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p.57 抽出テキスト

3.4 グラム陰性菌(HACEKグループを含む)

(推奨表12)血液培養から分離された場合,IEとの関連が強く疑われる一連の菌群にHACEKグループがある.HACEKグループはグラム陰性桿菌で口腔や咽頭に分布し病原性は低く,IEの原因菌全体の1%程度を占めるにすぎない85, 427). HACEKグループによるIE患者の年齢は全体に比べ10歳程度若く,ほとんどが市中感染で,予後は比較的良好で死亡率は5%程度である427).アンピシリン・スルバクタムや第3世代,第4世代セフェム系薬に良好な感受性を示す.報告された分離株は多くがアンピシリンに感性であるが428),β-ラクタマーゼ産生菌の報告429)もあるため,分離菌の感受性結果を確認する.β-ラクタム系薬に忍容性がない場合はシプロフロキサシン,レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系薬も選択肢となる.フルオロキノロン系薬はスイッチ療法として経口投与も可能である430).

HACEKグループ以外のグラム陰性菌によるIEも全体の数%と稀である430, 431).菌種は,Escherichia coli(E. coli)やKlebsiella 属などの腸内細菌目細菌が過半数を占める.緑膿菌はE. coliに次いで頻度が高く,主に医療関連感染として発症する431, 432).薬物静注患者では,セラチア属や緑膿菌の頻度が高い433, 434).分離菌の感受性結果に従って抗菌薬(第3世代,第4世代セフェム系薬,カルバペネム系薬,注射用キノロン系薬)を選択し,6週間を目安に投与する.難治性のグラム陰性菌感染症治療に準じて,アミカシンやゲンタマイシンなどのアミノグリコシド系薬,フルオロキノロン系薬との併用も行われるが,併用期間を含めて定まった治療法はなく,併用療法の有効性の評価も

十分ではない431).抗菌薬のみでは治療困難なことも多く,死亡率は30%以上である431).外科的治療は院内死亡率の低減に関連する可能性がある432, 435).

3.5 真菌

真菌性IEはIE全体の約1%,人工弁IEの0.1%を占めるにすぎない80, 85).28カ国,61施設が参加した多施設共同研究によれば,登録されたIE患者2,760人中,Candida属真菌によるものは1.2%であった202).しかし,真菌性IEは非常に高い致死率を示し,一般的には30~50%,人工弁IEでは50~70%に達する80, 202, 348, 436).

原因真菌はCandida属真菌が最も多く,Aspergillus属真菌などの糸状菌も稀に見られる80).カンジダ性IEの発症病態として,医療関連感染や院内発症があげられる80, 202).発症のリスク因子として,IEの既往や抗菌薬長期投与,血管内カテーテル留置,人工弁置換術後,手術後(特に冠動脈バイパス術や腹部手術後),慢性的な免疫抑制状態などがある80, 437, 438).また,真菌性IE患者の過半数がICU入室歴を有しており,約半数は人工弁感染である202, 436).

真菌性IEにおける血液培養の陽性率は50~75%程度であるが,糸状菌では5%未満に満たない439).診断における血中β-グルカン測定の有用性は,補助診断程度にとどまる438).原因真菌の内訳は,病院におけるカンジダ血症の分離菌と同様であり,Candida albicansが約半数を占める.次いでCandida parapsilosis,Candida glabrata, Candida tropicalisが続く202).糸状菌ではAspergillus属真菌が過半数を占め,多くは人工弁感染である439).

推奨表12 HACEK グループによるIE の標的治療における抗菌薬の推奨とエビデンスレベル

抗菌薬投与量期間(週)推奨クラスエビデンス

レベル備 考

セフトリアキソン1回2 g 1日2回4 I B

人工弁IEでは6週間投与する(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC)

アンピシリン・スルバクタム1回3 g 1日4回4 I Bシプロフロキサシンまたは1回400 mg 1日2回4 IIb Cレボフロキサシン1回500 mg 1日1回4

アンピシリン*感受性がある場合1回2 g 1日6回4 IIb C HACEK(Haemophilus spp., Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Cardiobacterium hominis,Eikenella corrodens,Kingella kingae) IE:感染性心内膜炎