p.66 抽出テキスト
することを提案する.VTE既往例には併用を行うことが望ましい.なお,出血リスクが高いと判断される患者への薬物的予防法は,VTEリスクと薬物的予防法による出血リスクのバランスを考慮し,慎重に検討する. 3.5.2 膝関節鏡視下手術 他の待期的下肢手術と同様に,術後足関節の早期自動運動,早期離床,早期歩行を行い,弾性ストッキングの着用を提案する.通常のVTEリスクの患者には薬物的予防法は行わないことを提案する.VTEの既往など,付加的危険因子がある症例に対しては,出血性合併症のリスクを含め,患者とよく相談して薬物的予防法を行う. 3.5.3 待期的脊椎・脊髄手術 VTEの発症率の報告は少ないが,脊椎手術後に症候性VTEおよび致死性PTEが発症しているため515),症候性VTE発症を予防すべく患者管理を行う.症候性VTE予防として,術中より弾性ストッキング装着,または間欠的空気圧迫法を行い,術後は積極的な下肢自動運動,早期離床に努める.ただし,感覚障害のある症例では弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法による皮膚障害が生じる可能性があるため,これらの合併症にも十分注意する.致死的PTEのリスクが著しく高いと判断される症例においては,硬膜外血腫のリスクを受容したうえで抗凝固療法を検討する. 3.5.4 大腿骨近位部骨折手術 股関節骨折の場合,受傷直後からVTE発症のリスクがあるため,術前からVTE予防を行う必要がある.受傷直後から禁忌でなければ弾性ストッキングを装着し,足関節自動運動によるVTE予防を開始する.間欠的空気圧迫法は受傷後できるだけ早期に開始し,安静期間中は継続する.可能なかぎり受傷後早期に手術を施行し,術後早期に荷重歩行を開始するのが症候性VTEを予防するうえで望ましい.日本医療安全調査機構による「急性PTEに係る死亡事例の分析」では,8人中3人が大腿骨頚部骨折症例(術前期間4日,6日,2週間)で,予防策はされていたが間欠的空気圧迫法は行われていなかった468). 予防的抗凝固療法を行う場合には,アルファベット順にエドキサバン,エノキサパリン,フォンダパリヌクス,低用量未分画ヘパリン,ワルファリン(PT-INR 1.5~2.5)の使用を考慮する.また,手術待期期間が長くなる可能性がある場合は,未分画ヘパリンの術前使用を考慮する.出血リスクが高い症例では,間欠的空気圧迫法による予防を考慮する. 3.6 脳神経外科 開頭術の周術期,頭蓋内出血のVTEの発症リスクは2.9 ~9.7%と高い448).日本医療安全調査機構の「急性PTEに係る死亡事例の分析」468)のPTEによる死亡例検討では,8人中3人が脳神経疾患,2人は術後であった.脳腫瘍以外の開頭術は中リスク,脳腫瘍の開頭術は高リスクとする.大量のステロイド薬を併用する場合は,リスクが高くなる. 安静期間中の理学的予防(早期離床,足関節自動運動,間欠的空気圧迫法,弾性ストッキング併用)を基本とする.弾性ストッキングは単独の有用性も示されたが516),麻痺,知覚障害の合併から医療機器関連圧迫褥瘡のリスクが高い445).間欠的空気圧迫法は単独でも有用性があり517),システマティックレビューや各ガイドラインも推奨している448, 518).類似疾患の歩行不能の脳卒中では弾性ストッキングでなく間欠的空気圧迫法が推奨されている466). 脳神経外科手術では,抗凝固療法による出血が予後に大きく影響し,抗凝固療法のエビデンスは十分でない519).最高リスクにおいても周術期は理学的予防法が基本となり,出血のリスクが低下した時期に,抗凝固療法を考慮する518). 4 内科系(非手術)入院患者 (推奨表17) 推奨表17 内科領域のVTE 予防法に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル すべての入院患者に対して,早期離床および積極的な運動を勧める. I C疾患リスク *1 を有する内科疾患入院患者に対して,弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫法などによる圧迫療法の施行を考慮してもよい. IIb C移動能力が低下した急性期脳卒中患者に対し,間欠的空気圧迫法を施行する. I A疾患リスク *1 を有する急性期内科入院患者で,長時間(3~4 日以上)の移動制限があり(または予測され),さらに追加のVTE リスク *2 がある者に対して予防的抗凝固療法を考慮してもよい. IIb B