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p.108 抽出テキスト

第10章 市民・患者への情報提供

感染性心内膜炎とはどんな病気ですか?どんな人が罹患しやすいですか?どんな場合に起こりますか?

心臓弁膜症や先天性心疾患の患者さんでは,心臓内の異常血流により心臓の内側を覆う膜(心内膜)に傷ができることがあります.血液中に細菌が入り込むようなことが起こると,傷ついた心内膜に細菌が付着してしまい,付着した細菌は増殖し,そこに感染巣が形成されます.この感染症を感染性心内膜炎と呼びます.

この病気は,弁膜症や先天性心疾患やその手術後の患者さん,心臓ペースメーカなどの異物が体内に留置されている患者さんが,血液中に細菌が入り込むような状況になると起こりやすいです.血液中に細菌が入り込む原因としては,抜歯など歯科治療や,扁桃腺,胆道や腸の手術,気管支鏡検査・生検,下部消化管内視鏡検査・生検,泌尿器科や婦人科領域での処置などがあります.

感染性心内膜炎になると,どんな症状が出ますか?

主な症状は発熱です。その他,全身倦怠感や悪寒,関節痛,筋肉痛など,この病気に特異的ではない,通常の感染症でよくみられる症状が多いです.原因がはっきりわからない発熱が数日以上持続するときには,たとえ微熱程度でも,一度病院で熱の原因がなにか調べてもらうことをお勧めします.

病状が進行すると,感染によって弁が破壊されたり,付着した細菌の塊で血流が妨げられることで心不全を起こすことがあります.心不全を起こすと,息切れや動悸,喘息のような症状が起こったり,咳が止まらなくなったりします.また,弁などの心内膜に付着する増殖した細菌の塊は,心臓内で揺れ動きます.この一部が剥がれて血流に乗って,脳やその他の臓器の血管で詰まり,脳梗塞やその他多彩な症状を引き起こします.

予防する方法はありますか? どんなことに気をつければいいですか?

感染性心内膜炎は一度起こってしまうと,心不全や,その他脳梗塞などの全身の症状を引き起こしうる重大な病気です.そのため,まずは感染性心内膜炎にならないように予防することが重要です.感染性心内膜炎は,血液中に細菌が入り込むことが契機となって発症します。弁膜症や先天性心疾患,ペースメーカなどの人工物が体内に留置されている,など,感染性心内膜炎に罹患しやすい方は,血液中に細菌が入り込む原因となりうる手術や処置の際に,予防的に抗菌薬を内服することをお勧めします.その処置の代表が,抜歯などの歯科治療です.歯科を受診する際や手術や外科的処置を受ける際には,心臓病を持っていることを主治医に伝え,術前や処置前に抗菌薬を処方してもらいましょう.また,ふだんから正しい歯磨きで口腔内を清潔に保つことも重要です.さらに,歯周病がある患者さんは定期的に歯科で悪化しないよう診察を受けてください.

感染性心内膜炎になったら,どんな治療が行われますか?

感染性心内膜炎と診断されれば,特定された細菌に有効な抗菌薬を長期間投与(通常1~2ヵ月)します.通常は点滴の抗菌薬を用いますので,入院での治療が必要です.治療の開始が遅れて,細菌による弁の破壊が強い場合など,緊急心臓手術が必要になることもしばしばあります.そのため,早期に診断し,早期に治療することが,その後の経過においてとても重要です.

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