p.88 抽出テキスト
チ内科専門医へのコンサルテーションが不可欠である. SScでは罹病期間の長い限局皮膚硬化型SScにPAHがみられることが多く,SSc-PAH例では自己抗体として抗セントロメア抗体陽性例が50%以上を占める605, 737-739).その他の危険因子として,抗U1RNP抗体740, 741),手指や口唇に好発する毛細血管拡張742, 743)がある. SSc患者では,自覚症状の有無にかかわらず毎年の定期的なスクリーニングを実施し,PAHの早期発見に努める.実際に,SSc患者で積極的なスクリーニングを行うことで,とりわけ2回目以降のスクリーニングで診断された例において,PAHの診断時にWHO機能分類I/II度の軽症例の割合が増え,生命予後も改善したことが示されている734, 744).実際のスクリーニングの方法については,経胸壁心エコー図検査(TTE)単独よりも呼吸機能検査や血中BNP/NTproBNP値など複数のモダリティを組み合わせることでその精度が向上,つまり,不必要なRHC検査を回避し,かつmPAP 21~24 mmHgの早期のPAHを検出できることが示されている739, 745, 746). DETECTは無症候性PAHの特定を目的とした,罹病期間>3年,FVC≧40%,%DLCO<60%のSSc患者を対象としたアルゴリズムであり(図16) 739),TTEのみによるスクリーニングにくらべて感度が高く,見逃しが少ないことが示されている739).その他,RHC検査の適応を判断する補助として,運動負荷心エコー図検査,CPET,心臓MRIの有用性が報告されている747-751).ただし,これらスクリーニング法に関する現状のエビデンスはmPAP≧25 mmHgの症例を検出する目的で実施されたことを念頭におく必要がある. 2.3 治療 SSc-PAHの治療はI/HPAHの治療指針に準じる.non- SSc CTD-PAHに考慮される免疫抑制療法は,SSc-PAHに対しては有効性が乏しく,推奨されない752).LHD,ILDを合併する例では,心肺疾患合併のPAH(第6章3. 心肺疾患合併のPAH参照)として,PDE5阻害薬,エンドセリン受容体拮抗薬いずれかの単剤療法で治療を開始することも検討される.また,呼吸機能検査(%DLCO<50%),動脈血ガス分析(低酸素血症),非造影胸部CT(小葉間隔壁肥厚,小葉中心性すりガラス陰影,縦隔リンパ節腫大)により肺静脈/肺毛細血管病変の合併が疑われる例に対する肺血管拡張療法は,臨床症状,ガス交換能をモニタリングしながら慎重に行う. 3 心肺疾患合併のPAH 3.1 背景 近年のPAHレジストリ研究では,IPAHと診断された患者の平均年齢は60歳以上と高齢化していた.また心肺疾患を合併しているため,第2群および第3群のPHとの鑑別が問題視されている662, 669, 753-757). COMPERA registryのIPAH患者841人のクラスター解析では,12.6%が若年で心肺疾患を合併せず,女性優位の典型的なIPAHを有していたが,35.8%が左心系疾患合併型, 51.6%が喫煙に関連した心肺疾患合併型を呈していた754).そのため,併存する肺疾患や左心疾患の影響が軽視できず, 2022年改訂版ESC/ERSガイドラインでは,心肺疾患合併例をpatients with cardiopulmonary comorbiditiesと表記し,典型的PAHに比し併用療法に慎重な方針が推奨されている114).その背景には,併用療法の有用性を示したAMBITION試験で心肺疾患合併例が除外されていたこと697),合併例ではPAH治療薬併用の有用性,安全性が十分証明されていないことがある758-760). 本ガイドラインでも,心肺疾患を合併したPAHでは, PAH薬を単剤から慎重に開始することを推奨する.ただし「心肺疾患」の合併を定義する基準は確立されていないため,次項のような特徴をもとに個々の症例での評価・判断が必要である. 3.2 心肺疾患合併のPAHの特徴 高齢PAH患者に多い1つの表現型が,左心疾患合併のPAHである.とりわけHFpEFの合併が多く,危険因子(高血圧,肥満,糖尿病,冠動脈性心疾患など)を共有する.多くが高齢女性で,30%に心房細動の合併を認める754, 758, 761).また軽度PH患者群(mPAP 21~24 mmHgまたはPVR 2~3 Wood単位)の24.5%に心肺疾患が合併し,その場合は死亡率が上昇することが報告されている762). 肺疾患合併PAHは,肺疾患の程度が比較的軽度で第3群PH(肺疾患合併PH)とは分類されないPAHと捉えられる.肺疾患とPHが合併した場合,肺疾患合併PAHとするか,第3群PHに分類するかの明確な基準はないが, COPDについては%FEV1 が60%未満であれば肺疾患はextensiveであり,第3群PHとする目安が示されてい