GL検索 v0.1.0
画像は 77 ページを描画したものです
page 77

p.77 抽出テキスト

いと考えられているが622),心内シャント疾患では熱希釈法で測定したCOは正確でないことが指摘されており,フィック法を用いる.

基本的にはCOと肺血流量(Qp)は等しい.しかしシャント疾患ではCOとQpは異なることから,PVRを計算する際にはCOではなくQpを用いることに注意する.

PAWPを含むすべての圧測定は,呼気終了時に息止めなしで行う.呼吸サイクル中に胸腔内圧が大きく変化する患者(COPD,肥満,運動時)の場合,少なくとも3~4呼吸周期をみて平均値をとる.正確なPAWPが得られないと臨床的判断を誤る可能性があるため,正確な圧を得る努力をすべきである.PHにおいて肺動脈の形態の不均一性からバルーンの楔入困難がみられることがあるが,血管の選択やバルーンの調整で工夫を行う.それでも信頼性の高いPAWP曲線が得られない場合,またはPAWP値が妥当ではない場合は,誤分類を避けるため左心カテーテルによる左室拡張末期圧の測定を検討する.カテーテルがPAWPの位置に入っているときに採取した酸素飽和度(>94%)は正確なPAWPの確認となる623).

4.11.2 血管反応性試験(推奨表20)

血管反応性試験は,特発性/遺伝性/薬物・毒物に関連したPAH(I/H/DPAH)の一部に存在する,高用量Ca拮抗

薬に対して著明な血行動態の改善を示す患者を同定するために行われる624, 625).他のPAH例や第2~5群のPHにおける陽性例ではかならずしも良好な長期予後と結び付かず,薬剤に対する反応性の解釈が異なる可能性があり,陽性率も低いため推奨されない626).

薬剤としては一酸化窒素(NO),エポプロステノールが推奨される.NO吸入(10~20 ppm,5分間) 624)またはイロプロスト吸入(5~20μg,15分間) 627, 628)は,血管反応性試験で推奨されている薬剤である.エポプロステノール静注のエビデンスも同様であるが,用量の増加と測定の繰り返しにより検査に時間がかかる624).アデノシン静注は副作用が頻発するため推奨されなくなった629).

血管反応性試験における陽性の定義(Sitbonの基準)は, mPAPが薬剤投与開始前から10 mmHg以上低下して絶対値が40 mmHg以下になり,COが増加もしくは変わらないことである628).陽性率はI/H/DPAH例の10%未満と少ないが,陽性基準を満たした場合にCa拮抗薬による単剤治療で良好な長期予後を見込める可能性があるため,初回RHC検査時に実施すべき検査である.

4.11.3 運動負荷試験

運動負荷試験は,運動中の血行動態を評価し,運動時PHを定義するためのゴールドスタンダードである558).運動負荷を行うおもな目的は,正常な安静時血行動態である患者において,息切れの原因精査,PAHの遺伝的なリスクのある患者,膠原病でPHが疑われる患者,CTEPHの患者において,初期の肺血管障害や左心機能障害を検出することにある568-570, 630, 631).運動負荷RHC検査は安静RHC検査や心肺運動負荷試験と比較しても,合併症のリスクが新たに生じることはないとされる558).

運動負荷は,カテーテル台に設置できる自転車エルゴメータの普及により,通常仰臥位にて行われる.直接フィック法によりCOを算出するには,運動負荷RHC検査に呼気ガス分析を併用することが必要である.ランプ(漸増負荷)またはステップ(階段状に負荷量が増える)プロトコールで行われ,症候限界まで負荷を施行する.各運動レベルで,体血圧,脈拍,肺動脈圧(PAP),PAWP,SaO2,SvO2,RAPなどの指標を測定する.

COは通常フィックの式を用いて算出される557, 632, 633).X軸にCO,Y軸にmPAPをプロットし,その傾き(mPAP/ CO)で運動時PHの評価を行う.mPAP/COの傾きが3 mmHg/L/分を超える場合を運動時PHとする.

運動時のPAWPは呼吸性変動が大きく,正確な測定は困難であることが多いが,運動時PHの誤分類を避けるた

表28 RHC 検査で得られる血行動態の測定値

測定される変数基準値右心房圧,平均値(RAP) 2~6 mmHg肺動脈圧,収縮期(sPAP) 15~30 mmHg肺動脈圧,拡張期(dPAP) 4~12 mmHg肺動脈圧,平均値(mPAP) 8~20 mmHg肺動脈楔入圧,平均値(PAWP) ≦15 mmHg心拍出量(CO) 4~8 L/分混合静脈血酸素飽和度(SvO2) *1 65~80%動脈血酸素飽和度(SaO2) 95~100%

算出されるパラメータ肺血管抵抗(PVR) *2 0.3~2.0 WU肺血管抵抗指数(PVRI) 3~3.5 WU/m2全肺血管抵抗(TPR) *3 <3 WU心係数(CI) 2.5~4.0 L/分/m2一回拍出量(SV) 60~100 mL一回拍出量係数(SVI) 33~47 mL/m2肺動脈コンプライアンス(PAC) *4 >2.3 mL/mmHg *1肺動脈から採取した血液サンプルからのもの.SvO2>75%の場合は,心内シャントを除外するため,段階的な酸素測定が推奨される. *2(mPAP-PAWP)/CO, *3mPAP/CO, *4SV/(sPAP-dPAP)