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る206)(外科的治療の時期に関しては,第5章2を参照). 3 塞栓症,および中枢神経合併症 3.1 塞栓症の頻度・時期・リスク因子 IEにおける塞栓症は,生命を脅かす合併症であり40, 41, 207),その合併率は20~50%である42, 85, 190, 208-211).中枢神経系が最も多く(60~70%),続いて脾臓のほか,左心系IEでは腎臓,四肢動脈,肝臓,腸,冠動脈などに,右心系IEでは肺に生じる85).無症候性も少なくないため,実際の合併率は明らかでない.塞栓症の発症時期は抗菌薬投与前が最も多く42),適切な抗菌薬投与によりリスクは減少する41-43, 209, 212-215).したがって,塞栓症の予防のためには適切な抗菌薬を可及的速やかに開始することが重要である.抗菌薬投与後の塞栓症は投与開始後数日での発症が多く,その後急激に減少し,2 週間を超えてから発症することは少ない42).つまり,塞栓症を予防する目的での手術は,治療開始の早いタイミングが最も有益である. 塞栓症のリスクに関与する因子(表15)として,疣腫の大きさ(>10 mm,抗菌薬投与後に増大) 39, 43, 190, 208, 210, 211, 216-218), 可動性208, 211),付着部位(僧帽弁,特に前尖) 40, 43, 210),原因菌(ブドウ球菌40, 43, 210, 211),真菌219)),塞栓症の既往43),多弁性220)などが報告されており,心エコー図検査で塞栓症リスクを予想することは,手術時期の決定に重要である(第5章 2 1 外科的治療の適応総論,2. 4 感染性塞栓症参照).一方 で,うっ血性心不全や感染の制御困難などの他の手術適応がない例においてのみ,疣腫の大きさが予後不良の因子であったという報告がある221).また,疣腫の性状だけでなく,塞栓症の既往や糖尿病の合併など,複数の臨床所見を加味 して塞栓症リスクをスコア化する試みもなされている222, 223). 3.2 中枢神経合併症 3.2.1 中枢神経合併症の頻度,種類 中枢神経合併症はIE診断前もしくは診断後に発症し,さらにその後の経過で再発が起こる可能性もある40).脳卒中,髄膜炎,または脳膿瘍の患者ではIEの可能性があり,特に発熱や血液検査上の炎症所見を伴う中枢神経症状ではIEを疑う.また,初発症状の約半数が中枢神経症状であったとの報告もあり224),基礎に心疾患がある例で発熱を伴う神経症状がみられる場合は,IEを疑って検索する必要がある.IEにおける中枢神経合併症は,疣腫の塞栓による脳動脈の閉塞に加え,原因菌による感染の播種,炎症(髄膜炎・脳膿瘍など)などの複合的な要因によって引き起こされる.症候性の中枢神経合併症は,IE患者の10~ 35%に認められる40, 224-227).一方で脳MRIを用いた研究では,IE患者の65~80%に何らかの中枢神経合併症が認められることが報告されており228-231),これらの集団では症状が軽微なものも少なくないため,実際には中枢神経合併症の頻度が過小評価されている可能性もある.IEを疑う患者では,明らかな局所神経症状を呈する場合だけでなく,一過性脳虚血発作などの軽微な症状や,頭痛・めまい・いつもより朗らか/暗いなどの非特異的・些細な神経症状の場合であっても積極的に中枢神経合併症を疑い,脳MRIや造影CTによる精査を行うことが推奨される(推奨表3). 中枢神経合併症の種類としては,脳梗塞および一過性脳虚血発作が最も多く,そのほか,脳出血,くも膜下出血,脳動脈瘤,脳膿瘍,脳髄膜炎,中毒性・代謝性脳症,てんかんなどがあげられる44, 224, 229).わが国における多施設共同研究では,手術を施行したすべてのIE患者のうち9.7%が中枢神経合併症を呈し,その内訳は脳梗塞64.6%,脳出血31.5%,脳膿瘍2.8%,髄膜炎1.1%であった226).中枢神経合併症の原因菌としては,S. aureusが多く,他の菌と比較して脳梗塞リスクが2~3倍あると報告されている45, 232, 233).疣腫のサイズや可動性が塞栓性リスクと関連する11).脳梗塞は無症候性も含めるとIE患者の50%前後に認められ,多発性で小病変が多い229, 231).脳出血およびくも膜下出血は5 ~10%に認められるが229, 231, 234),無症候の場合も少なくない.これらの出血性合併症は,出血性梗塞や,感染性脳動脈瘤の破裂,細血管の破綻によって引き起こされる.脳MRI-T2*強調画像を用いた研究では,上記に加え,微小脳出血が約60%と高率に認められる230, 233, 235).感染性脳動脈 表15 感染性心内膜炎における塞栓症合併のリスク因子⦆ 疣腫の性状• >10 mm • 抗菌薬投与にかかわらず増大• 可動性に富む• 僧帽弁前尖• 多弁性• ブドウ球菌,真菌臨床背景• 高齢• 塞栓症の既往• 心房細動合併• 糖尿病合併