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p.30 抽出テキスト

となる例が多いため162),早期に感染症医にコンサルトする必要がある.入院中のリスクが高くなる患者背景の1つに入院時併存疾患があり,これはチャールソン併存疾患指数163)で評価することができる.チャールソン併存疾患指数163)は,既往ではなく入院時の併存疾患で一般的な短期予後を予測するためのものであり,高いほど短期予後が不良となる.表12にチャールソン併存疾患指数163)の概略を示す.たとえば,コントロール不良の糖尿病やAIDSなどの免疫抑制状態があり,これらの因子は感染のコントロールを難しくする一因である.また,腎障害や肝障害を有する例では,抗菌薬の選択に制限が生じる.さらに,抗菌薬

治療開始後48~72時間経過しても血液培養陽性が続く場合は,早期に手術を行ったほうが予後がよいとされている164).手術を必要とする例,特に感染のコントロールが難しい例や心不全合併例では,手術の可否は重要な予後規定因子であり155, 165-168),その手術適応評価には周術期リスク評価が不可欠である.緊急あるいは準緊急手術が必要な例において,高齢者,術前腎不全,人工弁感染,弁輪周囲膿瘍,敗血性ショック,感染持続例,複数弁の感染例は予後不良因子である169-171).

第3章 合併症の診断・評価

1 心不全

一般的に心不全の定義はさまざまであり,NYHA分類や心不全入院の有無で評価されることが多いが,IEでは「うっ血性心不全」の有無が予後に及ぼす影響という観点から評価されており,欧州のガイドラインでも手術適応を判断する際の心不全は「うっ血性心不全」を指す11).

IEの合併症の中でもうっ血性心不全の合併率は高い.左心系自己弁IEにおけるうっ血性心不全の合併率は40%

前後であり,最近20年間のデータの推移をみても大きく変化していない16, 172, 173).日本人も含めアジア人が15%近く登録された欧州のIEに関する大規模前向き研究(EURO- ENDO registry)の結果からも,うっ血性心不全の合併は, >10 mmの疣腫・中枢神経合併症・手術未施行とならんでIEの院内死亡の主要な原因であり,これらの因子はStaphylococcus aureusによるIEよりも1年死亡に対するハザード比が高かった(表13)

10, 173).さらに,IEに合併し

たうっ血性心不全は,6ヵ月~1年後の最も重要な予後規定因子でもあり173-176),うっ血を伴う重症心不全の発症を

表12 チャールソン併存疾患指数

各1点心筋梗塞,うっ血性心不全,末梢血管疾患,脳血管障害(ほぼ後遺症のない),認知症,慢性肺疾患,膠原病,消化性潰瘍,軽度肝疾患(軽度の肝硬変,慢性肝炎),糖尿病(3大合併症を有さないもの)各2点片麻痺(対麻痺含む),中等度-高度腎機能障害(血清クレアチニン≧3 mg/dL,透析中,腎移植後,尿毒症),糖尿病(3大合併症のいずれかを合併,DKAや糖尿病昏睡で入院歴),固形がん,白血病,リンパ腫各3点中等度-高度肝機能障害(門脈圧亢進を伴う肝硬変)各6点転移性固形がん,AIDS DKA:糖尿病性ケトアシドーシス,AIDS:Acquired immunodeficiency syndrome低い:0点,中等度:1~2点,高い:3~4点,とても高い:≧5点(Charlson ME, et al. 1987 163)を改変) Adapted from J Chronic Dis., 40(5), Charlson ME, Pompei P, Ales KL, et al., A new method of classifying prognostic comorbidity in longitudinal studies: development and validation., 373-383, Copyright (1987) Published by Elsevier Inc., with permission from Elsevier. https://www.sciencedirect.com/ journal/journal-of-chronic-diseases