p.49 抽出テキスト
a. ペニシリン感性の場合 第一選択の抗菌薬としてペニシリンGもしくはアンピシリンを選択する.セファゾリン,セフトリアキソン,バンコマイシン,テイコプラニンは代替薬である. ペニシリンGは血中半減期が短いため,1日に複数回(最大6回)の分割投与が必要373)であるが,持続投与も可能である.1回あたり12時間を超えての持続投与は薬効が失活する懸念があるため,12時間で薬剤を交換する.ペニシリンGは副作用として血管痛や高カリウム血症(カリウムの含有量は100万単位あたり1.53 mEq)などがみられる. 自己弁IEでは,上記の抗菌薬を血液培養陰性日から4週間投与する.また,β-ラクタム系薬とゲンタマイシンの併用を2週間行うことで治療を終了することができる374, 375)のは,1疣腫サイズが10 mm以下,2塞栓症状,遠隔感染巣がない,3手術適応がない,4刺激伝導障害を認めない,5肝腎障害を認めない,の5つの条件を満たした場合とする.ただし,治療開始後に上記の条件に反する所見が認められた場合には,通常の治療に切り替える. 人工弁IEでは,血液培養陰性日から6週間投与する.また,β-ラクタム系薬で治療を行う場合,最初の2週間はゲンタマイシンを併用することも推奨される67).ただし,ゲンタマイシンの併用が,ペニシリン系薬単独の治療と比較して優れていることを示した研究はなく,腎機能障害・聴神経障害がある症例ではゲンタマイシンの併用を避ける.β-ラクタム系薬に忍容性がない場合には,バンコマイシンまたはテイコプラニンが選択されるが,ゲンタマイシン併用による有益性は明らかではなく,原則として単剤療法とする.ゲンタマイシンの併用療法を行う場合には薬剤のPK/ PDを考慮し,腎機能障害,聴神経障害をきたすことがあるため,投与期間中は血中濃度を測定して副作用発現の軽減に努める. b. アレルギーその他ペニシリン系薬に忍容性がない場合 ペニシリン系薬へのアレルギーがある場合でも,アナフィラキシー・重症薬疹などの重度アレルギー症状でなければ,セフェム系薬であるセファゾリンやセフトリアキソンへの変更が可能である.ただしセファゾリンは中枢移行性が不良なため,髄膜炎や脳膿瘍を合併している症例では他剤を検討する.一方で,ペニシリン系薬を含むβ-ラクタム系薬で重度のアレルギーが出た症例については,β-ラクタム系薬に忍容性がないと考え,バンコマイシンやテイコプラニンを選択する(保険適用外).なおダプトマイシンは,VGS治療では用いない 355). c. ペニシリン非感性の場合 ペニシリン非感性(中間耐性または耐性)株にペニシリンGを使用する場合は,治療初期にゲンタマイシンを2週間併用する.また,セフトリアキソンに感性であれば使用可能であるが,単剤治療かゲンタマイシンやアンピシリンを併用すべきかについて一定の見解はない.薬剤アレルギーの問題でβ-ラクタム系薬が使用できない場合はバンコマイシン,テイコプラニンを選択する.バンコマイシン,テイコプラニンにゲンタマイシンを併用することで治療成績向上につながるかどうかは明らかではない.自己弁IEでは血液培養陰性日から4週間,人工弁IEでは血液培養陰性日から6週間の治療が必要である. 4)肺炎球菌* ペニシリンG orアンピシリン1回200~400万単位1日6回または持続投与 1回2 g 1日6回6 I C髄膜炎合併なし:ペニシリンG:MIC ≦2 μg/mLで使用可髄膜炎合併時:ペニシリンG:MIC≦0.06 μg/mLで使用可 セフトリアキソン1回2 g 1日1回b 6 IIa Cペニシリン耐性の場合に使用セフォタキシムも使用可 バンコマイシン†初回負荷投与c 25~30 mg/kg維持投与量c 15~20 mg/kg 1日2回6 IIa Cペニシリン,セフトリアキソン耐性の場合β -ラクタム系薬にアレルギーの場合*薬剤感受性が判明するまではセフトリアキソンとバンコマイシンの併用を考慮するa:1回1 mg/kg 1日2~3回でもよい. 投与設計,TDMについては本文およびAppendix表2を参照b:髄膜炎合併時には1回2 g 1日2回に増量を検討c, d:投与設計,TDMについては本文およびAppendix表2を参照†保険適用外