p.22 抽出テキスト
3 血液検査 血液培養検査を除いて,血液検査でのIE特異的な指標は存在しない.よくみられるものとして,貧血,白血球増加/白血球減少,C反応性蛋白(CRP)やプロカルシトニンの上昇,赤血球沈降速度の亢進,末梢循環不全や臓器障害を示唆するマーカーの異常(乳酸,血清クレアチニン,ビリルビン,心筋トロポニン,脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),NT-proBNPの上昇,血小板減少)があるが, IEの直接的な診断にはつながらない11).IE診断のための特異的なバイオマーカーは確立されていないが,IE治療開始後のCRPの持続的な高値は感染による合併症や死亡リスクの上昇と関連があるとの報告があり,リスクや病勢評価のための1つの指標となる49). IEはマラリアや梅毒と同様に血管内に持続的な抗原刺激が起きている状態であり,結果的にさまざまな免疫反応 が生じうる38, 46).リウマチ因子(RF)はIE患者の5~36%で陽性となり10, 35, 50),Duke診断基準の小項目にも含まれている.RF陽性のIE患者では抗菌薬治療後にRFの陰性化あるいは値の低下がみられることがあり51),診断のみならず,治療の効果判定に有用である.また,糸球体腎炎を合併したIE患者のうち,56%で低補体血症がみられた報告があり,診断の補助となる52).クリオグロブリンや抗好中球細胞質抗体(ANCA),梅毒の血清反応が陽性となることがあるが46, 52-55),必須の検査ではなく,あくまでも診断の補助として用いる. 尿検査はIE診断の一助となる.IE患者では血尿(26%),蛋白尿(50~65%),顕微鏡的血尿(30~60%),赤血球円柱(12%)がみられる35, 46).IEに合併した糸球体腎炎の評価のため尿検査を推奨する. 単一の検査のみで診断・治療効果の評価は困難であるが,臨床症状や複数の検査データをもとに,ハイリスク患者の特定や治療効果の判定を行うことが望ましい. 4 微生物学的検査 IEの診断において,微生物学的検査はきわめて重要である.なかでも血液培養は,原因微生物の同定および薬剤感受性試験を施行するためには必須の検査であり,診断の主要項目である.一方,培養が困難な微生物(例: Bartonella属菌,Coxiella burnetii,真菌など)が原因であったり,抗菌薬を既に使用した後で(休薬中であっても)培養が陰性になっている場合には,抗体検査や手術時に採取した感染した弁組織等に対するPCRなどの分子生物学的手法が有用である. 4.1 血液培養 IEの診断過程において,血液培養で微生物が検出された場合は,菌種の同定と治療に必要な抗菌薬の感受性結果について情報提供されるため,より適切な抗菌薬選択につながる(血液培養における菌の分離,同定についてはAppendix参照). IEの血液培養陽性率は高く,適切に3セット以上採取した場合には96~98%になる56).しかし,培養採取以前に抗菌薬投与が行われていた場合,特に緑色レンサ球菌(VGS)など菌種によっては血液培養の陽性率が低下する57-59). 図4 IE の身体所見(爪の線状出血斑) 図5 IE の身体所見(足趾のJaneway 病変)