GL検索 v0.1.0
画像は 54 ページを描画したものです
page 54

p.54 抽出テキスト

8.1.3 手術手技

全身麻酔下に胸骨正中切開法で行う.高リスクPTEでは麻酔導入時に循環虚脱となるリスクがあるため,消毒とドレーピングを行い,すぐに執刀できるように準備する.また,V-A ECMOが導入できるように大腿動静脈ライン確保を行って麻酔導入を行う381, 387).

上行大動脈送血,上下大静脈の2本脱血により人工心肺を確立する.右心機能を維持するため心拍動下に行う報告が多い388).左右主肺動脈を切開して,直視下に区域枝まで血栓を摘出する.新鮮血栓の摘出は比較的容易であるが,やや時間が経過した血栓は脆弱で血管壁に付着しているので,血栓が断裂しやすい.肺動脈を損傷しないように摘出する.

付加手技として,肺静脈逆行性送血,フォガティーカテーテル,用手肺圧搾などが報告されているが32, 389, 390),安全性や効果について比較した試験はない389, 390).フォガティーカテーテルは薄く脆弱な肺動脈壁を損傷する危険性があり,血栓溶解療法後の症例で肺を圧搾すると肺出血を起こす危険性がある.

8.1.4 30日死亡率

30日死亡率は全体で2.3~19%(広範型0~23.7%,亜広範型0~11.4%)であった382, 387, 388, 391, 392).死亡率は術前のCPRと有意に関連し377, 393),血栓溶解療法不成功例では27%と,外科手術単独例の3.6%と比べ高いことが報告されている394).

8.1.5 術後合併症

広範型は亜広範型PTEよりも術後合併症が多い388).メタ解析では,長期人工呼吸管理(33%),呼吸不全(14%),肺炎(13%)など呼吸器合併症が多く,V-A ECMOは16%に導入されていた376).再開胸を必要とする出血性合併症は8.4%にみられ,術前血栓溶解療法施行例に多かった388).

8.1.6 IVCフィルター

メタ解析では93%の症例で周術期にIVCフィルターが留置された376).米国の全国入院患者サンプルの解析では, IVCフィルター留置群で死亡率の低下(8.7% vs. 34%),急性PTE発症後5日以内の留置で死亡率の低下がみられた395, 396). 8.2 DVTの外科的治療(推奨表13)

推奨表13 DVT の外科的治療に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

動脈虚血を伴う重症急性DVT に対し,外科的静脈血栓摘除を考慮する. IIa C

8.2.1 はじめに

DVTは多くの症例で抗凝固療法のみで加療される.一方で,重症例では血管内治療も導入されており,血管内治療を併用した外科的静脈血栓摘除術(以下,血栓摘除術)は限られた重症例に施行されている28).

8.2.2 適応

有痛性青股腫,静脈性壊死,疼痛の強い重症例のみが適応となる.有痛性青股腫のなかでも,血栓溶解療法を併用する血管内治療には即時的な効果がないため,より重症例で血栓摘除術が選択されている146, 397).抗凝固療法,血栓溶解療法が禁忌の出血リスクが高い患者も,血栓摘除術が適する.本術式はDVT軽症例に施行した場合でもPTS予防効果があるが,手術侵襲が大きい398, 399).

8.2.3 手技

血管内治療を併用したハイブリッド手術を行う400). IVCフィルター留置:明確なエビデンスはないが,IVCに血栓伸展がある場合は,手技中のPTE合併予防のためにIVCフィルター留置を検討する.

外科手技:呼気終末陽圧をかけた全身麻酔下で自己血回収装置も準備する.鼠径部縦切開,総大腿静脈,大伏在静脈,すべての大腿深静脈を可及的に露出,テーピングする.静脈切開部位にタバコ縫合をすると出血の管理がある程度できる.総大腿静脈を切開し,足側は足部から大腿までの用手的ミルキングあるいはエスマルヒ法で血栓を摘除する.摘除が不十分の場合フォガティーカテーテルを使用し,静脈弁損傷を避けるために逆行性挿入のガイドワイヤーあるいは膝窩静脈・後脛骨静脈から挿入の順行性ガイドワイヤーを併用する.腸骨側はフォガティーカテーテルで血栓を摘除する.動静脈瘻の作製が腸骨静脈の早期閉塞を予防するとの報告もあるが,広くは行われていない400, 401).

静脈造影,血管形成術,ステント留置術:腸骨静脈領域