p.120 抽出テキスト
2.1 血液培養検査 2.1.1 血液培養からの菌の分離 a. 培養陽性の報告 血液培養ボトルは,培地成分を利用してCO2産生やpHの変化をもたらし,その変化量をボトルの底にあるセンサーで感知することで微生物の増殖として感知(陽性と判定)する原理である.一般細菌の多くは48時間以内に陽性となり,5~7日で培養を終了することが多いが,真菌の場合,酵母様真菌では48時間以上,Cryptococcus属真菌は10~14日,Aspergillus属真菌では14日以上かかる. 一方,Bartonella属菌,Legionella菌属やMycoplasma属菌では,血液培養機器が感知せず陽性にならないことがある.このことは培養陰性IEの診断には重要であり,培養方法を検討するために目的菌を検査室に伝えることが重要である. また,Mycobacterium菌属には抗酸菌専用ボトルがあり,検査室から別途取り寄せて培養を行う. b. グラム染色による菌種推定 血液培養が陽性になった場合,微生物の確認をするためボトル内容物をグラム染色するが,微生物の形態的特徴から菌種が推定できることがあり,情報として収集する.たとえばグラム陽性球菌であった場合,cluster形成があればStaphylococcus属菌,chain形成があればStreptococcus属菌またはEnterococcus属菌の可能性が高く,抗菌薬選択の検討に重要である. 2.2 原因微生物の同定 2.2.1 従来法 微生物が代謝に利用する糖やアミノ酸の性状を確認する方法で,検査には1~数日間かかる. 2.2.2 Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-flight Mass Spectrometer(MALDI- TOF MS)による微生物の同定検査MALDI-TOF MSは質量分析を原理とした同定検査である.同定時間が数分で終了するため,従来法に比べて大幅に時間短縮された.また,同定できる微生物の種類が大幅に増えたことで,より詳細な分析が可能になった.しかし,機器が高額であることから一部の医療機関でしか導入されていない.さらに,検査結果は菌種同定に限られており,感受性検査の結果は判明しない. 2.3 血液培養陰性となる稀なIEの原因微生 物:抗体検査(Appendix表3) 2.3.1 コクシエラ(Coxiella)症(Q熱) Coxiella burnetiiによる感染症で,病院検査室では培養ができないため,診断には抗体検査か遺伝子検査を行う. 抗体検査の判断基準は急性と慢性で異なり,急性ではII相(野生株の培養株)の陽性,慢性ではI相(野生株)およびII相の陽性(特にI相の高値)である. 治療は,急性Q熱ではテトラサイクリン系薬の10日間投与で慢性Q熱への移行がなければ,予後は良好である.慢性Q熱は標準的な治療終了時期の設定はなく,たとえば抗体価が200倍以下になるまで治療を継続したり,経過が悪い場合は手術も検討する838). 2.3.2 バルトネラ(Bartonella 症)症(猫ひっかき病) Bartonella属菌は,B. hensellaeとB. quintanaの2菌種が重要である.培養検査による検出は可能であるが,検査が難しいことから,遺伝子検査や抗体検査が診断検査の主流である.抗体検査は間接蛍光抗体法でIgM抗体陽性,またはIgG抗体は単一血清で256倍以上,またはペア血清でIgG抗体の4倍以上上昇,いずれかの場合で診断ができる. 治療は,抗菌薬未投与で治癒することもあるが,IE時は治療が必要であり,アジスロマイシンやリファンピシン,テトラサイクリン,シプロフロキサシンを投与する. 2.3.3 ブルセラ(Brucella)症 B. melitensis,B. suis,B. abortus,B. canisなどがあるが,IEではB. melitensisが最も重症になる.診断検査には抗体検査と遺伝子検査があり,地方衛生研究所や国立感染症研究所に相談しながら行う.急性と慢性があり,急性では発熱,悪寒,リンパ節腫脹,肝脾腫などの症状があり, IEは死亡原因の大半を占める.主な感染経路は,乳製品や肉の摂取であるが,B. canisはイヌから感染することがある. 培養でも分離できるが,検査室内感染を起こすことがあり,取り扱いは慎重に行う.B. abortusとB. canisは検査法が異なるため判定基準も異なる.抗原がB. abortusの場合は40倍以上,B. canisの場合は160倍以上で陽性と判定する.また,Francisella tularensis(野兎病菌)やYersinia enterocolitica(エルシニア菌)との交差反応もあり,結果