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p.80 抽出テキスト

遺伝子バリアントが判明してもPAHとしての治療方針が変わるわけではないが,複数の遺伝子を同時に検索可能になったことは,診断の助けや関連疾患の発見の契機となりうる.

疾患関連遺伝子の影響が考えられるこれらの疾患に罹患している場合,病的バリアントが発症に寄与している可能性を伝えるべきである.また,PAH発症リスクを高める病的バリアントが同定された場合,血縁者が同バリアントを共有していると発症リスクが一般より高いこと,早期診断が可能となることを伝える630, 653).

遺伝子関連は生涯変化しない重要な個人情報である.遺伝学的検査に先立ち,適切な訓練を受けたPH専門医および/または臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施し,特に保有率が高いBMPR2遺伝子病的バリアントに関する浸透率,遺伝的にリスクとなる血縁者,生殖,心理社会的問題に配慮する.疾患関連遺伝子の変異が同定

された患者の無症状の家族に検査を行う場合にも,検査に先立ち,遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを行い,十分な理解を得たうえで実施すべきである653).

家系内の病的バリアントが判明しており,無症状の血縁者が同部位のバリアントをもたない場合,その血縁者の発症リスクは一般集団の場合と同等である.なお遺伝学的検査が実施されない場合でも,早期発見のため家族には初期の徴候や症状を知ってもらうべきである653).

次世代シーケンサーの発達に伴い新たな疾患関連遺伝子が次々と発見されており,国際的には12遺伝子(BMPR2, ACVRL1,ATP13A3,CAV1,EIF2AK4,ENG,GDF2, KCNK3,KDR,SMAD9,SOX17,TBX4)がエビデンスの高い疾患関連遺伝子であると考えられている656).現在

図14 PH の診断アルゴリズムPH疑いまたは原因不明の労作時呼吸困難症例

疑われる原因

PH以外の原因特定

診断に応じた治療・管理追加検査による精査

低度はい

いいえPHの可能性

中等度/高度

PAHまたはCTEPHのリスク症例

プライマリケア医・病歴,家族歴・身体所見・胸部X線・心電図・BNP/NT-proBNP・酸素飽和度・急速進行性の症状・WHOのPH機能分類 IIIまたはIV・右心不全・失神・不整脈への不耐性・不安定な循環動態

(低血圧,頻脈,低心拍出状態)

危険な臨床徴候

危険な臨床徴候もしくはPAH・CTEPHを疑う場合には迅速な紹介

肺の検査心臓の評価・呼吸機能検査(DLcoを含む)・血液ガス・胸部CTおよびCTPA地域の中核病院

専門医への迅速な相互コンサルテーション・心エコー図検査

(図13参照)・CPET

・包括的なPHの精査・必要に応じた侵襲的検査

(図15へ)

PHセンターへの紹介

肺疾患PHもしくは心疾患