的に評価できる222).わが国からはER-Calculatorの予測精度の高さが報告されている223). IEは塞栓症を繰り返し生じるため,塞栓歴の有無は早期手術を判断するうえで重要な情報である495).IEでは頭部血管,脾動脈,腎動脈にある一定の頻度で無症候性塞栓を生じるので,画像診断所見の把握はきわめて重要である.塞栓歴がある患者で,先に述べた塞栓リスクの高い疣腫が残存している場合は早期手術が推奨される. これまでの報告から塞栓の起こりやすい時期は,効果的な抗菌薬の投与開始後1~2週であることがわかっている42, 43, 495).フランスからの報告では,抗菌薬開始後1週目に塞栓イベントが起こる頻度は1000患者・週あたり44.9回であるが,2週目には21.3回へ低下し,6週目には2.4回へ低下した222).したがって,抗菌薬治療開始後1週間から2週間以内の手術は塞栓予防の効果が高いともいえる.一方で,抗菌薬を開始して2週間を過ぎれば,それ以降に塞栓が起こる可能性は低下する. 近年,他の手術適応を伴わない10 mmより大きな孤発性疣腫に対する手術は入院死亡率を低下させないという結