p.82 抽出テキスト
6 リスクアセスメント 6.1 WHO PH機能分類 機能分類評価とリスクアセスメントはPAH患者の重症度の評価・治療介入を決定するために重要なものである.従来はニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類をもとにし,1998年の第2回肺高血圧症ワールドシンポジウムの際に設定されたWHOのPH機能分類がその手法として用いられてきたが659),現在では血行動態評価や運動耐容能評価,バイオマーカー,画像検査所見などの複合的なパラメータを用いて評価することが主流となっている.本ガイドラインにおいてもその概念を採用するが,中でもWHO機能分類は診断時およびフォローアップ時の双方においてもっとも強力な予測因子の1つであり,悪化を認めた場合には精査が推奨される(表29) 660). 6.2 リスク層別化指標 診断時におけるリスク層別化は,症状や非侵襲的検査のみで行うことは不十分であり,血行動態評価を含む複数のモダリティを活用して実施するべきである661).リスク層別化指標にはフランスのレジストリを活用したもの662),欧州 の複数国で評価され,2022年改訂版ESC/ERSガイドラインにおいて提案されたもの114),米国のレジストリにおいて評価されたREVEAL Registry Risk Score 2.0 663)などが存在する.いずれの指標もスコアリングにおける重症度と長期予後の関連性を示したものであるが,特に診断時においては低,中,高リスクの3層モデルを採用して評価されることが多い. また第7回肺高血圧症ワールドシンポジウムにおいては,特に高リスク患者の抽出に着目し,治療アルゴリズムを評価することが推奨されている664).ただし,各国において疾患背景や使用可能な薬剤,長期予後のリスクは異なると想定されることから,その国のコホートで検証されたリスクスコアを用いることが重要である665). 欧州のガイドラインにおいて診断時およびフォローアップ時に活用されている指標114)と,わが国で検証を受けたフランスのレジストリスコア666)を基にした,わが国のレジストリを活用し,mPAP 40 mmHgをカットオフ値として追加した指標を,重要なリスク層別化指標として提案する(表30~32).なお,中等度リスクを2 つに分ける4層モデルでの検証も行われているが,わが国の指標において中等度-高と高リスクの長期予後に差はないこと,欧州のガイドラインや第7回肺高血圧症ワールドシンポジウム664)においても両者に治療介入方針に明確な違いがないことから,それらは高リスクと評価して介入と紐づける. 表29 WHO のPH 機能分類 I 度身体活動に制限のないPH患者.普通の身体活動では呼吸困難や疲労,胸痛や前失神など生じない. II 度身体活動に軽度の制限のあるPH患者.安静時には自覚症状がない.普通の身体活動で呼吸困難や疲労,胸痛や前失神などが起こる. III 度身体活動に著しい制限のあるPH患者.安静時は自覚症状がない.普通以下の軽度の身体活動で呼吸困難や疲労,胸痛や前失神などが起こる. IV 度どんな身体活動もすべて苦痛となるPH患者.これらの患者の一部は右心不全の症状を呈している.安静時にも呼吸困難および/または疲労がみられる.どんな身体活動でも自覚症状の増悪がある. (Rich S, et al. 1998 660)より)