p.23 抽出テキスト
血液培養は,好気用と嫌気用の2本を1セットとし,少なくとも3セット提出する. 血液培養を採取する際の穿刺部位としては上肢の静脈(一般的には正中静脈)を選択する.採取不能時は大腿静脈を選択することもあるが,上肢の静脈と比較して,採取時の汚染が生じやすい60).動脈と静脈で菌の検出率に差はないため動脈から採取してもかまわない61)が,手技上の安全面や簡便性を考慮し,一般的には静脈採血が行われる.また,採取部位は複数箇所とするが62),1ヵ所のみの静脈穿刺でも,菌の検出率については劣らないという報告がある63, 64).一方,1ヵ所のみの穿刺の場合,Staphylococcus epidermidisやCorynebacterium属菌など皮膚の常在菌が検出された際に,汚染菌かどうかの鑑別が難しいため,可能であれば複数箇所から穿刺をすべきである.また,血管内カテーテルを介して採取した検体は,直接穿刺と比較して汚染するリスクが高い65)ため,可能なかぎりカテーテル採血は避けるべきである.もしカテーテル採血を行うのであれば,採血ポートを慎重に消毒し,複数ルーメンのカテーテルであれば,すべてのルーメンから培養用の血液を採取するとよい66). 血液培養採取のタイミングについては,発熱・悪寒戦慄時でなくても採取してよい.これは,IEが持続的な菌血症を呈するという特徴を有しているためである.各セットの採取インターバルについては一定の見解はない.しかし,敗血症や急性心不全を呈する場合には,血液培養採取のために抗菌薬投与を遅らせるべきではなく,速やかに3セット(最低2セット)の血液培養を採取し抗菌薬を開始すべきである.すでに何らかの抗菌薬が投与されていた場合,経過が亜急性で,敗血症や急性心不全を呈していない場合は,抗菌薬をいったん休薬し血液培養を採取することもあるが,推奨される休薬の期間は定まっていない67). 培養期間に関して,国内のほとんどの施設では,全自動血液培養装置を採用しており,原因微生物がHACEKグループや真菌であっても7日間の培養期間で十分に検出できる.したがって,培養期間は7日間を目安にし,長期培養は基本的には不要である(Appendix 2.診断:微生物学的検査を参照) 67, 68).IEに比較的特徴的とされる菌種が,すべての血液培養セットで陽性になるとは限らないので, 1セットのみ陽性の場合は慎重な判断を要する.たとえば血液培養陽性時に汚染菌である確率は,Staphylococcus aureusであれば1%,腸球菌では10%,VGSでは50%程度とされる(表9) 69).一方,臨床的にIEを疑う患者では1セットのみの陽性でも診断的価値は高く70),IEに特徴的な菌種であれば,安易に汚染菌とみなさず,臨床的判断に基づいてさらに血液培養を追加することが望ましい. 4.2 その他の検査法:抗体検査,PCR他 (Appendix参照) Bartonella属菌やCoxiella burnetiiなど,通常の培養法では検出困難な微生物が原因菌の場合,血液培養が陰性となりうる71, 72).国内でも少数だが,Bartonella属菌73, 74)やCoxiella burnetiiによるIE症例の報告がある75).また,抗菌薬投与の影響で血液培養が陰性となり,治療方針決定が困難な場合もある.これらの菌によるIE診断には抗体検査や,手術等で得られた組織検体を用いたPCR・塩基配列解析76, 77),さらに次世代シーケンスによる網羅的な病原体解析が有用である.また,メタゲノム次世代シーケンス(mNGS)の有用性も報告されている78, 79).これらの分子生物学的検査を,微生物学的証拠として診断基準の1つに採用しているガイドラインもある17).しかしながら,これらは保険適用外であり,現時点では一般の検査室での実施体制も整備されておらず,専門機関への依頼が必要となる場合が多い. また,Candida属真菌やAspergillus属真菌による真菌性IEは血液培養の陽性率が低く,Aspergillus属真菌では10%未満である.診断補助として,血中β-D-グルカンやアスペルギルス抗原が測定されるが,感度・特異度は十分ではない80)ので,感染症専門医と連携し総合的に判断する. 表9血液培養分離菌と汚染率 微生物汚染率(%) Cutibacterium spp. (旧 Propionibacterium spp.) 94 Corynebacterium spp. 88 Coagulase-negative staphylococci 82 Viridans group streptococci 55 Enterococcus spp. 11 Pseudomonas aeruginosa 4 Escherichia coli 1 Klebsiella pneumoniae 1 Staphylococcus aureus 1 Streptococcus pneumoniae 0 β-hemolytic streptococci 0 Serratia marcescens 0 Candida spp. 0 (Pien BC, et al. 2010 69)より作表)