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p.43 抽出テキスト

様の病変が生じることが示されている358, 359).しかしながら,健康な歯根膜の状態(歯周病なし動物モデル)では, IEの合併頻度は低く,歯周病巣の存在がIEの発症に関連することが明らかになっている359).

IEの発生病態において,ある病原微生物が弁膜局所に接着し増殖するためには,何らかの原因で菌血症が生じる必要がある360-363).IE患者において,原因菌の侵入門戸は不明であることも少なくないが,推定される侵入門戸として口腔内(齲歯や歯周病などの歯科的病変)のほかには,血管内留置カテーテル,感染を合併した術創部(術後創部感染),尿路感染症,肺炎,アトピー性皮膚炎を含む皮膚病変などが推定されている(表19) 348, 364, 365).IEの発症機序を考慮すると,菌血症の原因となる感染症(感染巣)を早期に治療することは,特にIEの発症リスクが高い患者にとって重要である.

2 エンピリック治療(推奨表5)

血液培養の結果判明前にエンピリックに抗菌薬治療を開始すべきかどうかに関して,一定の見解はない.しかしながら,臨床的にIEの可能性が高い場合には,抗菌薬開始を遅らせるべきではない.また,血行動態が不安定である,敗血症である,塞栓症をきたしている,弁輪周囲膿瘍がある,などの場合にも速やかなエンピリック治療開始が望ましい.IEの原因菌の約8割はブドウ球菌・レンサ球菌・腸球菌で占められるため,これらを念頭に抗菌薬を選択し, MRSA保菌歴があれば抗MRSA薬の投与も検討する.ま

発の報告もあるため,治療期間の設定は慎重に行う.

真菌(Candida属やAspergillus属)性心内膜炎の場合,アゾール系抗真菌薬による長期抑制療法が推奨される348, 349).特に人工弁IEで外科的処置が行われなかった症例では,生涯にわたる抗真菌薬内服が有効であるとの報告もある350).外科的処置が行われた場合でも,弁輪周囲膿瘍を合併した症例では生涯にわたる長期の抗菌薬内服が推奨されることもある346).

退院後も抗菌薬治療が必要な患者には,入院中から心臓内科医や心臓外科医,看護師,感染症専門医,薬剤師,緩和ケアチーム,OPATチームなど多職種による包括的な介入が推奨される.患者の状態に応じたケアを提供することで,退院後の治療の継続と安全性が確保され,治療の遅延や感染の再発を防ぐ効果が期待される347, 351).例として, Enterococcus属やブドウ球菌によるIEにはテイコプラニンが代替療法として使用され,その長い血中半減期により在宅治療にも適している352).しかしながら現状,国内ではOPATの実施が限定的であることが課題である353).

1.5 歯性病巣,感染原因の治療

口腔衛生の重要性は広く認識されている11, 354, 355).スケーリングによる口腔衛生の改善および良好な口腔衛生状態の維持は,IEのリスクを低下させる可能性がある356).少なくとも年に1回の定期的な歯科スケーリングは,IEの有意な減少と関連していた356).さらに,最新のレビューでは,侵襲的歯科処置前の予防的抗菌薬投与の有効性と安全性が報告されている357).IEの発症病態に関する歯周病動物モデルを用いた検討では,抜歯処置によりヒトIEの病態と同

表19 感染性心内膜炎の原因菌と侵入門戸

菌名推定される主な侵入門戸

黄色ブドウ球菌皮膚軟部組織(術創部,褥瘡,アトピー性皮膚炎など),血管カテーテル留置部位,肺炎など緑色レンサ球菌(VGS),栄養要求性レンサ球菌,HACEKグループ口腔内(齲歯・歯周病,抜歯や歯科処置後),上気道粘膜腸球菌消化管(手術部位含む),泌尿器CoNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌) Corynebacterium spp. Cutibacterium (Propionibacterium) spp.皮膚軟部組織(手術部位含む,血管カテーテル留置部位など)肺炎球菌呼吸器(肺炎,副鼻腔炎,中耳炎),髄膜炎など侵襲性感染症セラチア菌(Serratia marcescens)緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血管カテーテル留置部位,泌尿器,下気道(人工呼吸器関連肺炎など),創傷部位(緑膿菌),皮膚-注射薬使用(injection drug use) Candida属真菌消化管・肝胆道系,泌尿器,手術部位や血管カテーテル留置部位などCoxiella burnetii上気道(動物との接触や特に家畜に汚染された土壌やエアロゾルの吸入) Bartonella spp.皮膚(Bartonella henselae;猫による受傷,ノミによる刺傷, Bartonella quintana;シラミ)