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p.62 抽出テキスト

果が高まる491).メタ解析の結果によれば,間欠的空気圧迫法は無予防に比し有意にPTEやDVTを減少させ,弾性ストッキング単独との比較ではDVT発症をより抑制するが,PTE減少については有意差はなかった.薬物予防法と比べるとPTE,DVT,死亡リスクに差はないが,出血リスクを抑制できることが示された491).

近年の脳卒中急性期患者を対象とした研究では,麻痺で下肢運動が制限される場合に間欠的空気圧迫法が中枢型DVTの発症を有意に低減したとの報告492)もあり,特に麻痺を伴う脳卒中領域では積極的な導入が再評価されている.ただし,長期にわたり麻痺が続く場合の間欠的空気圧迫法の有用性については十分なエビデンスはない.こうした知見を踏まえ,ACCPガイドラインでは,出血リスクのある高リスク患者(外科・整形外科術後など)に対する間欠的空気圧迫法単独使用を推奨している462, 463).詳細は「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」448)参照.

2.4 低用量未分画ヘパリン

未分画ヘパリンを用いたVTE予防では,8時間もしくは12時間ごとに5,000単位を皮下注する方法が一般的に用いられる.手術後のVTE予防にはヘパリンカルシウム製剤を用い,5,000単位を12時間ごとに7~10日間皮下注するのが標準的な投与法である.この際,APTTの延長を生じない範囲の用量である点が特徴で,低分子ヘパリンのように適用時期や基礎疾患での制限が少なく,予防目的で幅広く利用できる.

高リスク例に単独で使用しても十分有効な場合があるが,最高リスク例では理学的予防法との併用が推奨される493, 494).少なくとも歩行が十分に可能となるまで継続し,長期の予防が必要な場合にはワルファリンへの切り替えも検討する.なお,5日以上使用するときはヘパリン起因性血小板減少症の発症率が上昇するため,長期間使用する場合は血小板数の変化に注意する.

投与開始時期はリスクによって異なるが,モニタリングを必要としないうえ,比較的安価で安全性も高い.ただし出血リスク評価は必須であり,特に脊椎麻酔や硬膜外麻酔の前後ではその点に十分留意しなければならない.実際,脊椎麻酔・硬膜外麻酔患者を対象に,未分画ヘパリン2,500単位を12時間ごとに皮下注し,出血性合併症を増加させずにVTEを予防できたという報告もある495).

2.5 用量調節未分画ヘパリン

APTTを基準値上限に調節し,効果をより確実にする方法である.最初に約3,500単位の未分画ヘパリンを皮下注

射し,投与4時間後のAPTTが目標値となるよう,8時間ごとに未分画ヘパリンを前回投与量±500単位で皮下注射する.持続点滴で行う場合もある.煩雑な方法ではあるが,最高リスクでは単独使用でも効果がある496).ただし,出血性合併症には十分に注意する必要がある.

2.6 用量調節ワルファリン

ワルファリンを経口投与し,PT-INRが目標値となるように調節する方法であるが,一般にはVTE予防法としては施行されていない.ワルファリン内服開始から効果の発現までに3~5日を要するため,術前から投与を開始するか,投与開始初期には他の予防法を併用する.欧米ではPT-INR 2.0~3.0が推奨されているが,わが国の現状からはPT-INR 1.5~2.5が妥当と考えられる.モニタリングを必要とする欠点はあるが,最高リスクにも単独で効果があり,安価で経口薬という利点を有する497).

2.7 低分子ヘパリンおよびXa阻害薬

低分子ヘパリンやフォンダパリヌクス,エドキサバンなどの新しい抗凝固薬は,作用に個人差が少なく1日1~2回の皮下投与あるいは経口投与ですみ,モニタリングの必要がないため簡便に使用可能である.また,ヘパリン起因性血小板減少症,肝酵素の逸脱といった副作用発生率も低いため,特に低分子ヘパリンは欧米ではVTE治療,予防の中心となっている462, 463).

海外でVTE治療に使用されている低分子ヘパリンの中で,わが国においてはエノキサパリンがVTE予防にのみ保険適用となっている,股関節全置換術後,膝関節全置換術後,股関節骨折手術後,ならびにVTEリスクの高い腹部手術の術後での使用が可能である498).20 mg(2,000単位)の1日2回投与で,膝関節全置換術後の無症候性DVT発症率は60.8%から29.8%に低下した一方,出血性合併症発症率の有意な増加はなかった499).

わが国において,手術施行患者のVTEの発症抑制について保険適用されているXa阻害薬は皮下注射製剤のフォンダパリヌクスと経口薬のエドキサバンである.フォンダパリヌクスはVTE発症リスクの高い,下肢整形外科手術施行患者,腹部手術施行患者におけるVTE発症抑制に保険適用されている500-502).成人に1日1回2.5 mgを皮下投与する.腎機能障害のある場合はその程度に応じて1.5 mgへ減量し,術後24時間以降,止血を確認した後投与を開始する.整形外科では術後2週間,腹部手術では術後8日