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p.50 抽出テキスト

自己弁IEの治療期間は,血液培養陰性日から4週間であり,ゲンタマイシンの併用療法は最初の2週間行う.なお, β-ラクタム系薬を使用できない症例では治療期間を6週間に延長することを考慮してもよい.人工弁IEの治療期間は,血液培養陰性日から6週間であり,ゲンタマイシンの併用療法は6週間通して行う.副作用である腎機能障害,聴神経障害に注意する.

3.1.2 β溶血性レンサ球菌

β溶血性レンサ球菌(β溶連菌)には,Streptococcus pyogenes,Streptococcus agalactiae,Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilisなどが属する.β溶連菌によるIEは稀であるが,臨床経過は急速で重篤化しやすく死亡率も20%以上と高い376).特にS. agalactiaeによる人工弁IEの死亡率は高く,手術を要することが多い355).

S. pyogenesのペニシリン耐性株はきわめて稀で,ペニシリンGもしくはアンピシリンを選択する.ペニシリン系薬が使用できない場合はセフトリアキソンを選択する.S. agalactiae,S. dysgalactiae subsp. equisimilisも同様であるが,ペニシリン耐性株がときにみられるため355),治療初期2週間はゲンタマイシンの併用を検討する.治療期間は自己弁IE,人工弁IEのいずれも血液培養陰性日から6週間を推奨する.

3.1.3 Abiotrophia spp.,Granulicatella spp.以前は栄養要求性レンサ球菌(NVS)と呼ばれていた群である.比較的長い経過で発症し,診断まで時間を要することから,塞栓症状や弁破壊が発生しやすいと考えられている355).抗菌薬感受性は良好でも治療に難渋し,手術を必要とする症例が多いとの報告がある377).

2000~2015年にかけての76人の報告では378),バンコマイシン耐性株,アミノグリコシド系薬への高度耐性株はなかった一方で,ペニシリンやセフトリアキソンに対する感受性結果は菌種によって差を認めた.

抗菌薬の選択は,分離株の感受性結果が判明するまではペニシリンGもしくはアンピシリンにゲンタマイシンを併用する.結果判明後はペニシリン系薬による単剤治療でよいが,最初の2週間はゲンタマイシンの併用を行う.ペニシリン系薬に非感性の場合は,セフトリアキソンもしくはバンコマイシンを選択する.β-ラクタム系薬に忍容性がないケースではバンコマイシンを使用する.治療期間は,自己弁IE・人工弁IEのいずれの場合も,血液培養陰性日から6週間が推奨される. 3.1.4 肺炎球菌

肺炎球菌によるIEは稀であり,全体の1%未満である379).肺炎に髄膜炎を合併することがしばしばある355, 380).特に髄膜炎を合併している症例では抗菌薬の髄液移行性を考慮して,セフトリアキソンやセフォタキシム,もしくはバンコマイシンを選択する.髄膜炎の合併がない場合の第一選択薬はペニシリンG(もしくはアンピシリン)である.わが国ではペニシリン耐性肺炎球菌は稀であるが381),肺炎球菌の高い病原性を考慮すると,髄膜炎を合併している場合や髄膜炎が疑われる症例では,分離株の感受性結果が判明するまでセフトリアキソンとバンコマイシンの併用を考慮する.また,カルバペネム系薬も本菌への治療薬として使用可能であるが,JANISのデータによれば,わが国の肺炎球菌はメロペネムに対する非感性株がときにみられるので留意する382).なお,ペニシリン系薬感性(S)の基準が,髄膜炎以外ではMIC≦2 μg/mLに対して,髄膜炎ではMIC≦0.06 μg/mLと異なるので注意が必要である.

自己弁IEでは血液培養陰性日から4週間,人工弁IEでは血液培養陰性日から6週間の治療期間とする.

3.2 Staphylococcus 属菌(推奨表8,推奨表9)

ブドウ球菌

3.2.1 Staphylococci総論

ブドウ球菌は病原性の点から黄色ブドウ球菌とCoNSに分けて考える.

黄色ブドウ球菌は先進国でIEの原因微生物の第1位であり383),アトピーなどの皮膚バリア機能低下を契機とした市中発症例や,血管内留置カテーテルなどを介した医療関連感染もある.黄色ブドウ球菌によるIEは,一般的に急性の経過をたどり,弁破壊や周囲への進展(膿瘍形成),遠隔巣の形成など重症化しやすい.その死亡率は20%以上である383, 384).特に人工弁IEでは致死率が高く385),早期の弁置換術が予後改善に寄与するとされる385, 386).

CoNSは,血管内留置カテーテルなどを介した医療関連感染を契機として,人工弁IEの原因菌である場合が多いが,自己弁IEでも原因菌の8%を占める387).したがって,弁置換術後患者でなくても,本菌が血液培養から検出された場合,IEの可能性を排除すべきでない.全般に,CoNSの病原性は低く,IEの診断までに時間を要することから,弁破壊や弁輪周囲膿瘍の合併率が高い388, 389).また,わが国でのCoNSにおけるメチシリン耐性率は,CoNS全体の80%程度を占める382).メチシリン耐性CoNSによるIEの