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p.52 抽出テキスト

急性腎不全,右心損傷,肺動脈損傷などがあげられる.

INARI FlowTriever ®を用いた機械的カテーテル血栓除去術を行ったFLARE研究では,右心負荷所見を有する中リスクPTE患者106人において,48時間後の右室/左室比が25.1%低下と有意に改善し,大出血発症率は1%と低かった355).さらにFLASH研究の中間報告では,高リスク,中リスクのPTE患者250人において,48時間後の右室/左室比が22.1%減少し,大出血発症率は1.2%,30日全死亡率は0.4%といずれも低かった354).Penumbra Indigo ®を用いた吸引カテーテル血栓除去術のEXTRACT-PTE Registry研究では,右心負荷所見を有する中リスクPTE患者119人において,48時間後の右室/左室比は有意に改善し,主要な合併症の発症率は低かった355).

ただし,いずれのカテーテル治療も抗凝固療法,血栓溶解療法とのRCTなどの十分なエビデンスは示されておらず,限られた患者での有効性が示されているのみである.わが国では未承認の血栓吸引あるいは血栓除去カテーテルについては,2025年3月現在,関連学会から早期承認申請が行われている.

7.2 DVTのカテーテル治療

7.2.1 急性DVTのカテーテル治療

急性期の腸骨大腿静脈領域の広範型DVTに対するカテーテル治療として,PTEにも用いられるCDT 356)のほかに,血栓溶解療法を使用せず,カテーテルで血栓を破砕吸引する経皮的機械的血栓除去術(PMT),CDTとPMTを組み合わせた薬物機械的カテーテル血栓溶解療法(PCDT)

357)が

ある.

カテーテル治療の有効性はRCTで検討されており,腸骨大腿部DVTに対してCDTと従来の抗凝固療法とを比較したCaVenT試験では,CDT群は抗凝固療法単独群に比較して6ヵ月後の開存率と24ヵ月後のPTS発症率がいずれも有意に優れ358),5年後のPTS発症率は差がより大きくなっていた359).中枢型DVT患者692人においてPCDTと抗凝固療法を比較したATTRACT試験では,全体ではPTS発症率やVTE再発率に差はなかったが,重症PTSはPCDTで少なかった360).大出血はPCDTで増加したが,腸骨大腿静脈DVTのサブグループ解析では,PCDTが初期の下肢痛および腫脹,PTS重症度を軽減し,生活の質(QOL)も改善していた361).さらに,腸骨大腿部DVT患者184人への超音波補助CDTの有効性を検討したCAVA試験では,1年後のPTS発症率やQOLは抗凝固療法と同程度であった362).これらのRCTの結果を受け,欧米のガイドライン3, 143, 281)

では,DVT治療の基本は抗凝固療法であり,血管内治療は有痛性青股腫患者や,腸骨および総大腿静脈を含む強い症候性DVTで出血リスクの低い若年患者に考慮するとされている.

CDT中は血栓の伸展防止および再発予防のため,未分画ヘパリンによる抗凝固療法が併用される.CDT施行時のIVCフィルター留置は,血栓遊離に伴う急性PTEの予防に有効であるが,予後は改善しない363, 364).使用する場合には非永久留置型フィルターを用い,血栓遊離のリスクが低下しだい,抜去回収を試みる365).CDTでの血栓溶解後に残存する腸骨静脈圧迫症候群などの静脈狭窄病変に対しては,バルーンカテーテルや金属ステントを用いて狭窄病変を拡張し,静脈流出路を確保することにより,血栓再発を予防し,治療成績向上につながると考えられている366, 367).しかし,静脈ステント留置後の治療率が高いことも報告されている368).

わが国でDVTに対し保険適用されている血栓溶解薬はウロキナーゼのみであったが,COVID-19パンデミックによる採尿機会消失のため供給が停止となり,重症例に対するCDTが施行できなくなった.このため,血栓溶解薬の併用が必要ない2種類の大口径血栓除去デバイス(Indigo ® [Penumbra, Alameda, CA],ClotTriever ®[Inari Medical, Irvine, CA])がDVTに対して承認された.これらの初期成績は良好と報告されているが,抗凝固療法との比較結果はまだ発表されておらず,2025年3月現在,一部の重症例が適応となる369-371).特に,動脈阻血を伴う有痛性青股腫は,まれであるが下肢切断の危険がある.これまで外科的静脈血栓摘除術が中心の治療として行われてきたが146),低侵襲で早期に血流再開ができる血栓除去デバイスも有用であることが期待される.わが国の血栓除去デバイスの適正使用指針349)においても,患者条件は急性期症状のある腸骨静脈閉塞を含む重症DVTで,動脈虚血を伴う(有痛性青股腫,有痛性白股腫,静脈性壊疽),あるいは,抗凝固療法と下肢挙上あるいは圧迫療法などの適切な保存療法にても常時疼痛があり,日常生活を著しく妨げるDVT (rVCSS pain score 3 あるいはrVCSS pain score 2 かつVillaltaスコア15以上)となっている.

7.2.2 PTSのカテーテル治療

DVT後の血栓遺残,弁破壊による逆流などで慢性的に静脈うっ滞の症状・所見が出現し,最終的には難治性である静脈性潰瘍を呈する病態をPTSと称する(第1章6.1 PTS参照).多くのPTSは,生活指導,弾性ストッキングなどの圧迫療法で改善するものの,一部は静脈性下肢潰瘍