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p.59 抽出テキスト

比してやや高い傾向にある5, 464-467).IEに対する外科的治療が内科的治療に比して生存率を改善させることも示されており467, 468),IEでは手術のリスクや合併症も考慮したうえで速やかな外科的治療を考慮しなければならない.しかしながら,ガイドラインに基づく手術適応があるにもかかわらず,その適応が治療医により認識されず,16%の患者で手術が行われなかったとの報告がある167).IEでは多くの症例で複雑な経過をたどる可能性があるため15, 469),入院時にはいかなる症例も内科医(循環器内科,感染症内科,神経内科など)と外科医(心臓血管外科,脳神経外科など)を含む多職種IEチームでその集学的治療方針を議論し,その後も変化する状況に応じて適宜外科的治療の必要性の検討をチーム内で行うべきである470).

急性IEにおいて早期外科的治療が考慮される病態は,主に1.進行するうっ血性心不全,2.難治性治療抵抗性感染,3.塞栓症の危険性の3つがあげられる.それぞれの手術適応における詳細は次項以降に委ねるが,これらの状態を1つでも認める場合は,経過観察や内科的治療の継続を選択することなく速やかに外科手術を行う必要がある.早期手術は一般に緊急手術(抗菌薬投与24時間以内),準緊急手術(抗菌薬投与後数日以内),待機的手術(抗菌薬投与1~2週後)に分けられる.早期手術適応に合致しない症例では通常の弁膜症手術の適応に準じて手術時期を判断することになる177).しかし,IEでは,特に急性期で弁膜症や感染の重症度,塞栓症の可能性が刻々と変化していくことが多く,注意深く観察して手術時期を逸することのないようにしなければならない.

IEの外科的治療に関して,高齢(80歳以上)やfrailtyを有する患者では院内死亡(25~27%)が非高齢者と比較して有意に高く,再入院も多い168, 471).手術適応のある高齢やfrailtyを有する患者では,患者やその家族と医療者が十分に話し合い,意思決定の共有(shared decision making)を行う必要がある.

1.2 術前検査

IEは感染を原因とする全身性疾患のため全身の精査が欠かせない.特に中枢神経合併症を高率に伴うため,脳血管の術前精査は不可欠である(中枢神経合併症の診断に関しては,第3章3. 塞栓症,および中枢神経合併症参照).高齢者,心電図や心エコー図で心筋虚血が示唆される患者では,冠動脈の精査が推奨される.虚血性心疾患のリスク因子を有する症例や冠動脈病変の既往がある患者もスクリーニングの対象である460-462).その評価は冠動脈造影検査や心臓CT検査によって行う.検査法は感染弁位,全身状態,カテーテル操作に伴う塞栓リスク,弁周囲合併症の有無などを検討し選択することになるが120),心臓CT検査は弁輪周囲膿瘍や心臓骨格の破綻,仮性瘤形成の有無といった感染波及の程度も評価でき,術式決定のうえでもきわめて有用である111, 115-117).腎機能障害や造影剤アレルギーを有しない症例,過度の頻脈にない患者では検討されるべき検査である.心臓CT検査を行う際は,その後期相に体幹部撮影を追加することで脾臓や腎臓などの塞栓,心臓外の膿瘍のスクリーニングも可能である(冠動脈造影検査に関しては,第2章5. 5 その他の画像診断参照).発熱に加え腰背部痛や頸部痛などを訴える患者では,化膿性脊椎炎を念頭にMRI検査による精査を行う.IEに脊椎炎が合併する率は5~10%程度,化膿性脊椎炎にIEがみられる率は10~30%程度であり,IEと化膿性脊椎炎の合併は稀ではない131, 324-326).感染瘤は脳血管だけではなく,四肢の動脈にも生じるので,四肢動脈の感染瘤が疑われる症例では該当部位の造影CT検査を行う.

2 外科的治療の適応と手術時期

2.1 外科的治療の適応総論(推奨表13)

IEの治療において適切な抗菌薬投与が第一選択となるが,それのみで治癒しうる症例ばかりではない.ときには有効な抗菌薬を使用しても感染状態がコントロールできず,塞栓症の発症や心不全の増悪をきたし重篤な状態に陥ることはしばしば経験する.IEに対する手術加療は近年増加傾向にある215, 463).わが国の114施設にわたるサーベイランスでは,全IE患者の61%が外科手術を受けていると報告されており85),その割合は諸外国の大規模研究の報告に推奨表13 IE チームによる治療方針決定についての推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

IE チーム

*により手術適応を含めた集学的治療方針を決定するI C * 内科医(循環器内科,感染症内科,神経内科など)と外科医(心臓血管外科,脳神経外科など)からなる診療チームIE:感染性心内膜炎