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p.65 抽出テキスト

娩後抗凝固療法あるいは分娩後抗凝固療法と間欠的空気圧迫法の併用を行う.第2群(中間リスク群)に該当する症例は,分娩後抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を行う.第3群(低リスク群)に該当する症例は,分娩後抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を検討する.なお妊産婦死亡症例検討で妊産婦のPTEによる死亡が減少しないことから,日本産婦人科医会は積極的なVTE予防が必要とし,「帝王切開術後は弾性ストッキング着用と間欠的空気圧迫法,術後1日までの離床だけでなく,積極的な抗凝固療法を実施する」と提言したが,その解析結果はまだ報告されていない511).

3.5 整形外科

日本整形外科学会では2017年5月に「症候性静脈血栓塞栓症予防ガイドライン」を改訂した467).これまでのガイドラインとの相違は,予防対象を「無症候性DVTを含むすべてのVTE」から「症候性VTE」および「致死性PTE」に変更したことである.以下概略を記載するが,専門診療科ではこのガイドラインを通読し,予防対策を策定されたい.

わが国のコホート研究では,術後症候性VTEの推定発症率は0.067%であり,脳(0.161%),股関節・上下肢(0.191%)で高い傾向にあったとされている34).いかなる予防対策を行ったとしても,VTEを完全に予防することはできないことを十分に認識する513).周術期には可能な理学的予防法を行い(詳細は「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」参照448)),病態によっては慎重に薬物的予防法(抗凝固療法)の適用を検討する.患者には薬物的予防法のメリットとデメリットを説明し,予防法選択についてのインフォームド・コンセントを得ることが必要である.近年の海外におけるメタ解析では,股関節全置換術,膝関節全置換術後におけるアスピリンの安全性と有効性が示され514),VTE予防に低用量アスピリンも推奨されている513).ただし2025年3月現在,わが国ではアスピリンは保険適用外で,今後の検討が待たれる.

3.5.1 人工関節置換術(股関節全置換術,膝関節全置換術)

症候性VTEの発症リスクが高い術式であり,理学的予防法あるいは薬物的予防法のいずれかを実施するか,併用

表25 分娩後のVTE リスク分類と抗凝固療法の推奨

第1群 分娩後のVTE高リスク• 以下の条件にあてはまる女性は分娩後の抗凝固療法あるいは抗凝固療法と間欠的空気圧迫法との併用を行う1)VTEの既往2)妊娠中にVTE予防のために抗凝固療法が行われている第2群 分娩後のVTE中間リスク• 以下の条件にあてはまる女性は分娩後の抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を行う1)VTEの既往はないが血栓性素因があり,第3群に示すリスク因子が存在2)帝王切開分娩で第3群に示すリスク因子が2つ以上存在3)帝王切開分娩でVTE既往はないが血栓性素因がある4)母体に下記の疾患(状態)が存在分娩前BMI 35kg/m2以上,心疾患,肺疾患,SLE(免疫抑制剤の使用中),悪性腫瘍,炎症性

腸疾患,炎症性多発性関節症,四肢麻痺・片麻痺等,ネフローゼ症候群,鎌状赤血球症(日本人にはまれ)第3群 分娩後のVTE低リスク(リスク因子がない妊娠よりも危険性が高い) • 以下の条件にあてはまる女性は分娩後の抗凝固療法あるいは間欠的空気圧迫法を検討する1)帝王切開分娩で下記のリスク因子が1つ存在2)VTE既往はないが血栓性素因がある3)下記のリスク因子が2つ以上存在35歳以上,3回以上経産婦,分娩前BMI 25kg/m2以上BMI 35 kg/m2未満,喫煙,分娩前安

静臥床,表在性静脈瘤が顕著,全身性感染症,第1度近親者にVTE既往歴,産褥期の外科手術,妊娠高血圧腎症,遷延分娩,分娩時出血多量(輸血を必要とする程度)表25に示すリスク因子を有する女性には下肢の挙上,足関節運動,弾性ストッキング着用などを勧める.ただし,帝王切開を受けるすべての女性では弾性ストッキング着用(あるいは間欠的空気圧迫法)を行い,術後の早期離床を勧める.血栓性素因:先天性素因としてアンチトロンビン,プロテインC,プロテインSの欠損症(もしくは欠乏症),後天性素因としては抗リン脂質抗体症候群(診断は札幌クライテリア・シドニー改変に準じる)が含まれる. (日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会 2023 512)より)