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p.72 抽出テキスト

なり,吸気時に頚静脈の怒張が顕著となるクスマウル徴候を認める.また,低COを反映して末梢循環不全が著明な患者では四肢は冷たく湿潤し,血色が悪く,蒼白で,口唇や爪床にチアノーゼを認める.尿量の減少,チェーン・ストークス呼吸や意識障害を伴うこともある.脈拍は微弱で頻脈となり,しばしば交互脈や上室および心室不整脈,頻脈性および徐脈性不整脈による脈拍異常を認める.

PHの原因疾患に伴う身体所見として,アイゼンメンジャー症候群,肺静脈閉塞症,肺疾患でみられるばち指,各膠原病や肝疾患でみられる諸身体所見,CTEPHでみられる肺動脈の血管雑音などがある590, 591).これらのPHの臨床徴候と身体的所見を図12に示す114).

4 診断,検査

4.1 血液検査・バイオマーカー

血液検査・バイオマーカーはPHのスクリーニング,診断,病型の確定,重症度,リスク評価に有用である. BNPおよびNT-proBNPの血中濃度測定は,PHのスク

リーニングとして有用であるが,特異度は高くない.重症例では高尿酸血症,多血症,うっ血肝を反映した肝機能異常などがみられる.PHには他疾患が併存,関連する場合が多く,初期評価ではBNP,NT-proBNPに加え,末梢血,肝・腎機能,電解質,鉄代謝,甲状腺機能,各種自己抗体などを測定するべきである.

血液検査は第1群の病型鑑別に特に重要である.各種自己抗体やC反応性蛋白(CRP)などの炎症マーカーは膠原病に,肝機能,肝炎ウイルス関連,血小板数および胆汁酸の測定は門脈圧亢進症の鑑別に,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体はHIVの有無および活動性評価に有用である. CTEPHではDダイマーのほか,血栓性素因の評価目的にプロテインC,プロテインS,アンチトロンビン,抗リン脂質抗体症候群に関連する血液検査を行う.

その他,血液検査,バイオマーカー測定は,副作用の診断,評価にも有用である.エンドセリン受容体拮抗薬では貧血や肝障害,プロスタサイクリン製剤では血小板減少,甲状腺機能障害などがみられ,定期的な検査が必要である.また,第1群PHでは,必要に応じて遺伝学的検査を考慮する.

図12 PH 患者における臨床徴候と身体所見(Humbert M, et al. 2022 114)を参考に作図)

PHの鑑別診断および スクリーニング時に役立つ所見PHの進行・増悪時の所見

右心不全に伴う臨床徴候頚静脈の膨張および拍動腹部の膨満感肝腫大腹水末梢浮腫

PHに伴う身体所見中枢性/末梢性または混合性チアノーゼII音肺動脈成分の亢進III音の聴取三尖弁逆流に伴う収縮期雑音肺動脈弁逆流に伴う拡張期雑音肺動脈狭窄に伴う血管雑音

PHの背景疾患を示唆する身体所見

末梢循環不全を示す身体所見末梢性チアノーゼ蒼白四肢の冷感毛細血管再充満時間の延長

ばち指チアノーゼ性心疾患,肺疾患,気管支拡張症,肺静脈閉塞症,肝疾患

動脈管開存/アイゼンメンジャー症候群肺疾患または心疾患オスラー病,全身性強皮症

全身性強皮症

チアノーゼやばち指の 左右差ラ音聴取毛細血管拡張皮膚硬化・レイノー現象・指尖潰瘍・胃食道逆流症CTEPH DVT後の慢性静脈不全症