p.58 抽出テキスト
真菌性IEは,抗真菌薬のみでは感染の制御が難しく,内科的治療と外科的治療を併用することで予後改善につながるとするメタ解析がある440).さらに,準緊急的(数日~ 1週間以内)な外科手術を推奨する意見もある439).一方で,外科的治療が必ずしも生存率向上に寄与しないとの報告もある202).カンジダ性IEの手術適応については,心不全の合併は13.3%と比較的低いものの(非カンジダ性IEでは42.6%),心筋膿瘍の合併46.7%(同22.2%),塞栓症40% (同20%),持続する血液培養陽性例33%(同9.9%)と高率である202). 抗真菌薬治療の第一選択薬として,アムホテリシンBリポソーム製剤かエキノキャンディン系薬(ミカファンギン,カスポファンギン) 349),トリアゾール系薬(ボリコナゾール, ポサコナゾール,イサブコナゾール)が推奨される.しかしながら,菌種ごとに薬剤の選択を検討すべきであり,特にアゾール系薬の選択に関しては,十分なエビデンスが存在しない440).また,バイオフィルム感染症としての観点から,治療初期から2剤併用を検討してもよい(たとえば,アムホテリシンBリポソーム製剤+エキノキャンディン系薬) 202).維持療法として,感受性のあるトリアゾール系薬(例,フルコナゾール)の長期内服(最低6ヵ月~1年以上,または生涯)が,予後改善につながると考えられる348, 349).治療はIEチームにおいて,感染症専門医との協議のうえで決定することが望ましい. 第5章 外科的治療 1 手術リスクの評価と術前検査 1.1 手術リスク評価 IEに対する手術リスクの特殊性として,開心術による脳合併症の増悪があげられる.特に脳合併症を有する症例では,脳神経外科医,脳神経内科医,感染症専門医,循環器内科医,心臓外科医などを含めた多職種IEチームで,手術のタイミングとリスクを検討する必要がある.これに関しては,「第3章 合併症の診断・評価」に詳細に述べられている. 活動期IEにおける手術リスクとして複数の因子があげられる(表21).欧米からの報告によると,緊急手術では1.55~2.39倍,心原性ショックでは2.52~4.97倍,弁輪周囲膿瘍では1.60~6.45倍,腎不全・血清クレアチニン2.0 mg/dL以上では1.32~3.62倍のリスクであった171, 441-447). 手術リスク,特に予測死亡率と主要合併症発症率は,弁膜症手術の際に利用する一般的なリスク解析モデル (JapanSCORE 448, 449),STS score 450),EuroSCORE II 451))で算出できる.しかし,これらのリスク解析モデルにはIEの予後に影響する重要な因子(菌種や弁周囲感染の有無など)は含まれていないため,IEの手術リスクの予測能としては不十分であった.2007年以降,先の因子を含めて評価する,IEに特化した19のリスクスコアリングシステムが報告され155, 159, 170, 171, 441-447, 452-459),より精度の高い予測死亡率を算出できる. 表21 活動期感染性心内膜炎における手術リスク因子 • 高齢者• 緊急手術• 心原性・敗血症性ショック• 黄色ブドウ球菌感染• 真菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に代表される多剤耐性菌感染• 人工弁感染• 弁輪周囲膿瘍合併• 中枢神経合併• 腎不全・腎機能障害• 糖尿病合併