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p.42 抽出テキスト

た日からとする.抗菌薬治療中に弁置換術を実施した自己弁IE症例の治療期間は,人工弁IEではなく自己弁IEに準じる.また,手術を実施した症例において,術中検体の培養が陽性になった場合には,手術日を起点日とする.なお,弁検体のグラム染色で陽性所見が得られたものの,培養が陰性であった場合は,染色所見は死菌によるものと判断する.したがって,治療期間の起点は血液培養が陰性化した日とする.

治療効果判定については,毎日の注意深い観察のもと,抗菌薬開始後48~72時間を目安に行う164).血液培養陽性例では,血液培養の陰性化が効果判定の指標となるため,治療開始後24~48時間おきに2セットの血液培養を採取する164).ただし,血液培養が陽性と判明するまで1~3日程度を要するため,新たな塞栓症状・心不全症状の出現に注意し,手術適応についての判断を迅速に行えるように, IEチーム内で連携する.

治療効果判定において,血液培養の陰性化は重要な指標であるが,体温の推移も参考となる.適切な抗菌薬治療を受けた患者のほとんどは3~5日以内に解熱するが341), Staphylococcus aureusが原因菌の場合は5~7日程度を要する342, 343).また,塞栓症や弁輪周囲膿瘍の合併例では解熱に時間を要し,血液培養の陰性化が得られにくい.一方,基礎疾患の影響で免疫抑制剤や解熱鎮痛薬を内服している症例では,体温上昇が抑制されることがあり,体温を臨床効果の指標として用いることが難しい場合がある.さらに白血球数やCRP,その他の炎症マーカーは,週単位で経過を見れば参考になるものの344),非特異的マーカーであり,あくまでも参考に過ぎないことに留意する.このような症例では,患者の全身状態や炎症マーカーの推移を含む臨床所見を総合的に評価する.

以上より,抗菌薬治療を行っているにもかかわらず持続する発熱や,血液培養が持続的に陽性となる場合には,まずはIEの合併症の精査が必要である(表18,第3章2参照). IEの診療経過中には,心合併症以外の原因で発熱が持

続したり,いったん解熱した後に再び発熱がみられることがある.原因としては,抗菌薬による薬剤熱(特に治療2週目以降に多い),院内感染(カテーテル関連血流感染,尿路感染,肺炎,クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎など),また,深部静脈血栓症や結晶性関節炎(痛風,偽痛風)などがあげられる.さらに,抗菌薬治療に際して,感染カテーテルを抜去していない,粗大な膿瘍をドレナージしていないなど,感染巣のコントロールが十分でなければ,抗菌薬が本来有効なはずでも,臨床的に奏功しないこともある.臨床経過に基づいた効果判定は慎重に行うべきであり,感染症専門医への相談が望ましい.

このように,治療中にさまざまな要因で発熱を認めることがあるため,抗菌薬変更の判断に悩む場面は少なくない.基本的には,血液培養の陰性化を主たる判断材料とする.

1.4 特殊なIE症例における長期間(内服) 抗菌薬の投与

原則として,推奨される投与期間を終了すれば後療法として抗菌薬を継続する必要はない.ただし,原因微生物の感受性(非感性株)の問題や,アレルギー・副作用により推奨される方法で治療を完遂できなかった場合には,通常よりも長期の投与を行うことがある.

以下のような場合に内服抗菌薬を長期間投与することがある.

臨床的な手術適応があるにもかかわらず,手術に伴うリスクが高いなどさまざまな理由で手術に至らないケースは少なくない164, 341).この場合,患者の予後は非常に厳しいことが知られており345),このような患者に対しては,抑制的抗菌薬療法(suppressive antibiotic therapy)や長期抗菌薬療法(long-term antibiotic therapy)と呼ばれる,長期にわたる抗菌薬治療が重要な選択肢となることがある346).実際には,外来や在宅での継続的抗菌薬療法(外来静注抗菌薬療法[OPAT],在宅での抗菌薬治療)や緩和的アプローチを考慮して行われる345).

CIED関連感染や人工血管感染にIEを合併した症例が該当する.たとえばCIEDの抜去が不可能な場合は長期間の内服抗菌薬が選択されることがある347).抗菌薬長期内服症例を検討した22例の報告347)では,上述のCIED関連感染・人工血管感染に加え,人工関節挿入例・経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)後の人工弁関連の症例が含まれていた.この報告で用いられたレジメンはST合剤,アモキシシリン,クリンダマイシン,ドキシサイクリンであった.抗菌薬の選択と投与量について一定の見解はない.再

表18 感染性心内膜炎の合併症と検査方法

検査合併症心エコー図検査(TTE/TEE)弁輪周囲膿瘍,心膿瘍(心筋膿瘍),弁破壊・穿孔頭部CT,頭部MRI脳塞栓,脳出血,脳膿瘍,感染性脳動脈瘤

胸腹部CT塞栓症臓器膿瘍(脾膿瘍,腎膿瘍,腸腰筋膿瘍など)胸腰部MRI椎体椎間板炎,膿瘍