p.71 抽出テキスト
2.2 第2群:左心疾患に伴うPH 左心疾患に伴うPHはPHのなかでもっとも多く,成因より心不全,心臓弁膜症,pcPHにつながる先天性/後天性の心血管疾患の病態の3つのサブクラスに分けられる.心不全においては左室駆出率(LVEF)が保たれた心不全(HFpEF),LVEFが軽度に低下した心不全(HFmEF)または低下した心不全(HFrEF),特定心筋症に,弁膜症は原因となる弁により細分化された572).本群は,肺高血圧の主因は左心疾患によるPAWPの上昇であり,通常はPVRの上昇を伴わないが,CpcPHの場合はPVRが高く,加えて治療状況によりPAWPが一見低く測定される場合がある.そのため第1群との誤分類に注意する必要がある. 2.3 第3群:慢性肺疾患および/または低酸 素症に伴うPH これまでは生理学的に分類されていたが,第7回肺高血圧症ワールドシンポジウムで疾患による分類が提唱された572).肺実質障害に伴う血管床の減少や低酸素性肺血管攣縮,および肺血管リモデリングが第3群PHの病態進展に関与する.肺実質疾患に伴うPHの多くは軽症~中等症で,重症PHの合併率は高くない.肺移植待機中の進行COPDでは,PH(mPAP≧25 mmHg)の有病率は36%で, 3.9%が重症PH(mPAP≧35 mmHg)であった580).拘束性換気障害が重篤でない特発性肺線維症における重症PHは4%であったが581),肺移植待機中の進行した特発性肺線維症ではPHの有病率は25~40.7%まで上昇した582-584). これらの慢性肺実質疾患に伴うPHは予後を著しく悪化させるが,肺血管拡張薬の有効性についてはエビデンスに乏しく,さらなる検証が必要である.睡眠時無呼吸症候群単独でPHを呈することは少ないが,日中の高二酸化炭素血症を伴うような肥満性低換気症候群や,COPDを合併したオーバーラップ症候群では,PHの発症リスクが増加する585).標高2,500 m以上の高地居住者に発症するPHの現状は明らかでない点も多く,有病率や重症度など含めた公衆衛生学的なアプローチが必要である586). 2.4 第4群:肺動脈の閉塞に伴うPH 第4群はCTEPHに加え,比較的太い肺動脈を閉塞する肺動脈肉腫などの腫瘍,肺動脈炎,肺動脈狭窄症などを含む肺動脈の閉塞に伴うPHを追加した.CTEPHは海外と同様,わが国においても指定難病登録者数の増加がみられ,2023年度末は4,843人と,2013年度末の2,140人の2 倍以上に増加している587).これは肺血管拡張薬の使用やバルーン肺動脈形成術(BPA)の普及によってCTEPHに対する理解が深まり,スクリーニングが積極的に行われるようになったこと,予後が改善されたことによるものと考えられる.加えて成人発症の肺動脈狭窄症について,わが国から臨床的特徴,画像,治療反応性に関する疾患概念の確立に寄与する報告が出されている588). 2.5 第5群:詳細不明および/または多因子 のメカニズムに伴うPH 第5群は,PHに関連する種々の疾患群で構成されている.多くの場合,原因は多因子性であり,前および後毛細血管性の肺動脈圧上昇に続発する場合や,直接の肺血管への影響によることもある.前版4)と異なる点として,肺腫瘍血栓性微小血管症(PTTM)が明記された589).また,第5群に分類されていた甲状腺疾患がPHの臨床分類から除外された.区域性PHに代わって,複雑CHDが記載された. 3 症状と身体所見 3.1 自覚症状 PHの自覚症状に特異的なものはないが,特徴的なものとして労作時息切れが早期にみられ,PHに至らない肺血管障害の段階でも出現する.易疲労感,胸痛,失神,動悸,咳嗽,喀血などを認めることもある.右心不全を伴う場合,右心不全症状として,肝うっ血,消化管浮腫に伴う腹部膨満感,食欲不振,下腿浮腫を示す. 3.2 身体所見 身体所見としては,PHに伴うII音肺動脈成分の亢進がみられるほか,右心負荷に伴うものとして傍胸骨拍動やIII音・IV音聴取,三尖弁閉鎖不全症に伴う胸骨左縁下部での汎収縮期雑音,肺動脈弁閉鎖不全症に伴う胸骨左縁での拡張早期雑音(グラハム・スティール雑音)などがある. 右心不全を呈すると,静脈系のうっ血を反映して頚静脈怒張,肝腫大,下腿浮腫,腹水などがみられる.特に,重症の右心不全においては,吸気時に右房圧の上昇が著明と