p.79 抽出テキスト
4.14.1 プライマリケア医 PH症例は非特異的な症状が主であるため,プライマリケア医の診療を受ける可能性が高い.初期評価では病歴(既往歴を含む),家族歴,身体所見(血圧,心拍数など),胸部X線検査,心電図,BNP/NT-proBNPなどの血液検査,酸素飽和度の測定を行う.いずれかの検査で異常所見を認めた場合,地域中核病院への紹介を検討する. 4.14.2 地域の中核病院 呼吸困難などのPHの症状を呈する場合に,非侵襲的な検査を中心に進める.肺疾患の評価のため,呼吸機能検査,血液ガス分析,必要に応じて胸部CTを検討する.心疾患の評価のため,心エコー図検査と心肺運動負荷試験(CPET)を実施する.特に心エコー図検査は診断アルゴリズムの重要なステップであり,原因に関係なくPHの可能性を評価できる.ほかの心臓疾患の鑑別をするうえでも重要なステップである.この初期評価にもとづいて,PH以外の原因が特定された場合やPHの可能性が低い場合,それに応じた管理,追加検査が必要となる. 4.14.3 PHセンターへの紹介 PHの可能性が中程度/高度の場合,患者をさらに評価する必要がある.鑑別診断を確定し現在の臨床分類に従ってPHのさまざまな原因を識別することを目標に,PHの専 門施設に紹介することを検討する.また,危険な臨床徴候,もしくはPAH/CTEPHを疑う場合には介入が予後と直結するため迅速なPHセンターへの紹介が望ましい.危険な臨床徴候には,急速進行性の症状,WHO機能分類III度もしくはIV度,右心不全,失神,不整脈への不耐性,不安定な循環動態(低血圧,頻脈,低心拍出状態)などがある. 4.14.4 包括的な精密検査 これまでの検査に加え,肺換気血流シンチグラフィを実施する.CTEPHが疑われる症例では,RHC検査時に肺動脈造影を施行することで,特徴的な造影所見が確認できれば確定診断できる.さらに,病変の局在や形態により,外科手術適応などの治療方針を決定する.RHC検査により血行動態を評価し,PHの確定診断を実施する.各群での鑑別診断の詳細については,各論を参照のこと. 5 遺伝学的検査(推奨表22) PAHにおける疾患関連遺伝子に関してはIPAH,遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH),食欲減退薬に伴う薬剤性PAH,PVODにおいて病的バリアントが同定されてきている.代表的な関連遺伝子にはBMPR2やACVRL1などがあり653),肺動脈の細胞増殖調節経路およびそれを修飾する遺伝子が寄与していると考えられる.米国,フランスにおいては孤発性のIPAHにおいてそれぞれ18%,17%に新規に病原性もしくは病原性を疑うバリアントを認め,その多くがBMPR2内に同定された654, 655).BMPR2遺伝子の病的バリアント保持者の年間発症率は2.3%といわれている630). 推奨表21 PH の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル PH 患者には,CTEPH を評価するための肺換気血流または肺血流スキャンを行う. I C CTEPH が疑われる患者の精密検査では, CT 肺血管造影を行う. I CすべてのPAH 患者に対し,関連する疾患を特定するための定期的な生化学検査,血液検査,免疫検査,HIV 検査,甲状腺機能検査を行う. I C門脈圧亢進のスクリーニングには腹部超音波検査を行う. I C PH 患者の初期評価には,DLCO を含めた肺機能検査を行う. I CすべてのPAH 患者に対し,胸部CT を考慮する. IIa C CTEPH 患者の精密検査では,DSA を考慮する. IIa C PAH 患者に対する一般的な鑑別のための開胸または胸腔鏡下での肺生検は推奨されない. III No benefit C推奨表22 PAH の遺伝学的検査に関する推奨と エビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル PAH 患者に対し疾患関連遺伝子の遺伝学的検査を行う場合には,PH 専門医および/ または臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを実施し,特に保有率の高いBMPR2 遺伝子の変異のもつ意味について十分な理解を促す. I A疾患関連遺伝子の病的変異が特定された患者の無症状の家族に遺伝学的検査を行う場合には,かならず検査に先立ち遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医らによる遺伝カウンセリングを実施し,十分な理解を得たうえで実施する. I A