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p.56 抽出テキスト

相互作用,不適切な投与量,VTEの原因となる解剖学的障害などが原因である.潜在的に対処可能な場合もあり409),十分な抗凝固療法にもかかわらずPTEが増悪・再発する例に対してのIVCフィルターの適用を推奨クラスIIaとする(推奨表14).

米国全国入院患者のデータ410)解析では,血栓溶解療法を受けている不安定状態(ショックまたは人工呼吸器依存)患者で,IVCフィルター使用群は非使用群よりも院内死亡率が有意に低く(7.6% vs. 18%),特に相対リスクがもっとも高かった80歳以上の患者で低下していた(RR 0.35) 411).わが国のコホート研究412)でも,血栓溶解療法患者では,フィルターの使用により院内死亡リスクが有意に減少した(RR 0.51)と報告がある.したがって,急性PTEやDVTに対し血栓溶解療法やカテーテル治療などの高度な治療を受ける患者で,さらなるPTEの悪化が危惧される場合はIVCフィルターの留置も考慮されうる.

妊娠中のDVT患者に対する英国のシステマティックレビュー413)では,妊婦におけるIVCフィルターの有用性は非妊婦とほぼ同等とされている.

VTEの確認されていない重度外傷患者における予防的フィルターについては,RCTではIVCフィルターの有無に

よるPTE発症率に有意差はなく414),米国入院患者データ312)でも,骨折を伴う外傷患者でフィルター留置群のPTE発症率(14.7%)は非留置群(0.5%)よりも高かった.外傷後のPTE発症リスクの上昇は,薬物による予防が外傷後5日以上中断または遅延された場合にVTE(DVT, PTE)発症リスクが上昇することを実証した過去の研究と一致する415).したがって,急性VTEが判明していない外傷患者の場合,VTE一次予防のためにIVCフィルターを日常的に留置することは推奨されない(推奨クラスIII).

IVCフィルターの短期合併症としては,穿刺に関しては血腫,穿刺部血栓,空気塞栓,動静脈瘻形成など,フィルター自体についてはIVC以外の分枝静脈(生殖腺静脈,上行腰静脈など)などへの誤留置,心臓内や肺動脈への移動,不完全展開などがある.長期合併症としては,DVT再発が5.9~32% 416, 417),IVC血栓形成が1~11.2% 417, 418)と報告されている.超音波を用いた前向き研究419)によると,穿刺部血栓は16~30.2%,IVC血栓は5.3~17.5%と比較的多く,フィルターの移動(3~69%)や破損(0~50%)

420, 421),IVC

壁の貫通(9~24%)

416, 422, 423)も指摘されている.したがって,

IVCフィルターは必要がなくなった場合は早期に抜去することが望ましい.

10 DVTの理学療法(推奨表15)

推奨表15 DVT の理学療法に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

DVT の初期治療において抗凝固療法が行えた場合には,ベッド上安静より早期離床,歩行を考慮する. IIa B PTE の合併がないDVT の患者で,全身状態,下肢症状,家庭環境,病院環境が適しているならば外来治療を考慮する. IIa A DVT の急性期症状改善に圧迫療法を考慮する. IIa C中枢型DVT の患者に対し,PTS 予防のために,圧迫療法を考慮する. IIa A静脈性潰瘍など重症のPTS 患者に弾性包帯の装着,弾性ストッキングを着用させる. I A慢性静脈不全症による静脈性潰瘍の再発を予防するために,弾性ストッキングによる圧迫療法を考慮する. IIa B

推奨表14 VTE におけるIVC フィルター留置に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

抗凝固療法を行うことができないVTE に対し,IVC フィルター留置を考慮する(ただし,末梢型DVT では中枢への伸展例に限る). IIa C IVC フィルター留置後は抜去計画を策定し,必要性がなくなれば早期抜去を行う. I C十分な抗凝固療法中のPTE 増悪,再発例に対し,IVC フィルター留置を考慮する. IIa C抗凝固療法が可能でも残存血栓の再度の塞栓化により致死的となりうるPTE に対し,IVC フィルター留置を考慮する. IIa C IVC フィルターのルーチン留置は推奨されない. III No benefit A急性PTE やDVT に対し高度な治療を受ける患者の場合,さらなるPTE の悪化が危惧される患者にのみIVC フィルター留置を考慮する. IIa C急性VTE が判明していない外傷患者や大手術を受ける患者に対する予防的フィルター留置は推奨されない. III No benefit B IVC フィルターを抜去しない場合にはその後の経過観察を行う. I C