p.61 抽出テキスト
2 VTE予防方法 2.1 早期歩行および積極的な運動 早期歩行および積極的な運動はVTEの予防の基本である.歩行を積極的に行うことで下腿ポンプ機能を活性化させ,下肢の静脈うっ滞を減少させる482).早期離床が困難な患者では下肢の挙上やマッサージ,自動的/他動的な足関節運動を実施する483-485).これらは害がなく費用も生じないことから,禁忌のない場合を除いて全例に施行するこ とを推奨する. 2.2 弾性ストッキング 下肢を圧迫し静脈の総断面積を減少させることにより静脈の血流速度を増加させ,下肢の静脈うっ滞を減少させる486, 487).他の予防法と比較し出血などの合併症がなく,簡易で値段も比較的安いという利点がある.中リスクの患者ではVTEの有意な予防効果を認める一方,高リスク以上では単独使用での効果は弱い488).弾性ストッキングの多くのエビデンスは古く,無症候性VTEを評価基準とする研究が多いことから,ACCPガイドラインでは推奨レベルが低くなっているが462),わが国で2004年に早期離床,弾性ストッキングを中心とする予防が開始されてから周術期PTEがほぼ半減した33).出血リスクがなく有害事象が軽症で,安価であり,装着により患者,医療関係者双方にVTEリスクを認知させる効果があることから,手術予定患者では術前,術中,術後を通してリスクが続く限り終日装着することを考慮する.装着による合併症のリスクに関してはVTEの治療と同様に考える(第3章10.2圧迫療法[急性期]参照).詳細は「静脈疾患における圧迫療法ガイドライン2025」448)参照. 2.3 間欠的空気圧迫法 間欠的空気圧迫法は,下肢に巻いたカフを用い機器で空気を間欠的に送り込み,弾性ストッキングと同様に下肢静脈のうっ滞を軽減する方法である.高リスク患者においてもVTE予防効果が得られ,特に出血リスクが高い患者に有用489, 490)とされる.薬物療法と併用すればさらに予防効 表22 Caprini スコア 1 点2 点3 点5 点 41~60歳小手術<45分1ヵ月以内の大手術静脈瘤炎症性腸疾患下腿腫脹BMI>25 kg/m2心筋梗塞心不全感染症(肺炎など)肺疾患(肺気腫,COPD)床上安静61~74歳悪性腫瘍大手術>45分1ヵ月以内のギプス固定中心静脈カテーテル床上安静>72時間≧75歳DVT,PTEの既往血栓症の家族歴血栓素因陽性人工関節手術下肢・骨盤骨折多発外傷脊髄損傷1ヵ月以内の脳卒中0,1点:低リスク,2点:中リスク,3,4点:高リスク,5点以上:最高リスク女性は右記(ピル服用またはホルモン療法,妊娠中または産褥期,3回以上の自然流産)に該当する場合,1点追加(Gould MK, et al. 2012 463)を参考に作表) 表23 Padua リスクアセスメントスコア 因子点数 活動性がん3 VTEの既往3活動性の低下3既知の血栓素因3 1ヵ月以内の手術/外傷2 70歳以上1心不全あるいは呼吸不全1急性心筋梗塞あるいは脳梗塞1急性感染症あるいはリウマチ疾患1 BMI≧30 kg/m2 1ホルモン治療中1 4点以上をVTE高リスクとする. (Barbar S, et al. 2010 473)より) ©2010 International Society on hrombosis and Haemostasis. Published by Elsevier Inc., with permission from Elsevier.