p.35 抽出テキスト
瘤の合併率は,脳血管撮影によるスクリーニングを行った場合,4~9%程度と報告されている128, 236).脳出血またはくも膜下出血を認めた場合,脳動脈瘤の合併率は22%まで上昇する128).感染性脳動脈瘤は通常の脳動脈瘤とは好発部位が異なり,中大脳動脈の遠位に認められることが多く,約25%は多発性である237).脳出血またはくも膜下出血を認めない場合の感染性動脈瘤検出は1%と報告されている128).特に抗凝固療法中はくも膜下出血や脳出血の合併に注意が必要である. 中枢神経合併症を有する患者では生命予後が不良となることが多くの研究で報告されているが40, 45, 224, 238),1345人のIE患者を対象とした観察研究では,頭蓋内出血や中等度以上の脳梗塞だけが予後不良と関連していた40).軽症例や無症候性の脳梗塞が予後と関連しているか否かは明らかでなく41, 207, 239),重度ではない脳梗塞患者に対して早期に開心術を行っても,出血性梗塞などの術後神経合併症のリスクは低い41, 240-242).一方で頭蓋内出血を伴う場合,早期に開心術を行うと死亡率や術後神経合併症が多いことが報告されている225, 242). 3.2.2 中枢神経合併症の診断法(推奨表3) IEに合併する中枢神経合併症の診断には,頭部MRIが最も有用である.MRIを撮影できない場合や,患者の全身 状態が不安定な場合は,頭部単純CTを撮影し,必要に応じて3次元CT血管撮影および頭部造影CTを追加する(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).MRIの撮影条件は施設によって異なるが,拡散強調画像(DWI),水抑制反転回復法(FLAIR)画像,T2*強調画像または磁化率強調画像( SWI),MRAを撮影することが好ましい(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC).CTと比較してMRIのDWIでは急性期脳梗塞の検出感度が高く125, 127),FLAIR画像とT2*強調画像またはSWIを組み合わせることで,急性期の脳出血やくも膜下出血の診断においてもMRIの診断精度はCTとほぼ同等となる243). IEを疑う患者で脳出血またはくも膜下出血を認めた場合,脳血管イメージング(脳血管撮影,CTA,MRA)による感染性脳動脈瘤の検索を行うことが強く推奨される.感染性脳動脈瘤は中大脳動脈の末梢側にできることが多いため,MRAを撮影する際には,中大脳動脈全体(M3以遠)が含まれるように撮影範囲を広めに設定することが好ましい.5 mm未満の動脈瘤はMRAで検出できない可能性があるため244),脳出血やくも膜下出血を合併する場合は,腎機能障害に注意しつつ,脳血管撮影もしくは3次元CT血管撮影を検討する245).IEの患者では,T2*強調画像およびSWIで,脳出血やくも膜下出血に加えて高頻度に微小脳出血を認める229, 230, 235).IEにおける微小脳出血の臨床的意義は明らかではないが230, 246),少数例での検討では脳出血発症または開心術後の脳出血との関連が報告されており247, 248),感染性脳動脈瘤との関連が疑われている249, 250).一方で,微小脳出血と術後脳出血の関連はなかったとの報告もあり230),微小脳出血のみでIE手術を延期するべきではない126).脳膿瘍は,MRIではDWIで著明な高信号を呈し,CTでは低吸収となる.また,造影MRIおよび造影CTにて特徴的な被膜のリング状増強効果が認められる.システマティック・レビューとメタ解析では,MRIで半数以上に急性期脳虚血病巣,微小脳出血,4人に1人に出血性病巣,10人に1人に膿瘍もしくは髄膜炎,16人に1人に頭蓋内感染性動脈瘤を認め,神経学的所見が脳MRI検査の契機となった研究を除外しても同様であった130).治療方針の変更は8人に1人,手術計画の変更は7人に1人であった130).よって,神経学的所見の有無にかかわらず,IE疑いやIE確定診断例では中枢神経合併症の評価のために脳MRIによるスクリーニングを推奨する. 頭痛や意識障害,髄膜刺激症状があり,髄膜炎やくも膜下出血を疑う場合は,腰椎穿刺による髄液検査を行い,髄液初圧,細胞数と分画,蛋白量,糖濃度,キサントクロミーの有無を調べる.同時に髄液のグラム染色と検鏡およ 推奨表3 IEの中枢神経合併症の診断についての推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル IE(を疑う)患者では,局所神経症状を呈する場合は,速やかに脳MRI による中枢神経合併症精査を行うI B IE(を疑う)患者で脳出血またはくも膜下出血を認めた場合,脳血管イメージング(脳血管撮影,CTA,MRA)による感染性脳動脈瘤の検索を行うI C IE(を疑う)患者では,明らかな局所神経症状を呈さない場合であっても,脳MRI による中枢神経合併症精査を行うI B IE(を疑う)患者でMRI が撮影できない場合や,患者の全身状態が不安定な場合は,頭部単純CT を撮影し,必要に応じて3 次元CT 血管撮影および頭部造影CTを追加することを考慮してもよいIIb C MRI の撮影条件は,DWI,FLAIR 画像, T2* 強調画像またはSWI,MRA で撮影することを考慮してもよいIIb C IE:感染性心内膜炎,CTA:コンピュータ断層血管造影,MRA:磁気共鳴血管造影,DWI:拡散強調画像,FLAIR:水抑制反転回復法, SWI:磁化率強調画像