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と同時に,新たに心雑音が生じた場合には心不全増悪の原因となる弁逆流や心筋穿孔の徴候であることが多いため,日々の聴診は欠かさないようにする175).ただし,急性大動脈弁逆流の場合は逆流時間が短く雑音を聴取しにくいことがあるため注意を要する.また,房室ブロック発症により心不全増悪をきたすこともあるため心電図モニターも必要であり,血行動態が不安定な場合は定期的に胸部単純写真でうっ血の有無を確認することも重要である.一般的な心不全重症度のマーカーとして知られるBNP/NT-proBNPは,IE症例における心不全評価においても有用である187).一方,BNP/NT-proBNPは年齢や性別,腎機能などの影響も受けるため188, 189),BNP/NT-proBNP単独で心不全の診断を行うことは避け,他の指標と併せるか経時的な変化を評価するために用いたほうがよい.

心エコー図検査による血行動態評価は心不全評価の根幹である.さらに,IE症例の場合は疣腫を検出するための弁・弁周囲の評価がIE診断のみならず心不全の原因評価にもつながるため,心エコー図検査は欠かせない診断ツールである.心不全やその重症度を診断するためにはTTEを使用するが,人工弁や弁輪石灰化などのアーチファクトのためにTTEでは十分に評価ができないことがあるため,適宜経食道心エコー図検査(TEE)の施行を考慮する必要がある82, 190).弁破壊の程度や穿孔,腱索断裂の有無は,術式にも影響するため,術前にTTEのみならずTEEも駆使してくまなく精査する必要がある.急性経過で血行動態が破綻しうっ血性心不全をきたす場合は,挿管管理下で手術直前にしかTEEを施行できないこともあるため,TTEでも疣腫を認める弁周囲の合併症に関してもできるかぎり評価する.心不全を評価するに際し,IEによる弁膜症は急性発症であることが多く,特に急性大動脈弁逆流症では一見弁膜症の重症度が低くみえても重度の心不全を発症することがあるため注意を要する177).また,ブドウ球菌によるIEでは急速に弁破壊が進行することで経時的に血行動態が悪化しうるため,TTEに関しては単回評価のみならず経時的かつ頻回に評価することで,急速な血行動態悪化を早期に診断し迅速に対応する必要がある.

1.3 治療方針

IEにうっ血性心不全を合併した症例では周術期の合併症リスクが高いため,内科・外科医だけでなく,感染症や画像診断の専門医も含めたIEチームカンファレンスによって外科的治療の適応を検討することが望ましい.ただし, IEチームカンファレンスによる決定を重視するあまり,緊急手術の適応がある症例に対する手術決定・施行が遅れるようなことがあってはならない.

うっ血性心不全や心原性ショック(NYHA分類III ~IV度の重症心不全)を発症したIE症例では,自己弁か人工弁かにかかわらず緊急外科手術の適応を検討する必要がある.うっ血性心不全を合併したIE症例の予後は,院内・1年予後ともに悪く,内科的治療の継続のみでは死亡率が高いため,緊急または準緊急外科的治療の適応となる10, 186, 191, 192).IE症例における心不全は弁破壊が主な原因であることから内科的治療に抵抗性であることが多く,手術の遅れが予後不良の原因となるため,いたずらに内科的治療に時間を費やすべきではない.IEの活動性にかかわらず,緊急または準緊急外科的治療を施行したほうがよい.活動性IE症例に手術を施行した場合でも,IEの再発率は10%未満とするものが多く193-195),内科的治療のみでは死亡リスクが高いことを考えると,手術を施行する利点は十分にあると考えられる.

一方,NYHA分類II度の軽度な心不全でも,高度な弁逆流を合併する,TTEにより血行動態の悪化が示唆される(心内圧上昇傾向),または疣腫による塞栓リスクが高い症例では,準緊急での手術を考慮する196).血行動態の悪化や大きな疣腫の合併を認めない症例では,TTEを用いた慎重なフォローアップが望まれ,緊急・準緊急での手術を施行する必要はない(外科的治療の時期に関しては,第5章2を参照).

2 治療抵抗性感染症・弁輪周囲膿瘍

2.1 治療抵抗性の定義,判断基準

治療抵抗性感染症とは,抗菌薬による治療にもかかわらず,敗血症性ショックや持続性感染となる状態である.敗血症性ショックとは,適切な輸液負荷にもかかわらず,平均血圧65 mmHgを維持するのに昇圧薬が必要かつ血中乳酸値2 mmol/L以上を呈する状態と定義される197).致死性の高いIEの合併症であり,発症頻度は5~10%である198, 199).敗血症性ショックの危険因子には,ブドウ球菌およびグラム陰性菌による感染,持続性菌血症,院内感染,急性腎不全,糖尿病,塞栓症,大きな疣腫(15 mm以上)などがある199, 200).IEにおける敗血症性ショックは院内死亡率が60~70%と高いが,外科的治療で死亡率を下げることができる可能性があり,早期の外科的治療が検討される199, 200).早期の外科的治療は一般に緊急手術(抗菌薬投与