p.33 抽出テキスト
24時間以内),準緊急手術(抗菌薬投与後数日以内),待機的手術(抗菌薬投与1~2週後)に分けられるが,敗血症性ショックの場合は緊急~準緊急手術を検討すべきである. 持続性感染の定義は厳密ではないが,およそ7日間程度の適切な抗菌薬治療にもかかわらず,血液培養が持続陽性である状態であり,抗菌薬の投与開始から48~72時間後の血液培養の持続陽性は,院内死亡の独立した危険因子である164).IEにおける持続性感染では多くの場合,抗菌薬だけでは感染を制御することは困難であり,心臓以外の感染が除外された場合,早期の外科的治療が検討される.持続的な発熱は,抗菌薬の副作用として引き起こされることもあるため,注意が必要である. 2.2 持続性感染の原因 持続性感染の原因は,耐性菌や非常に病原性の高い細菌感染の場合と,弁輪周囲膿瘍などの抗菌薬で改善しない局所感染の場合がある.黄色ブドウ球菌は,感染の進行が速く,局所組織破壊や膿瘍形成を引き起こす可能性がある201).その他,抗菌薬では制御できない病原微生物は,真菌,多剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌[MRSA]やバンコマイシン耐性腸球菌など),および稀に非HACEKグラム陰性菌がある202, 203)(表14). 2.3 弁輪周囲膿瘍でみられる病態と診断 弁輪周囲膿瘍などの抗菌薬で改善しない局所感染は,持続性感染の原因となる.持続する発熱,新規の房室ブロック,新たな心雑音,再発性塞栓症,心不全の発症などがあると,弁輪周囲膿瘍の形成,増大の可能性を考える必要がある.弁輪周囲膿瘍は,自己弁より人工弁で多く認め,僧帽弁位よりも大動脈弁位で多い10, 204). 心エコー図検査での弁輪周囲膿瘍の診断の感度は,TTEでは約50%であるが,TEEでは約90%である82).TTEでは描出できないこともあるので,IEの診断時には,弁周囲の評価のために可能なかぎりTEEを施行したほうがよい. 弁輪周囲膿瘍は心エコー図検査で診断することが多いが,人工弁や僧帽弁輪石灰化などのアーチファクトのため,弁周囲の観察が不十分となることもある.その場合に,心 臓CTで,心エコー図検査では確認できない弁輪周囲膿瘍を評価できることがある110).また, 18F-FDG PET/CT検査は人工弁感染において,弁輪周囲膿瘍の診断に有用である142). 弁輪周囲膿瘍は,病理学的には「心内腔と交通しない壊死物質や化膿物質を内包する弁周囲の腔」と定義されるが,心エコー図検査では「低または無エコー輝度の弁周囲領域」として認識される.エコー輝度の低下は炎症による組織の浮腫を表していると考えられ,時間の経過とともに無エコー域に変化する.弁輪周囲膿瘍が形成されるまでの期間は,原因菌などにもよるが,感染性病変のどの時期に検査を行っているかにより心エコー図所見が変化することを認識する必要がある. 大動脈弁位の弁輪周囲膿瘍の好発部位は,大動脈僧帽弁線維性連続部(aorto-mitral fibrous continuity: AMFC)である.この部位は,解剖学的に線維組織により形成され,血流が少ないため,一度感染が起こると治りにくく,膿瘍が拡大していく傾向がある205). 弁輪周囲膿瘍が生じ組織が脆弱になると,仮性瘤や瘻孔を形成することがある.大動脈弁輪部の瘻孔では大動脈と左室が交通し,大動脈弁逆流が生じる.AMFCでの瘻孔は左房と交通し,僧帽弁逆流の血行動態となる.弁輪部から右室や右房に瘻孔を形成することもある. 人工弁の場合は,弁輪周囲膿瘍が進行したときに人工弁周囲逆流や人工弁離開が生じることがある.弁輪周囲膿瘍の炎症が刺激伝導系に及ぶと,ブロック(完全房室ブロックや左脚ブロック)が生じることがある.これらの炎症の波及は,遷延する炎症反応など治療抵抗性経過として現れる. 2.4 治療 2.4.1 外科的治療適応と時期 適切な抗菌薬投与にもかかわらず制御できない持続性感染で,IE以外の原因が除外される場合は,外科的治療の適応である.弁輪周囲膿瘍を形成した場合は,感染の制御が困難であるだけでなく,組織が脆弱となり瘻孔や人工弁の離開,房室ブロックなどが生じることにより致死的になる可能性が高いため,緊急手術の適応である.弁輪周囲膿瘍に対する手術は弁置換だけなく弁基部置換やホモグラフトを使用する可能性があり,また,AMFCまで感染が及んだ場合にCommando手術(大動脈基部置換術+僧帽弁置換術)が必要となる可能性がある.手術手技が複雑になるため,早期に手術した場合でも独立した予後不良因子であ 表14 持続性感染の原因菌 • 黄色ブドウ球菌• 真菌• 多剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌,バンコマイシン耐性腸球菌など) • 非HACEKグラム陰性菌