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p.54 抽出テキスト

専門医へ相談すべきである. a. バンコマイシンとβ-ラクタム系薬の併用

バンコマイシンにβ-ラクタム系薬を併用すると,相乗効果を認めることがin vitroで示されている403).小規模な臨床的検討ではあるが,バンコマイシンとセファゾリン(他にはflucloxacillinやcloxacillinが使用されていた)の併用療法では,死亡率低下や治療失敗例の減少を認めなかった404).また,成人のMRSA菌血症に対して標準療法(バンコマイシンもしくはダプトマイシン)にβ-ラクタム系薬(セファゾリン,flucloxacillin,cloxacillin)を7日間併用することの臨床効果を調べたRCT 405)では,持続菌血症は併用療法群で有意に減少する結果であったものの,標準療法群と併用療法群との間で死亡率・再燃の減少・治療失敗に有意差はみられなかった.よって,MRSAによるIE治療として,バンコマイシンとβ-ラクタム系薬の併用療法は推奨されない. b. ダプトマイシンとの抗菌薬併用

ダプトマイシンを使用する場合,β-ラクタム系薬406)もしくはホスホマイシン407)の併用を推奨する意見もある.これはin vitroでの検討408)に加えて,ダプトマイシンの高用量投与やβ-ラクタム系薬やホスホマイシン併用による治療成績向上が根拠になっている.ただし,併用する薬剤や投与量,併用期間は定まっていない.感染症専門医に相談すべきである. c. リファンピシンの併用

MRSAによるPVEに対するリファンピシン併用の有効性は,十分なエビデンスがないため本ガイドラインでは推奨していない.使用の判断は個々の症例に応じて感染症専門医へ相談することが望ましい.

3.2.5 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)

CoNSによるIEの治療は,黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に準じて行う.メチシリン感性CoNS(MS-CoNS)に対する治療レジメンについては,セファゾリンの有用性を検討した報告は限られているが,MSSAに準拠した治療が推奨される.一方,メチシリン耐性CoNS(MR-CoNS)については,MRSAに準じた治療を行う.なお,メチシリン感受性の結果が判明するまでは,MRSAに準じた抗菌薬を選択する.

3.3 Enterococcus 属菌(推奨表10,推奨表11)

腸球菌

腸球菌はIEの原因菌としてレンサ球菌,ブドウ球菌につぐ第3位で,約10%を占める366, 409).高齢者に多い傾向があり,医療関連の発症も少なくない410).TAVI後の人工

弁IEでは,20%以上を占める411, 412).

腸球菌によるIEの死亡率は10~30%と高く,黄色ブドウ球菌と同等かやや低い程度である413).患者が高齢で,心臓以外にも複数の合併症を有していることが理由の1つである414).Enterococcus faecalisが90%以上を占めており,ペニシリンの感受性は良好だが,Enterococcus faeciumはほとんどがペニシリン非感性であり,菌種と抗菌薬感受性結果を確認する.抗菌薬治療における問題点は,腸球菌は本来,β-ラクタム系薬を含む多くの薬剤に抵抗性であるため長期間の治療を要し,かつ標準的治療とされるゲンタマイシンの併用は腎機能障害が問題となる.特に高齢者で4週間を超えるゲンタマイシンの長期間の併用は難しい415).

腸球菌はアミノグリコシド系薬に自然耐性であるため,血液分離株であっても通常,感受性結果は報告されない.その場合は検査室に依頼して高度耐性株かどうか(後述)を確認する.ゲンタマイシンを併用投与に関しては,高度耐性かどうかを確認する.高度耐性株(MIC>500 μg/ mL)であれば併用薬として選択されない.国内における血液培養分離株の検討では,E. faecalisとE. faeciumのそれぞれ32%と24%にゲンタマイシン高度耐性を認めたとする報告がある416).ゲンタマイシンの投与方法は,1日投与量を分割せず1回投与しても治療成績に差はなく,腎機能障害はむしろ少ない417).

抗菌薬の第一選択としては,アンピシリンとゲンタマイシン(MIC≦500 μg/mLの場合)を併用する.β-ラクタム系薬にアレルギーの場合はバンコマイシンを選択する.バンコマイシンはMRSAに準じてTDMによる投与設計を行う.ゲンタマイシンの投与中は週に1~2回程度腎機能をモニターする.ゲンタマイシンの短期間(2週間)投与は,人工弁IEや疣腫サイズが大きい場合(≧10 mm),患者が免疫抑制状態にある場合などでは避けて,4~6週間投与とするのがよい418).さらに治療開始時に腎機能障害(クレアチニンクリアランス50 mL/分未満)を認める場合や,ゲンタマイシン高度耐性株(前述)ではアンピシリンとセフトリアキソン併用が選択される.アンピシリンとゲンタマイシンを併用した場合と同等の治療成績が得られたとする報告が複数ある419-423).なお,アンピシリンとセフトリアキソンの併用療法はE. faeciumに対しては無効であり用いない.

ダプトマイシンを用いた研究で,58人のIE患者の80%以上で有用性が認められたとする報告がある一方で424),単剤治療や通常の用量では十分な成績が得られないとの指摘がある425).ダプトマイシンは,海外では10~12 mg/kgの高用量投与も検討されているが426),国内では腸球菌に