GL検索 v0.1.0
画像は 75 ページを描画したものです
page 75

p.75 抽出テキスト

心疾患に合併するPHの患者において,心エコー図検査は基礎心疾患の診断にも有用である.CHDのなかでも,特にシャント性心疾患は見逃してはならない.左室不全に伴うPHのなかでもHFpEFを確認するため,左室拡張能(左房サイズ,左室肥大,ドプラ指標による評価)や弁膜症の評価を実施する.心エコー図検査で得られるその他の右室機能指標(ストレイン値を含む)は,PHの予後予測因子として有用である601, 602).重症度評価において補足的な指標となるため,PHの薬物治療実施の過程において,病態のモニタリングに利用できる可能性がある.

心エコー図検査はPHの診断に重要なツールであるが,あくまでスクリーニングや初期診断の一部であり,その他の検査法を組み合わせて使用することが推奨される.それにより,PHの状態と病因をより正確に把握することが可能である.

4.5 呼吸機能検査

PH患者における肺機能検査の有用性は,基礎疾患としての肺疾患を鑑別,除外する点にある.閉塞性換気障害を示すCOPDや拘束性換気障害を示す肺線維症,間質性肺疾患など,第3群の鑑別に必須となる.

特発性/遺伝性PAH(第1群)では,スパイロメトリー検査(%肺活量および1秒率)は通常正常範囲であることが多い.精密肺機能検査機器で実施可能な一酸化炭素肺拡散能(DLCO)検査では,肺胞から肺胞上皮および毛細血管内皮を介して赤血球へガスを運搬する能力を測定することができる.PHをきたす多くの疾患では毛細血管血液量が減少するためDLCO値が低下するが,そのレベルは予後不良とも関連する603).一方,左右シャント疾患では肺血流量の増加を反映して,DLCO値は上昇する.

独立した疾患単位ではなく「症候群」としてとらえるべき気腫合併肺線維症(CPFE)ではPHの合併率が高く,スパイロメトリー検査では多くは正常か軽度低下であるが, DLCOは著明に低下する点に注意が必要である604).強皮症に合併したPHでは,%肺活量(%VC)の低下に比し% DLCOの低下が高度の場合(%VC/%DLCO比≧1.4~2.0), PHの合併が予測される605).

4.6 動脈血ガス分析

動脈血ガス分析は低酸素血症の評価や合併疾患の鑑別に必須の検査である.通常,心肺疾患合併のないPHでは動脈血酸素分圧(PaO2)は正常か軽度低下であり,PaO2低下が強い場合は合併疾患(右左短絡心血管病変,肝疾患,DLCO低下を伴う肺疾患)を鑑別する.一方,動脈血

二酸化炭素分圧(PaCO2)は肺胞換気亢進により正常より低いことが多く,診断時およびフォローアップ時の低PaCO2は予後不良因子の1つである606).PaCO2 の上昇があれば肺胞低換気の存在を疑い,終夜睡眠ポリグラフィによる睡眠時呼吸障害の鑑別などを行う607).睡眠時や労作時の低酸素血症は肺動脈攣縮を介して肺高血圧を助長するため,PaO2< 60 mmHgの場合は長期酸素療法を考慮する.

4.7 肺換気血流シンチグラム

肺血流シンチグラムは血流障害の有無とその部位の診断に有用であるが,無気肺,肺気腫,肺炎などの肺実質病変部位でも血流欠損が生じる.そのため,換気シンチグラムを撮像するか,胸部X線や胸部CTといった他の画像診断を併用し,肺実質病変の有無も評価する.CTEPHや血管炎など肺血管の狭窄や閉塞がある場合には,肺血流シンチグラムで血流障害部位のみが楔状血流欠損像として描出される.肺換気,血流シンチグラムが正常の場合CTEPHをほぼ除外できる.感度,特異度は,90~100%および94~ 100%と報告され,胸部造影CTより優れている119, 608). PAHで換気血流ミスマッチを伴う末梢の小さな血流欠損や血流の小斑状不均一分布(mottled pattern)が,PVOD/ PCHでも血流の不均一所見がみられることがある609).

4.8 MDCT

PHの鑑別疾患を進めるうえで,CTは重要な情報を提供する.単純胸部CTでは実質性肺疾患の評価に加え,小葉中心性のすりガラス影(PAHでも認められる),小葉間隔壁肥厚,縦郭リンパ節腫脹の3つのうち2つ以上認める場合にはPVOD/PCHの存在を疑うことが重要である610).また,COPD患者では肺動脈径/大動脈径比とPHの重症度や生命予後との間に相関が認められることが報告されている611).CTEPHの特徴としてモザイクパターン(すりガラス陰影と低濃度領域が混在するパターン)があり,PAHではみられない.PHの存在を示唆するCT所見には,肺動脈径の拡大,肺動脈/大動脈径比>0.9,右心系の拡大などがあり612),肺動脈径≧30 mm,右室流出路壁厚≧6 mm,中隔偏位≧140°(または右室/左室比≧1)の3 つのパラメータの組み合わせでPHを高度に予測することができる613).

CT肺動脈造影(CTPA)はおもにCTEPHの評価のために使用されるが,CTPA単独の診断精度は感度76%,特異