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響を与えることは少ない274).一般的に,抗菌薬治療を継続すれば予後良好である275).しかしながら,抗菌薬開始後も発熱が遷延する場合には,膿瘍形成の有無を評価する必要がある.脾梗塞から脾膿瘍に伸展する頻度は3~5%程度とされる275, 276).脾膿瘍に至った場合には,抗菌薬治療に抵抗性となるため,感染源の制御を目的として脾摘出術が必要とされる.なお,脾膿瘍に対して脾摘出術を行った場合の予後は良好と報告されている277).脾摘出術のタイミングとしては心臓手術前や心臓手術と同時,あるいは心臓手術後275, 278, 279),いずれも報告がある.全身状態が不良で脾摘出術に耐えられない場合に,脾膿瘍の経皮的ドレナージ術を施行した例も報告されている280).なお脾摘出術を行った場合には,その後肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ桿菌type b(Hib)のワクチン接種が必要となる. 3.3.2 腎臓 IEによる塞栓症を合併した症例では,10%に腎梗塞を認めたと報告されている10).腎梗塞はほとんどの場合,無症状であるが,血尿,背部痛,腹痛を認めることがある276).腎生検あるいは腎の剖検を施行したIE例において,病理学的には31%に腎梗塞を認めたとの報告がある281).腎梗塞の診断には造影CTが有用であり,楔形の造影欠損を認める.腎梗塞に対しては抗菌薬治療が有効であり,膿瘍形成などの合併症は少ない. 3.3.3肺右心系IEまたはペースメーカなどのデバイス感染から,菌塊が塞栓子となって肺動脈に塞栓をきたす敗血症性肺塞栓症(septic emboli)がしばしば認められる.かつては右心系IEのおもな原因は静脈注射薬物使用であったが,心臓再同期療法や植込み型除細動器などの普及によりデバイス感染が増加し282),それに伴いIEに合併した肺塞栓は増加している.無症状のものも含めると,ペースメーカ感染の30~50%で肺塞栓を合併しているとの報告がある283, 284).ほとんどは無症状であるが,発熱,呼吸困難,胸痛,咳,喀血を認める場合もある285).重症の塞栓症では,血栓による塞栓症と同様に急激な呼吸状態の悪化およびショック状態を呈し,予後不良である.また,肺塞栓を起こした部位に肺膿瘍を生じることがある.胸部X線写真や単純CTの所見は両側性かつ多発性であることが多いが,浸潤影や結節影,楔状影,空洞形成,胸水など多彩かつ非特異的である.造影CTでは,肺動脈内の造影欠損や末梢の楔形の高吸収領域として認められる286). また,逆に胸部CTで,両側多発性陰影など敗血症性肺塞栓症の特徴的な所見がみられた場合には,IEの合併を疑い,三尖弁や肺動脈弁,デバイスリードなどを含めて, 心エコー図検査で右心系を注意深く評価する.最も疣腫のみられる可能性の高い部位は三尖弁であるが,右室流出路や右房壁などに疣腫がみられることもある285). 肺塞栓の治療は,酸素吸入や抗菌薬治療などの内科的治療が基本であるが,呼吸状態の悪化やショックをきたすような重症の塞栓症であれば,カテーテルや外科的手段による塞栓除去術が必要になる.また,直径6 cm以上の肺膿瘍を合併した症例は抗菌薬治療だけでは難治であることが多いとされ287),膿瘍のドレナージが必要になる.敗血症性肺塞栓症は再発することが多く,塞栓源を同定して治療することが重要である.肺塞栓を起こした後にも三尖弁に20 mm以上の大きな疣腫が存在する 場合は,疣腫の外科的除去を積極的に考慮する必要がある288).原因がデバイスリード感染であれば,リードの抜去が原則である.なお,IEに合併した敗血症性肺塞栓症に対する抗凝固療法エビデンスは乏しく,喀血や頭蓋内出血などのリスクもあるため,ルーチンでの使用は避け,個々の症例における血栓症の合併やリスクを考慮したうえで慎重に適応を検討すべきである(詳細は第8章3. デバイス感染,4.右心系のIE参照). 3.3.4 その他 IEに合併するその他の塞栓症としては,肝臓,冠動脈,四肢末梢動脈,腸間膜動脈などがある.塞栓症を認めたIEのうち,臓器別の内訳をあげると,冠動脈は2.8%,肝臓は2.2%,四肢末梢動脈は11.7%であった10).冠動脈への塞栓症は,IE全体の0.3~0.5%に認められる比較的稀な合併症であるが39, 180),ひとたび発症すれば死亡率は高いため,注意を要する.冠動脈塞栓症に対しては保存的加療,経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス術による血行再建の報告がそれぞれあるが,治療方法について統一された見解はない.抗凝固療法や抗血小板療法の併用を支持するエビデンスに乏しいため,これらの併用は,個々の症例の全身の病態を考慮したうえで判断する.そのほか腸間膜動脈や四肢末梢動脈への塞栓症に対しては特殊な治療はなく,早い段階であれば外科的あるいは経カテーテル的に塞栓子除去を施行することが可能であるが289),壊死が進行している場合は,外科的に壊死した組織の切断や切除を行う. 4 伝導障害 房室結節とヒス束は,大動脈弁の無冠尖と右冠尖の直