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p.31 抽出テキスト

成する割合が高く183),それに続く弁周囲逆流の増悪が主な心不全発症の原因となる.一方,稀ではあるが,疣腫により人工弁がstuckし急性心不全を発症する場合や184),弁輪周囲膿瘍が進行し人工弁が外れ急性心原性ショックを呈する場合も報告があり185),IE症例では心不全を発症しうる病態を常に念頭に置いて診療にあたる必要がある.

1.2 診断

IE症例におけるうっ血性心不全の診断は通常の心不全診療に準じて行われ,自覚症状や身体所見(心雑音,頸静脈拍動,下腿浮腫など)に加えて,胸部単純写真によるうっ血の確認,血液検査でのBNP/NT-proBNPの上昇,動脈血ガス分析による低酸素血症の証明,心エコー図検査による体液量増加や心内圧上昇,心拍出量低下などの血行動態破綻の証明により診断される.また,IE症例では適切な抗菌薬・心不全治療薬を継続し,たとえ良好な経過をたどっていても,自己弁の弁穿孔や人工弁破壊により急性に心不全を発症することがあるため,IEの治療中は常に心不全発症・増悪の可能性を念頭に置いて診療にあたる必要がある.

自覚症状に関しては,IE症例ではNYHA分類IIIまたはIV度の重症心不全を合併する割合が高く,これらの重症心不全合併症例は予後不良とされている186).急性に弁破壊・弁逆流が進行することが主な原因と考えられ,自覚症状の変化にも注意を払う必要がある.自覚症状が悪化する

正しく診断し,適切な治療方針を選択することが重要である.

1.1 原因と病態

IEに合併して新たに発症する心不全は,大動脈弁または僧帽弁の弁破壊による弁逆流によって引き起こされ,急性~亜急性に発症する場合が多い.比較的急性の経過で弁破壊が発症するため,大動脈弁逆流または僧帽弁逆流による容量負荷に対して左室・左房の代償メカニズムが不十分となり,うっ血性心不全が進行する177).弁破壊以外の心不全発症の原因としては,疣腫による感染巣が中隔・刺激伝導系に波及することによる房室ブロック178),弁輪周囲膿瘍からの心筋瘻孔179),冠動脈塞栓症や冠動脈への炎症波及などによる急性冠症候群180)などが考えられる.

自己弁IEで弁逆流・心不全を発症する症例は,感染の波及による弁破壊・穿孔や腱索断裂が主な原因となる.急性の経過で弁膜症が進行し,急激に血行動態が悪化し心原性ショックをきたすことがあるため,IE症例の血行動態管理には十分に注意を払う必要がある177).また,大動脈弁IEにより発症した大動脈弁逆流ジェットが僧帽弁にあたることで僧帽弁に続発性IEが生じ,同部位に形成された弁瘤が穿孔して急性僧帽弁逆流を合併し血行動態がさらに破綻する場合もあるため,弁破壊・逆流の同時多発発症も念頭に置く必要がある181, 182).

人工弁IEでは,自己弁IEと比較して弁輪周囲膿瘍を形

表13 IE における30 日以内または1 年死亡の予測因子

30 日以内死亡の予測因子1 年死亡の予測因子オッズ比P 値ハザード比P 値

うっ血性心不全2.37(1.73–3.24) <0.001 1.69(1.39–2.05) <0.001早期手術0.37(0.26–0.53) <0.001 0.46(0.37–0.57) <0.001制御不能な感染2.67(1.96–3.64) <0.001 2.26(1.87–2.73) <0.001黄色ブドウ球菌性IE 1.48(1.05–2.09) 0.026 1.40(1.14-1.73) 0.001脳血管疾患合併2.00(1.24–3.23) 0.005 1.38(1.02–1.88) 0.037疣腫>10 mm 2.00(1.46–2.73) <0.001 1.32(1.09–1.60) 0.005 Charlson index(per unit) 1.13(1.06–1.19) <0.001 1.12(1.08–1.15) <0.001重症弁逆流/新たな人工弁離開1.46(1.04–2.05) 0.028 1.30(1.06–1.60) 0.012弁周囲合併症1.24(0.81–1.89) 0.316 1.30(1.01-1.66) 0.040人工弁IE 1.41(1.01–1.97) 0.046 1.10(0.90–1.35) 0.346 IE:感染性心内膜炎(Bohbot Y, et al. 2022 173)を改変) Bohbot Y, et al. Eur J Heart Fail. 2022;24(7):1253-1265. doi: 10.1002/ejhf.2525. Reproduced by permission of Oxford University Press on behalf of the European Society of Cardiology. Translated and reproduced by permission of Oxford University Press on behalf of the European Society of Cardiology. OUP and the European Society of Cardiology are not responsible or in any way liable for the accuracy of the translation. The Licensee is solely responsible for the translation in this publication/reprint.