GL検索 v0.1.0
画像は 44 ページを描画したものです
page 44

p.44 抽出テキスト

(transient risk factor)を有する患者は,その誘因が除去されれば,再発のリスクはきわめて低い.一方で,活動性のがんなどの持続性の誘因(persistent risk factor)を有する患者は,再発リスクは高い.また,その中間と考えられる誘因のない患者(unprovoked)は,再発のリスクも中程度である(これらの患者背景による再発リスクの影響の概念図は図2 96)参照).

最新の国際ガイドラインでは,本概念をもとにしてVTE患者を再発リスクに応じて詳細な5群に分類することが一般的になっている2, 3, 96, 143, 281).ガイドラインおよび文献により分類方法および推定される再発リスクは若干異なるが,代表的な分類を表14に示す.

4.9 付加的に考慮すべき再発の危険因子

VTE再発リスクには,誘因の有無による分類に加え,さまざまな付加的危険因子が関与すると考えられる.代表的な要因には,年齢・性別・肥満などの体格,血栓部位(PTE/DVT),初発・再発の別,先天性凝固異常症の有無などがあげられる.さらに治療経過中の残存血栓や,抗凝固療法終了後のDダイマー値も再発に影響する可能性がある.下記に示すような,付加的に考慮すべき因子を含めた複数の項目でVTE再発のリスクの予測を試みたスコアが複数報告されているが282),現時点で広く普及しているスコアは少ない.・年齢,性別

高齢および男性が再発リスクを高めるとする報告と否定的な報告があり283-288),強力な付加的因子とはみなされにくい.・肥満

VTE発症の危険因子であるが,再発リスクとの関連は不明瞭である.また日本人では肥満患者がそもそも少なく,低体重患者が多いのが特徴である289).・血栓部位

一般にはPTE>中枢型DVT>下腿型DVTの順に再発リスクが高いとされる290, 291).わが国のデータではPTEとDVT間で再発リスクに大きな違いはないものの,再発時は同一部位または同一疾患になりやすいという報告30)もある.臨床的重症度を考慮すると,PTEなど重篤な部位の場合はより長期の抗凝固療法が検討される.・再発例のVTE

初発例より再々発リスクが高い292)とされ,一過性のメジャーな因子によるVTEが関与しなかった場合は特に付加的に考慮される2).・残存血栓,Dダイマー値

治療後の残存血栓や治療終了1ヵ月後のDダイマー高値は再発リスク上昇と関連する293)が,高齢患者を中心として多くのVTE患者が,Dダイマー軽度高値を呈しうるため,国際ガイドラインでは積極的に採用されていない.

4.10 再発リスクからみたPTEに対する 継続期間

わが国におけるPTEを含めたVTEに対する最適な抗凝固療法の継続期間に関するエビデンスは限られており,海外からの報告を基に検討する必要がある.最新の国際ガイドラインでは,詳細なVTE再発リスクの分類(5群)に応じて抗凝固療法の継続期間の推奨を提言している2, 3. 143. 281) (表14).一過性のメジャーな因子によるVTEは3ヵ月間の短期間の抗凝固療法を推奨する方針で一致しており,わが国でも妥当と考えられる.一過性のマイナーな因子によるVTEは,ガイドラインにより再発リスクは比較的低いとの判断で3ヵ月の短期間の抗凝固療法を推奨するもの2, 143),再発リスクは低くないとの判断から3ヵ月を超える抗凝固療法を推奨するもの3, 281)に分かれ,相反している.わが国では一般的に欧米より血栓リスクが低く,出血リスクが高い可能性を考えると,付加的に考慮すべき再発の危険因子を有しない場合には,3ヵ月間の短期間の抗凝固療法が妥当と考えられる.

抗凝固療法を使用する場合は出血リスクが低い可能性を考え,付加的に考慮すべき因子や患者の希望に合わせる.臨床的な重みづけの大きいPTE患者では,抗凝固療法の継続を選択する方針も考慮されうる.わが国のデータでも,一過性のマイナーな因子によるVTEは,一過性のメジャーな因子によるVTEより抗凝固療法中止後の再発リスクが有意に高いことが示されている(図10) 294).国際ガイドラインでは,誘因のないVTE,がん以外の誘因が持続するVTE,活動性がんを併発するVTEは,少なくとも中等度以上の再発リスクを有すると判断し,いずれも3ヵ月を超える抗凝固療法を推奨し,半永久的な継続を目処としている.わが国のデータでも,誘因のないVTEを含めて中等度以上の再発リスクを有する患者群では,抗凝固療法中止後の再発リスクは欧米からの報告のリスクと同等であった(図10) 294).再発リスクの観点からのみで考慮すると, PTE患者に対しては,欧米の推奨と同様に可及的長期の抗凝固療法の継続が推奨される.