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10.1 安静度,運動 DVTの急性期には,離床,歩行などによって下肢を動かすことは血栓を遊離させ,PTEを発症する危険性があると考えられたため,歴史的にベッド上安静が行われてきた.しかし,適切な抗凝固療法を行えば,ベッド上安静でなく早期に離床,歩行を行っても,新規のPTE発症は増加しないことやDVTの血栓は伸展しないこと,さらに下肢疼痛が改善することが報告されている424-426). 浮遊血栓を伴わない,下肢疼痛が強くない,全身状態が安定しているなどの条件がそろえば,ベッド上安静ではなく早期離床,歩行することが推奨され,QOLの向上につながると考えられる.一方で,浮遊血栓を伴う場合は,抗凝固療法を行っていてもPTEの発症率が高いと報告されており427),慎重な判断を要する. わが国での循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)を用いた研究では,近年DOACの使用が急増し,DVTにおける入院期間が2012年の14日から2017年には12日へと短縮されたことが報告されている31).DOACは早期退院・外来治療への移行に寄与したと考えられる. 10.2 圧迫療法(急性期) 圧迫療法はDVT急性期にみられる腫脹や疼痛などの下肢症状の改善,長期的なPTSの予防を目的として,抗凝固療法開始後に行われる.理論的には,1弾性着衣の圧迫により,筋収縮時に静脈への圧迫力が増強して筋ポンプ作用が増強する,2微小循環領域において,圧迫により毛細血管の還流を改善し,浮腫を軽減する,3静脈の圧迫により静脈径が縮小し,不全に陥っている弁の接合が改善され逆流が減少する,などの効果が考えられている. 圧迫療法については,わが国ではVTE症例の約7割130),海外でもDVT患者の半数弱23)で実施されている.急性期には弾性包帯よりも装着しやすくコスト面でも有利な弾性ストッキングが選択されることが多く,その圧迫圧は25 mmHgと35 mmHgで効果に有意差がない428)とされるため,装着の容易さやアドヒアランスを考慮し,25 mmHgが選ばれる傾向にある429, 430). 抗凝固療法下で早期離床を行い,圧迫療法を併用すると,PTEの発症リスクを高めることなく急性期の疼痛や腫脹が早期に改善される431-433)と報告されている.また,血栓閉塞部位が再開通しやすくなり,PTSの原因となる残存閉塞病変発症率を低下させる可能性も示唆されている434, 435).急性期の疼痛軽減については否定的にとらえた研究もあるが436),装着率やアドヒアランスが低いなどの要 因を含んでおり,研究間で結果が一致していない433)のが実情である.以上より,腫脹や浮腫の症状が強い場合は早期に症状の改善が得られ,さらに血栓性静脈閉塞病変の再開通に寄与する可能性があることから,圧迫療法のメリットがあると考えられる429). 圧迫療法による重篤な合併症はまれだが,かゆみや湿疹,不快感などは2~27%と少なくなく436-439),特に大腿丈のストッキングでは多い438, 440).大きな浮遊性血栓を伴う症例では,着用時にPTEを誘発する可能性があり,また末梢動脈疾患合併例,有痛性青股腫症例では,圧迫により下肢動脈の血流障害を悪化させる危険がある.重度の末梢動脈疾患症例441-443)(足関節上腕血圧比[ABI]<0.5 または足関節圧<60 mmHg 444))では使用を控える.認知,知覚機能の低下,皮膚の脆弱性,急性炎症(蜂窩織炎など)を併発した患者や重症うっ血性心不全の患者では,皮膚障害(医療機器関連圧迫褥瘡)や疼痛増悪,心不全増悪などのリスクを慎重に評価する必要があるため,使用の際には十分な観察,モニタリングが望まれる445). 10.3 圧迫療法(慢性期) 慢性期のPTS予防について,小規模の研究で足関節圧30 mmHg以上の弾性ストッキングを2年間着用することの有用性が示された437, 446, 447).しかし,大規模RCTでのプラセボストッキングとの比較では,PTSの発症率に差がなかった441).ただし,本研究での弾性ストッキングのアドヒアランスは56%に過ぎず,また急性期に圧迫療法がされていなかったという重大な欠陥があった.最初の1年間のアドヒアランスが良好であった患者を対象に1年着用と2年着用を比較したRCTでは,1年着用群の非劣性は示されず,2年着用が推奨された443). このRCTは症状が強くストッキング着用で症状が改善される患者が対象となっていたため,軽症患者(DVT発症6ヵ月後のVillalta scaleでPTS症状がない)で,6ヵ月群と2年間継続群の比較が行われた439).本研究ではPTS発症率に差がなく,DVT患者の症状に応じ期間を短縮した圧迫療法によるPTS予防の有用性が示された439).さらに中枢型DVTの患者に対しシステマティックレビュー,メタ解析が行われ, PTS予防の圧迫療法の有用性が示された448). 弾性ストッキングは重大な合併症は少なく,DVT,PTSの症状の改善がみられる場合が多い.浮腫・疼痛など下肢症状の強い患者に症状改善のために着用させ,症状が改善したときに中止することは理にかなう.そこで,DVT発