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p.98 抽出テキスト

6 門脈圧亢進症に伴うPoPH

(推奨表27)

6.1 疫学,成因

6.1.1 疫学

わが国のPH患者レジストリ(JAPHR)のデータでは, PoPHはPAH登録患者の7.0%であり,4番目に多いサブグループである669).一方,門脈圧亢進症の患者におけるPAHの有病率は2~6%と報告されている809-811).門脈圧亢進症の原因は多くが肝硬変によるものであるが,非肝硬変性としては少数だが門脈血栓症によるもの,バッド・キアリ症候群,先天性の門脈形成不全などが認められる812).わが国の報告によると,背景の肝疾患としては欧米と同様に自己免疫性肝炎,原発性胆汁性胆管炎がもっとも多く,次いでアルコール性肝炎であった813).また,PoPHは肝予備能の程度に関係なく発症する疾患であることを認識しておく必要がある814). 6.1.2 成因

PoPHの成因の1つとして,肝硬変を背景とした門脈大循環シャントの存在や全身血管の拡張により高心拍出状態になるため,最初はPVRが正常である.その後,肺血管のずり応力が増加して,肺動脈内膜肥厚や肺動脈のリモデリングが生じ,肺動脈の閉塞・狭窄を経てPVRが増加する.また,門脈大循環シャントの存在や肝代謝の低下により,腸管循環のセロトニンなどの代謝産物が肺循環に流入することから,肺血管が収縮して肺高血圧が生じる815).しかし,明らかな門脈大循環シャントを認めない症例も存在することから,他のさまざまな成因も考えられている.遺伝的背景として,エストロゲン受容体1,Ca結合蛋白A4,アロマターゼ,PDE5,アンジオポエチン1などの一塩基多型が報告されている816).

6.2 診断

6.2.1 PoPHのスクリーニング

息切れやBNP上昇などPHが疑われる患者に対し,心エコー図検査でスクリーニングを行う.心エコー図所見以外には病歴聴取,心電図,胸部X線,肺拡散能を含む呼吸機能検査,血液ガス分析,高分解能CT,および肺換気血流シンチグラムの各種検査を行うことにより,第2群,第3群,第4群,第5群のPHを除外する.確定診断はRHC検査によって行う.

6.2.2 門脈圧亢進症の診断

門脈圧の直接的な測定は侵襲を伴うため,近年では間接測定法である肝静脈圧格差(HVPG)で代用することが多い817).閉塞肝静脈圧(WHVP)と自由肝静脈圧(FHVP)の差がHVPGである.HVPGの正常値は1~5 mmHgで, 5 mmHg <HVPG <10 mmHg はmild portal hypertension,HVPG≧10 mmHgはclinically significant portal hypertensionと定義される817).

非侵襲的な代替マーカーとして,血小板,総胆汁酸, M2BPGi,オートタキシンなどの肝線維化マーカーがHVPGと相関するという報告818)や,腹部超音波検査,造影CTで脾腎シャントなどの側副血行路の評価,内視鏡検査による食道胃静脈瘤などの検索,また超音波エラストグラフィやMRエラストグラフィで得られる肝硬度や脾硬度もHVPGとの相関が報告されている818).欧米ではフィブロスキャンによる肝硬度15 kPa未満かつ血小板15万/μL超では門脈圧亢進症の可能性は除外されるとしている817).

推奨表27 門脈圧亢進症に伴うPoPH の治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

肝疾患や門脈圧亢進症の患者に息切れやBNP 上昇などのPH を疑う症状を認めた場合や,肝移植前のスクリーニングとして,心エコー図検査を行う. I C PoPH 患者はPH と肝疾患の両方の疾患管理が可能な専門施設へ紹介する. I C PoPH 患者は肺血管拡張薬の単剤療法から開始し,背景の肝疾患や肝移植の適応を考慮しながら,必要に応じて2 剤目の追加を考慮する. IIa C PoPH 患者における肝移植の適応は, PAH 治療によりPVR が正常,または正常に近い状態に改善を認めた場合において,個別に検討することを考慮する. IIa C PAP が高くても,高心拍出,PVR 正常などPH の基準を満たさない門脈圧亢進患者に対しては,PAH 治療薬を投与すべきではない. III Harm C PoPH 患者においては他のPAH の治療アルゴリズムとは異なり,初期多剤併用療法の有用性のエビデンスは乏しく,行うべきではない. III Harm C