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p.48 抽出テキスト

活動性がん合併の末梢型DVT の抗凝固療法で3ヵ月以上の延長治療を行う場合には,リスクとベネフィットを定期的に十分に検討する. I C *1未分画ヘパリンはAPTTが対照値の1.5~2.5倍を治療目標とする. *2低用量DOACは保険適用外.

5.1 概論

急性DVTは,血栓部位が中枢型か末梢型か,症侯性であるかスクリーニングや偶発的に検査で発見された無症侯であるか,によって臨床的な重要性が異なる.現在,末梢型DVTはDVTの約半数を占めるという報告もあり10),がん患者では無症候末梢型DVTが発見されることが特に多い45).DVTの治療目標は,1早期症状改善・血栓伸展予防,2PTEの予防,3DVTの再発の予防,4晩期後遺症であるPTSの軽減である.一般論として,DVTはPTEに比し急性期の重症度は低い130, 291, 303-307).末梢型DVTはさらに血栓進展と再発のリスクが低く,無治療の場合,中枢型DVTへの伸展が初期には22.6%と高い報告があったが,続報では3%,3.7%と報告され,PTEの発症率は1.6%と低い8, 30, 47-49, 308).一方で,再発率はPTEと中枢型DVTがほぼ同様,PTEが高いと相反する研究がある30, 130).またPTE,DVTともに再発率は高い30, 310).

5.2 中枢型DVT

DVTを発症した患者はDVTの再発率が高いことから30),抗凝固療法の3ヵ月以降の長期継続については,再発時の臨床的重みを考慮する.一過性のメジャーな因子をもつ中枢型DVTは誘因がなくなると再発率が低いため,抗凝固療法は3ヵ月とする.一過性のマイナーな因子をもつ中枢型DVTの再発率は,誘因のない中枢型DVTと一過性のメジャーな因子をもつ中枢型DVTの中間であるが294)(表14), PTEとは臨床的重みが異なり,3ヵ月の抗凝固療法とする.また誘因のない中枢型DVT,持続性の誘因による中枢型DVTで出血リスクが少ない患者では,可及的長期の低用量DOACを推奨する(推奨表10,表14).

ただし,2025年3月現在低用量DOACは保険適用外で,通常用量DOACの出血リスクはワルファリンと同程度であることに注意する97, 294).

5.3 末梢型DVT

DOACのRCTでは末梢型DVT患者が除外されたため,エビデンスが十分でない258-261).末梢型DVTでは,海外ガイドライン143, 311-314),本ガイドラインとも画一的な抗凝

固療法を推奨していない.がん合併のない症侯性末梢型DVTの低分子ヘパリンと圧迫療法については2件のRCTが行われており,探索的な初期研究では有効であったが,次に行われたRCTでは抗凝固療法の有効性はなく,出血が増加するという結果であった315, 316).

症候性末梢型DVTは,2週間以内に血栓の中枢伸展がなければその後の伸展はないとされている308, 311).わが国では,無症候性DVTは良好な自然予後が報告され317),無症候性下腿DVTは症候性よりも予後がよい可能性が高い.

わが国では医療安全の観点からスクリーニングが施行され,末梢型DVTの約半数が無症候である318).最近のがん患者のスクリーニングでは,5.9%にVTEが認められている(無症候VTE 99.7%,末梢型DVT 78.8%) 45).検診希望の健常人のスクリーングにおける末梢型DVTの検出率は4.3%であり319),がん患者,整形外科入院患者では末梢型DVT有病率が高いといえる.一方で,周術期の有症状PTEの合併は1万人に3.1人33),院外発生を含めた入院患者におけるPTEは10万人に124.2人と報告されている32).多くの病院でスクリーニングが行われないためVTEが検出されず,抗凝固療法が行われていないにもかかわらず, PTEの発症率は高くない.末梢型DVTと症候性PTEの発生数に大きな隔たりがあり,末梢型DVTのすべてが大きなリスクであるとは考えにくい.

再発リスクが少ないと考えられる末梢型DVTに対しては7~14日後の超音波検査での経過観察を行い,中枢伸展例と再発の高リスク群のみに抗凝固療法が施行されてきた311-313).末梢型DVTの危険因子として,非スクリーニングの症侯性,膝窩静脈に近く大きな新鮮血栓,活動性がん,VTEの既往,周術期,入院などが考えられる311).出血性合併症,医療経済上の問題などリスク・ベネフィットの観点から,末梢型DVTに画一的に抗凝固療法を施行することは避け,1抗凝固療法を行わずに7~14日後に超音波で中枢伸展の経過観察を施行する,2再発の高リスク症例のみに抗凝固療法を施行することが妥当と考えられる.スクリーニングや偶発的な検査によって発見された無症候性末梢型DVT症例は,超音波検査での経過観察と理学療法がより推奨される.有症侯例,VTE既往例,大きな新鮮血栓例,下肢整形外科あるいはがん手術周術期,化学療法中例などでは,抗凝固療法が有用である可能性がありうる320).また再発が少ないので,多くの末梢型DVTの場合は,3ヵ月の治療が妥当である290, 321, 322).